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買い物は“体験”だと思う

モノを買いたいだけならネットショッピングで良い。
それでも私は、わざわざお店へ出向いて買い物をするのが好きだ。

2019年の2月、新宿のアパレルショップで、薄いピンクの可愛いスニーカーを見つけた。
デザインはとてもシンプルながら、その絶妙な色合いが可愛くて気に入ったのだが、ピンクって合う服装が限られるんじゃないかと思って悩んでいたのだ。
店員さんに「スニーカーお探しですか?」と声を掛けられた。
「はい。このスニーカー、色が可愛いな、と思って」と返すと、「春らしくて素敵ですよね。お試着いかがですか?」と言われたので、「カラーってここに出ている(私の記憶が正しければ、他にブラックとブラウンがあった)のが全部ですか?」と聞くと、「そうですね」と言われたので、薄いピンクのスニーカーを試着することにした。

可愛い。思った通りだった。
ただ一つ、問題は、合う服装が限られそうだということ。

私は、靴はあまりたくさん持ちたくないため、できるだけどんな服装にでも合わせる必要があった。
洋服を買うときですら、持っている服と組み合わせて3通り以上のコーディネートができるかを考えてから買うほどである。

店員さんに、「これ、すごく気に入ったんですけど、ピンクって合う服が限られそうなのが心配で」と相談してみた。
すると、「意外と何でも合うと思いますよ!」と、雰囲気の違うボトムスを何点か持ってきてくださった。
ベージュに黒の線で花柄が描かれたスカート、グレーのチュールスカート、ネイビーのレースのスカート、淡いブルーのパンツ。
どれも自分ならピンクのスニーカーとは合わせないようなアイテムばかりだったのだが、違和感なくおしゃれにまとまっており、店員さんが次々にスニーカーに合わせていくのを見ているだけでわくわくした。

「あとは、今お客様がお召しになっているようなスタイルにもよく合うと思います」
私はその日、ブルーのシャツブラウスに白のニットを重ねて、デニムのストレートパンツを履いていたのだが、店員さんが持ってきてくださったような女性らしいアイテムばかりでなくカジュアルなスタイルにも合うな、と納得。

結局、そのピンクのスニーカーと、店員さんが持ってきてくださったグレーのチュールスカートも気に入って購入した。
初めて入ったお店だったのだが、とても素敵な接客で、良い買い物体験ができた。

が、あれは2019年2月。
その後、コロナ禍で外出自粛が続き、スニーカーやスカートを履く機会はほとんどないまま1年が過ぎた。
その分、あの日買ったスニーカーとスカートへの思い入れは強まるばかりで、スニーカーはその後ほぼ毎日履いていたためにボロボロになってしまったのだが、スカートは今でも大切に着ている。

そのお店は、コロナ禍で閉店してしまったらしい。
今、あのときの店員さんはどうしているのだろうか。

アパレルショップで店員さんに話しかけられるのは苦手だという人も多いが、私はあの日以来、話しかけてもらうためにわざわざお店へ行っているようなところすらある。

はじめましての店員さんが「お客様の雰囲気だと、こういうのもお似合いになると思いますよ」と持ってきてくださる、その客観的な意見が、実に的確なことはよくある話だ。

店員さんと話しながら選んだ方が納得して買い物できるし、何より買い物体験として楽しめると思う。

洋服だけではない、雑貨やアクセサリーも、家電も、本も、もっとごく日常的なスーパーやコンビニでの買い物も、店員さんと話すような買い物でなくても、お店という空間にいるだけで、発見や学びは溢れている。

買い物は“体験”だと思う。

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