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ゆらゆら帝国⑤ シングル曲 1998~2001

これまでにゆらゆら帝国のアルバムをレビューしてきたが、アルバムに収録されなかったシングル曲にも隠れた名曲がたくさんあり、こちらにも触れなきゃと思った次第。

1st Single「発光体」

1998年発売。デビューアルバム「3×3×3」の発売後に、収録曲の「発光体」をシングルカットしてアルバム未収録曲を2曲追加した内容のシングル。
この二曲はアルバム曲の別ミックスのものと別テイクの曲ということもありアルバムとの関連性が高いものになっている。

01.発光体

アルバムに収録されているため、既に上の記事で紹介しているのでそちらを参照していただきたい。
ただ、アルバムでは次の曲「つきぬけた」への繋ぎのためアウトロの余韻がぶつ切りされていたが、シングル収録版はしっかり最後まで余韻を残した音源で収録されている。当然、ベストにはこちらのバージョンが収録されている。

02.いたずら小僧

タイトルは違うものの、「3×3×3」の前半の語り部分をカットしてよりバンドの音を中心にしたミックスをしたものであり、ほとんど同じ曲だと思ってもいい。

「3×3×3」はかなり実験的なミックスでサイケデリックなサウンドだったが、それらを取っ払ったこちらのバージョンもシンプルながらもまた別の淡々とした不気味さを感じられる。ライブでは冒頭の語りが終わった後はどちらかというと「いたずら小僧」側の演奏をやっており、「そう夜は明けるんだ」の盛り上がる部分とかは特にライブっぽさがある。

03.彼女のサソリ

唯一のアルバムに完全未収録の曲かと思うが、実は間奏の部分の別テイクが「タートルトーク」というタイトルの曲になって収録されている。

ギターのリズム感とかささやくようなボーカルがボサノバのようで、ゆら帝の中ではやや異色の雰囲気がある曲。女性コーラスとの歌もアダルトな雰囲気があっていい。

2nd Single「ズックにロック」

1999年にアルバム「ミーのカー」に先駆けて発売された。
カップリング2曲は今回もアルバム曲の別バージョンが収録されたもので、このシングルもアルバムの延長線上にある内容となっている。

01.ズックにロック

こちらを参照。アルバムとは音源に違いはなし。

02.ミーのカー

アルバムタイトル曲も先行でカップリング曲として収録。
こちらはイントロの省略とアウトロの長いアドリブ演奏部分がバッサリカットされたことによって、演奏時間7分台とアルバムバージョンと比べると幾分かコンパクトになって聴きやすい。それでも一般的な曲で考えると長めなほうではあるが...。ベストではこちらのシングルバージョンが収録された。

03.彼の砂漠

アルバム「ミーのカー」の一曲目に収録されている「うそが本当に」のインストバージョンともいえる内容で、キーが違うものの、うそが本当にとコード進行が全く同じ。そしてタイトルも同曲の歌詞の一節からとられたものだとわかる。

演奏がスローになったことで演奏時間が伸びたが、この静けさがタイトルのように砂漠のような乾いた感じがあってとても良い。リバーヴ深めのギターが幻想的でサイケデリック。

3rd Single「ゆらゆら帝国で考え中」

2000年発売。この年はアルバムも含めてCDはこの一枚しかリリースしなかった年である。
次の年に発売された「ゆらゆら帝国 III」ではアルバムバージョンで収録されたこともあり、音源自体は全曲オリジナルアルバム未収録ということになる。
曲に何も関連性がなさそうな子供の集合写真をジャケにするセンスももはやかっこいい。

01.ゆらゆら帝国で考え中

当時のバラエティー番組「はねるのトびら」のオープニングにもなった曲で、かなりキャッチーで明快な曲になっている。こういったシンプルなかっこいい曲も作れてしまうのが曲作りの幅広さを感じる。リバーヴ深めのリードギターがどことなくサーフロックらしさも感じさせる。
「大体俺は今3歳なんだけど2歳の時にはわかってたんだよね」などなど坂本さんのシュールな世界観の歌詞もキラーフレーズが連発している。

02.針

前作のアルバムの名残を感じさせるガレージロックな曲。
ギターの歪みの強い感じが正に針のような鋭角さを感じてかっこいい。
全くのアルバム未収録曲がシングルに収録されるのは地味にこの曲が初でもある。

03.パイオニア

インディーズ時代の再録で、初出がライブ盤だったこともあり正式なスタジオ録音はこれが初。
ゲストで「White Heaven」などの様々なサイケバンドに在籍していたギタリストの栗原道夫がギターで参加しており、坂本さんとはまた違った手数の多いリードギターを魅せている。スローテンポでここまで弾き倒してしまうアレンジがとてもかっこいい。

4th Single「ラメのパンタロンetc」

2001年、アルバム発売の数カ月後にシングルカットで発売された。
このシングルは「etc」までがついたタイトルが正式なもので、ライブバージョンやアルバム曲の別バージョンが収録されており、普段よりも収録曲が多いEPのようなボリュームとなっている。
ピンクを基調としたジャケやCDデザインがアングラでサイケ感があってすごく好き。

坂本さんが雑誌のインタビュー(*)で言及しているが、このシングルのカップリング曲作りがのちのしびれ・めまいの制作方針にかなり影響を与えたらしく、確かに「BASIC TRACK」と称されたライブバージョンでの極端にミニマルで無機質なミックスはしびれの作風に近いし、「頭炭酸レディ」の「もはやゲストの女性にボーカルを歌わせる」手法や「少年は夢の中」での甘美な歌ものとかはめまいの作風に近い。
以降後期の作風へと変わっていくターニングポイントとなった、ゆら帝の音楽性の遍歴の中で重要な位置にいるシングルだ。

01.ラメのパンタロン

上記参照。

02.男は不安定 [BASIC TRACK from Live at LIQUID ROOM 2001.02.21]

アルバム曲のライブバージョンだが、意図的にギターやドラムの一部がカットされ正にリズムのベーシックな部分だけ残されている。
ライブバージョンなのに最後以外観客の声が全く聞こえなかったり様々な音が追加でサンプリングされていたりリミックスの側面も強い。

間奏の語り部分が女性の声になっており、より無機質で不気味な雰囲気になっている。

03.頭炭酸レディ

「頭炭酸」ではコーラスで参加していたママギタァのYOKOがそのままメインのボーカルを歌ったバージョンで、歌詞に特に変化はない。
元のメロディがキャッチーなこともあって女性が歌うとよりポップな印象に感じる。

原曲とはボーカル以外でもアレンジが細かに違っており、原曲にはない女性コーラスやギターが追加されており、原曲と聴き比べるとより楽しめる。

04.3×3×3 [BASIC TRACK from Live at LIQUID ROOM 2001.02.21]

ここからの2曲はまた2曲目と同日のライブ音源が収録されており、今度は栗原道夫がゲストでギターを弾いている。極端にミニマルな演奏の中現れる強烈なノイズのようなギターの音がこの方のギターであり、とてもサイケでフリーキーな演奏を楽しめる。

05.少年は夢の中 [Live at LIQUID ROOM 2001.02.21]

この曲のみスタジオでの極端なミックスはされずライブ演奏をそのままパッケージングした音源となっている。アルバムでは様々な楽器による浮遊感あるアレンジが特徴だったが、四人のみによるバンド感が強いこのバージョンも聴きごたえがある。ゆらいでいるような音のギターがドリーミーで気持ちいい。


*…ミュージックマガジン2007年10月号のインタビューより


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