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疲れたら、草枕。

疲れたら草枕。


〉山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

冒頭であげられるのは、ただただ漏れる愚痴でも、悲壮感ではない。
あくまでも、目の前の世界をグッと客観の域に引き離して、観ようとする画家や芸術家の視点だ。
草枕にいつも勇気をもらうのは、
詩や絵画といった芸術の有用性をその後のくだりで、ハッとさせられるからだ。

〉住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟ったとき、詩が生れて、絵ができる。
人の世を作ったのは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三件両隣にちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。
あれば人でなしの国に行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくいところをどれほどか、寛容て(くつろげて)、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。
ここに詩人という天職ができて、ここに画家という使命が降る。
あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊い。

束の間命をいかに生きるか。
あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊い。
人の心を豊かにできる尊い人たちのワザを目の前にして、勉強させられることが多い。
私もそういう人になりたいなと、10年前は思っていたなぁと、草枕を久しぶりに読んで、想う。
#夏目漱石 #草枕

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