「安産」と「いいお産」
出産後、産婦さんに「頑張ったね、安産だったね」と、つい無意識に声を掛けてしまいがちだけど、のちのち反省することがある。
それは、出産後に行う’お産の振り返り’でしばしば起こる、私と産婦さんとのズレだ。このズレをすり合わせるために、’お産の振り返り’をするのだけれど、これがお互いにとっても大切で必要だったりします。
では、一般に言われる「安産」とはどんな出産なのでしょう?
goo辞書によると
あまり苦痛や危険もなく子を産むこと。軽いお産。
とあります。
「安産」ってどんなお産なのだろう?
私個人としては、産婦さんご本人が「安産だった」と思えたなら、どんな出産方法・経過であれ、安産なのだと思っています。なぜそう思えるようになったのか、その過程を書き留めたいと思います。良ければご参考下さい。
助産師である私の「安産」
私の思う「安産」は、経過の早い出産です。
一般的に初めて出産される方(初産婦さん)は出産までの経過(時間)が、平均約12時間、2人目以降の経産婦さんは平均約6時間と言われています。
ですが、それも個人差がありまして、初産婦さんでも3時間で出産される方や、経産婦さんで1時間もかからず出産される方もいらっしゃいます。
ちなみに私が現在までサポートさせていただいた出産で一番早かったのは、経産婦さんの32分。間に合って良かった的なバタバタ出産で、非常に申し訳なく思った出産でした。(バタバタ出産、結構あるあるで申し訳ない限りですが、やむを得ない場合がほとんどです)
産婦さんが感じた「出産体験」
私が「安産」と思った方の印象に残った’お産の振り返り’のごくごく一部をご紹介します。
・一気に陣痛が来て、訳が分からずパニックになった。怖かった。
・前回より時間は圧倒的に短かったけど、痛みは前回の比じゃなかった。
・うまくできなかった。
・叫んで取り乱してしまって恥ずかしい。こんな人いないですよね。
・あんなに呼吸法練習したのに全然できなかった。
私がうまくサポートできなかったとか、ちょっと大変な出産だったと思った方の振り返りです。
・ずっと腰をさすってくれて、声を掛けてくれたから頑張れた。
・すごく頑張れたと思う。
・私のお産って安産ですよね?
・大変だったけど、産めて良かった。
・もう無理だと思ったけど赤ちゃんが元気で良かった。
助産師と産婦さんの感じ方の「ズレ」
最短32分で出産された経産婦さんですが、ものすごく安産で良かったねって思いませんか?陣痛の時間が短いから良かったねって思うのだけど、それはこちら側の先入観。産後に’お産の振り返り’をすると、本人は急に痛くなって訳が分からなくなってしまい、安産ではなかったと感じていました。
逆に、私が技術的に未熟で、不快な思いをさせたのではないか?と落ち込みながらも伺うと、寄り添いに感謝されたり、出産した達成感を持たれていたりすることがあります。
出産には、お互いに共有した時間・想いを語り合わないと、気付かないことがたくさんあります。お互いのズレを確認し合い、そのズレはこういう事なんだよと、出産を肯定的に受け入れて、お母さんになった産婦さんが、スムーズに育児へとギアチェンジできるようにサポートする。そんな役割も助産師は持ち合わせています。
願いは「安産」よりも「いいお産」
助産師のサポートがうまくいかなかった部分があったにしろ、出産までに30時間かかったにしろ、産婦さん自身が頑張った!いいお産だった!と思えたら、すべてがマル◎だと思っています。
あえて、「大変なお産だったね」「安産だったね」なんて言う必要もなく、どう感じたの?「時間がかかったのはこんな理由だったんだよ」とか、「呼吸法ちゃんとできていたよ」などと、私自身が寄り添いの中、見て感じた事実を産婦さんに伝えるだけ。
あ、それってそういうことなんだと、そこから産婦さんが、喜びや達成感を見いだせるまでが私の役割だと思っています。
これから出産するあなたへ
出産に対して「夢」があるけどコロナ禍ではそれが無理だったりするかもしれません。ですが、赤ちゃんとあなた自身が、健康な状態で出産をむかえ、無事に出産することが大前提なのです。
お産は何があるかわからないと言われていますが、理想の出産「安産」を目指すには、ココロとカラダ、日々の生活を整えておくことが大切になります。たとえ、出産場所・出産方法が理想通りではなくとも、それは間違いないと断言できます。
何もかも先生や助産師におまかせではなく、理想の出産に近づけるように準備をしておきましょう。(母親学級・両親学級で教わりますよ)
妊娠中の準備も、出産後の達成感につながります。頑張りは裏切りません。そして出産が近くなったら出産のイメージとシュミレーションをしましょう。実際シュミレーション通りに進むことはないかも知れませんが、行動は大切です。きっと良い方向に進みます。
出産に良い思い出がないあなたへ
「前回の出産は思い出したくもない」「出産後、担当の助産師さんと話しなんかしてない」そんな言葉をうかがうことがあります。
「出産がトラウマになってしまったから、今回は無痛分娩を選択しました」とうかがったりすると、ちょっぴり切なくなったりします。
出産に対するちょっとした「ズレ」が、そのままココロの傷になることが良くあります。あなたはずっと、その傷を抱えたまま、お母さんとして育児・家事・仕事を頑張ってきたのですね。
その傷は、ココロの奥底にいつまでも残しておいては次のステップを踏み出せないかも知れません。何年前であろうとも、その思いは消えません。ある日ひょっこりとその感情が出てくることがあるでしょう。まずはその気持ちを消化(昇華)して頂きたいのです。
話すだけで解消できそうであれば、ココロを許せる友人に聞いてもらい、解決できそうになければ、地域の助産師やカウンセラーに相談するのが良いかも知れません。
ただ、いきなり相談って・・・と二の足を踏むようであれば、このコロナ禍、オンライン相談を行うカウンセラーや助産師が増えているので、探してみるのもひとつです。
さいごに
「いいお産」だったと誰もが笑顔で語れたら、もうそれが「安産」なんですよね。私はそう思って日々寄り添い人を続けています。
そして実は産後ケア施設での経験から、産後のサポートが一番得意だったりします。
そしてそして、記事を読んで私にココロを開けるかも?と思って下さったとしたら・・・
女性の健康のオンライン相談をしておりますので、妊娠・出産・子育てのことや出産のトラウマなどのご相談もお気軽にどうぞ。
この記事が、次のステップに踏み出せる一歩になれることを願っています。
パラレルキャリアをもつフリーランス助産師です。歩くパワースポットと呼ばれるくらい幸運体質な私が、妊娠/出産/子育て/女性の健康/の情報発信と日々のくらしのよしなごとをエッセイでつづっています。サポートしていただけたら最高にうれしいです!