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男運は生まれた時から決まっている?

「女性の男運は生まれた時から決まっている。父親によって決まるのだ」

ある精神科医のブログで目にした言葉だ。

科学的な根拠がどれほどあるのかは不明だが、私は妙に納得してしまった。


父は、物心ついた時から不思議な存在だった。父と雑談をしたという記憶はない。話しかけても、一言応答するだけで、会話にならない。頭を撫でられたり、抱きしめられた記憶は皆無だ。ファミレスやスーパーマーケット、おもちゃ屋に買い物に行ったこともない。私は塾へは行かず、勉強は父に教わった。父は頭が良い。私は出来が悪いので、答えが分からないと大声で怒鳴られた。母は台所で気配を消し、私達を遠目に見ていた。


今でも忘れられない出来事がある。帯広のばんえい競馬場に行った時のこと。数匹の馬が大きな荷物を引き坂道を登って競争する。ある馬だけが遅れを取り、鞭で叩かれていた。悲鳴を上げ、必死で登ろうとしていたけれど、頂上間近で大きく転倒し棄権となった。それを見ていた父は「七海みたいだね」と笑って言った。私は直ぐにトイレに駆け込み、どうしてこの人はそんな酷いことが言えるのだろうと溢れる涙を抑えきれなかった。


こうした出来事が今の恋愛にどう影響しているのかわからないが、私は男性に言葉によって傷つけられるのを極度に恐れている。私は話を聞いてくれたり、自分のことを褒めてくれる男性が好きだ。沢山本を読んでいて、美しい言葉を使う男性と一緒にいると安心する。新聞で話題になっている世界情勢や経済の質問に答えてくれる男性との対話は時間を忘れるほど楽しい。仕事で悩んだ時、私自身が成長を実感できる現実的なアドバイスをしてくれる男性を頼もしいと思う。私の身体を見て夢中になり、この上ない快楽を与えてくれる男性を愛おしく思う。

そうなると、私が一緒に時間を過ごしたいと選ぶ男性は父親ほど年齢が歳上になるのだった。そして、不思議とみな善良な経営者だった。親しい友人に話しても、怪訝な顔をされ、自分を大事にした方が良いよと諭される。これは世のパパ活などという活動とは全く異なるにも関わらず理解されない。


考えすぎだ、父親を赦しなさい、自分を愛しなさいという言葉を聞く度にまた疲弊する自分がいる。確かに父親は悪気があったわけではないのだろう。相手の気持ちを汲み取りコミュニケーションを取るのが苦手なのだ。聴覚過敏があって、騒がしいレストランやスーパーマーケットに行くのが困難であったのだろう。人より抜きん出て勉強が出来たので、私が簡単な問題で何度も躓くのを理解出来なかったのだろう。暴力を振るわれたことはないし、大学までの学費も全て払ってくれた。2年前癌を患い早期退職してからは、随分と穏やかな性格になった。父にとって仕事を続けるのは相当なストレスだったのだろう。父も大変な思いでこの30年間を過ごしたのだ。


幼少期、抱きしめられることや冗談を言い笑い合う事、褒められるという人生で一番大切な機会を与えられなかったとしても、そんな事は関係なく、学校を出て、働き、結婚し、子育てをすることを当たり前のように社会は強要する。それにより、もがき、苦しみ、いわゆる常識から外れた行動を少しでも取ると批判の嵐に巻き込まれる。


私は幼少期に与えられなかったものを満たせるようになりたいと願い続けている 。

今の職場は、ミスをしても「次から気をつければ良いんじゃない?」と笑って許してくれる。自分の意見をハッキリ言えない時も、謙虚で良いと褒めてくれる。弱い私を、柳の木のようにしなやかだねと認めてくれる。

人はみな自分では選ぶことのできない運命に翻弄され、生きていかざるを得ない。

私はもう自分のことも、誰のことも批判したくない。お互いを認め合うこと、褒め合うことが当たり前のこの場所に身を置き、与えられなかったものを少しずつ取り戻していきたいと思う。



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