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2020年6月に観た映画で面白かったやつ5本

2020年6月に観た21本の映画の中から感想を書きたいものを5本だけ選んで書いてます。5月、6月のエントリで取り上げたものよりメジャー級の作品ばかりです。

おまけで短編映画も追記してます。


ドリーム (2015)

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セオドア・メルフィ監督による史実を基にした作品。舞台は1962年、アメリカ航空宇宙局、通称"NASA"で働く3人の女性を巡る物語。ここで描かれている主人公3人は実在した人物です。

ジョン・グレンという宇宙飛行士のシャトル搭乗から地球周回軌道を成功させた裏で活躍した女性技師3人が、人種差別と男女差別という二重の差別に遭いながらも卓越した才能と気丈な態度でNASA内部の気風さえ変えていく成功の物語です。
世間からは黒人差別(街には黒人が乗ってはいけないバスが走り、トイレも黒人専用の場所が設けられている)を受け、男からは女だからとその才能を発揮させられず、しまいには同じ女性からも黒人という理由で下に見られるという息苦しいことこの上ない風当たりにも負けず、シャトル軌道の間違いを指摘し正しい数式を生み出したり、コンピュータが導入されると早々にプログラミング言語を習得し無くてはならない存在になっています。
本作は差別撤廃を叫ぶものでも天才を讃えるものでもなく、逆境に負けることなく自分の価値を信じきることができたおかげで彼女らは歴史に名を刻むほどの偉業を成し遂げたということです。もちろん我々のような一般人が歴史に名を刻むのは並大抵のことではありませんが、大事なのは碑に刻まれた文字自体ではなく"一度しかない人生をどのように生きるか"ではないでしょうか。
大切にすべき自分の矜持を見失うことなく精一杯生きることができたら、それは立派で素敵な人生と呼べるのではないでしょうか。


遊星からの物体X (1982)

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ジョン・カーペンター監督によるカルト的人気を誇るSFホラー映画。
南極にいる観測隊が宇宙からの謎の生命体によって生命を脅かされる物語。

まず原題が「THE THING」なのに邦題が「遊星からの物体X」なの、超絶にセンスが溢れてて良い。適度に漂うB級感と本編とのギャップがすごい。
出てくるクリーチャーのことごとくが生理的嫌悪感を催すほどにグロテスクで、しかもそれは地球外から来た生命体に寄生されることでただの人間や動物がクリーチャーと化してしまう設定により、何に寄生しているのかが外見からではわからないところが怖い。そして、観測隊の中からクリーチャーが出現することによって誰が寄生されているのかと疑心暗鬼に囚われていく過程も怖い。
そのクリーチャーの造形もCGが使われていないことで"そこに確かに存在する異形の物体"という感覚をより強めていて、さらに嫌悪感を増す要因となっている。最初の犬から始まり人面蟹、血液検査のシーンに至るまで徹底的に造形に拘った舞台美術に拍手を贈る他ない。ここまで拘ってなかったら後世への影響も無かったと思う。
この作品はただのSFホラーというだけではなく、わけのわからないものに翻弄される人間たちと閉鎖空間で疲弊していく集団という人間的な恐怖も描かれているのでどんどん先が気になってしまう。一歩間違うとギャグに思えてしまう数々のクリーチャーも実際にそこにいると思うと怖すぎて眠れないくらいだ。


インセプション (2010)

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クリストファー・ノーラン監督によるSF大作。
他人の夢の中に潜り込み秘密を盗み出す裏稼業に手を染める犯罪者集団の物語。

