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桜が綺麗だと、初めて言ったのは誰なのだろう

桜の訪れの香り
川の水面が揺れて帷が落ちる
春の光に照らされた水面がキラキラと揺れる

久しぶりに会った友人はマスクを外して堂々と街を歩いていた
未だにマスクを外せないわたしは、布のしたで世の中に充満する甘ったるい空気を目一杯吸う

目に見えぬ誰にも分からぬ孤独がそこにはあった。それは同時に誰でもない孤独だった

春が嫌いだった。何かが変わらなくちゃいけない強制感のある空気が嫌だった。
わたしは結局わたしでしかないのに
そんなことに思い悩むのも馬鹿馬鹿しいと思っているのに。なのに悩む自分が馬鹿馬鹿しい。

そんな悩みはしょうもないよ、というように、
毎朝流れるニュース番組では桜の開花予想を報道する
花がいつ満開かを報道するニュースキャスターの眼は真剣そのものだ

自分はいつだって真剣なのに、とため息をつきながらいつも通り会社に行くためにマスクをして家のドアを開けるのだった。

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