"夢の世界の具現化"は多くのフィクション作品や書物、果ては心理学や脳科学などという学問の分野でも話題に上がるような割とポピュラーなものだと思いますが、それをノーラン監督が取り上げたら最高のエンターテインメントに仕上がりました、ってな具合にこの映画は一言に集約されちゃいます。
それにしてもこの『インセプション』で描かれる夢の世界が特殊で、夢の中で眠ることでどんどん下のレイヤー(異なる夢の世界)に潜っていけるってのが面白くて、それも見てたら今は何層目の夢なんだっけと頭がこんがらがるくらいなんですが、雰囲気や色遣いでパッと見でこれは何層目の夢だと説明しているのが映像として大正解すぎて溜め息ついちゃいました。
しかもこの作品はサスペンスなので、割となんでもありな夢の世界を使って犯罪を目論むディカプリオ演じるコブ率いる集団が敵の目を掻い潜り、ときに対決をしてどのようにミッションを完遂していくのかが見ものになっているのですが、いつもは冷徹なコブがある瞬間には人間味を出してしまうのがドラマ性を生んでいます。最下層の夢なんてまさにそうで、完全に私事で仲間を危険に晒してしまう傲慢さに辟易しながらもずっと追いかけてきた幻影に振り回されるコブに哀切を感じずにはいられなかったり、それを乗り越えてのラストシーンのトーテムにやきもきさせられたりと最後まで目が離せないSF大作です。2時間半という上映時間が夢のように一瞬で過ぎていきますよ。


セッション (2014)

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『ラ・ラ・ランド』や『アド・アストラ』など多彩な作風で知られるデイミアン・チャゼル監督のデビュー作。
音楽学校のスパルタ教師と一介のドラマー学生が魂と魂をぶつけ合う異色の音楽映画。

僕は学生時代にドラムをやっていたのでこの映画はずっと観たかったんです。じゃあなんで当時に観に行かなかったんだって言われると何も言えないんですけどね。
とにかくこの映画のすごいところは、映像から迸るその熱量。主役2人の圧倒的な演技が凄すぎて映画全体に緊張感が張り詰めっぱなしでした。自分にはドラムの才能があると喜んだ主人公が鬼教師に散々痛めつけられて、プライベートも無くしてドラムに打ち込むも教師には認められないばかりか他のドラマーに代わられる始末、果てはついにドラムを諦めた主人公が辿り着いた場所とは一体なんだったのか。
この映画の真骨頂として語り草となっているラスト9分間は本当に息もつかせぬ気迫に溢れていて、これまでドラムに捧げた主人公とその主人公を散々痛めつけ最後の最後まで隙を見せることのなかった鬼教師との魂と魂のぶつかり合いが繰り広げられます。まさに身を削るほどのドラムソロを叩きまくる主人公と、それに指揮で楽団を率いる教師との間に生まれたものは本当の絆か、はたまた互いに認め合う心なのか……それまでの2人の関係性が一筋縄ではいかないために「ついにお互いを認め合えた」とか「主人公が教師に復讐できた」とか一概に言い表せられないラストになっていて映画史に残る屈指のシーンとなっています。


ベイビー・ドライバー (2017)

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エドガー・ライト監督によるアクション映画。
天才的なハンドル捌きによって犯罪者集団の片棒を担ぐ青年を巡る物語。

まずこれはアクション映画と銘打っているがアクションと音楽が融合した新しい映画だと思う。作中、主人公の青年はお気に入りの音楽をイヤホンで流しながら華麗なドライビング・テクニックを披露するが、カーチェイスシーンから銃撃シーン、ファストフード店でコーヒーを注文するシーンに至るまで様々な音楽が映画全体を彩っている。そのリズムやリフレインに合わせて効果音的にアクションが使われているのがスタイリッシュでオシャレ、クライム・アクションを描いているのに青春映画のような爽快感がある。
演出は現代風なのにフライヤーの色遣いやフォントは一昔前の広告っぽいし、主人公とヒロインは往年の犯罪者夫婦さながらの逃走劇を繰り広げる。今の小難しい入り組んだストーリーが展開する映画よりも昔の映画のような真っ先に清々しさが感じられるようなものを目指して作られているように感じた。
音にノる感覚というのはいつの時代も不変で高揚感を感じさせる。映像+音響でドラッグのように脳内に気持ちよさがクる感覚が素晴らしく、久々に観たあとに心地よい疲れを感じた作品だった。


Curve (2017)

ティム・イーガン監督によるショートフィルム。

短編なので1シチュエーションで出演者も1人のみというシンプルな構図ながら、主人公とともに極限状況が体験できる圧巻の10分間。
生理や中絶などの性のメタファーだと解釈する解説が多く出回っていますが、極限状況に陥った人間は為す術なくゆっくりと絶望に突き落とされる運命だと描いている、と直接的に解釈してもいいんじゃないでしょうか。






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