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ウールインナーの話② 〜あったかインナーだけで終わらせない〜

あったかインナーにぴったりな高機能素材、超極細メリノウールに出会ったわたし(前回の話はこちら)は、さっそく試作品として半袖と長袖のカットソーを作りました。着てみた感じは悪くない、しかしなにかが足りない・・・。
実はその試作品、あまりにインナーっぽく仕上がってしまったのでした。

このままだと、「すごく良い生地で作った冬用インナー」になってしまう。もちろんそれでも、肌荒れに悩む人の助けにはなるかもしれない。だけれど、わたしがどこかに抱えていた「春夏が来ると衣替え要員となって去っていく服、もったいない」という気持ちは解決しないままです。

せっかくの高級な生地(当然、値段も張ってしまう)、冬が終わったら捨てられたり衣替えで仕舞われたりするのではなく、もっと長い期間一軍として着られる服であってほしい。真夏に長袖は無理としてもスリーシーズンは着ることができて欲しいし、半袖であれば文字通り一年中着られる服にできないか。

次のわたしのチャレンジは、「冬用のあったかインナーとして成立させつつも、1枚で着るカットソーとしても主役となれるデザイン、仕様、サイズ感を追求すること」になりました。

インナーに求められることは、出来る限りコンパクトなサイズにして上から服を着てももたつかせないこと、上から着た服に響きにくい細部の仕様、上から着る服から覗かないように襟ぐりの開きを広くする、など。
一方、1枚で着るカットソーに求められることは、1枚で着ても成立するようなピタピタすぎないサイズ感、カットソーとして美しいパターン・細部の仕様、1枚でも着られる襟ぐりの開き、などになります。
この両サイドからの要求を出来る限り叶える中間点探しが始まりました。

一般的なインナーよりはちょっとだけ大きく、1枚で着てもコンパクトトップスとして成立する、だけどインナーとしてももたつかないサイズ感。カットソーとして美しいたたずまいを持ちつつ、表に響きにくい仕様の襟ぐり。
特に悩んだのが、首の開きです。インナーとして考えたら、あらゆるトップスからチラ見えしないように、できるだけ広く開けておくのが安心(なので、多くのインナーの胸元のU字開きは大きめに設定されていることが多いと思います。でも、首元が詰まった服が多い最近のトレンドからすると、このラインは適当なのかなぁ?と以前から気になっていました。服のネックラインとインナーのネックラインが合わずに、インナーの深いU字が透けたり響いたりして微妙に見えることありませんか?)。
一方で、そんな大きな胸元の開きは、1枚で着るトップスとしてはふさわしくないことも。トレンド感もありますし、昨今の骨格診断の流行にもあるように、ひとりひとり似合う首元の開き方は違う。(ちなみに、わたしは首元が詰まっているのが似合うタイプ。だから首元が大きく開いている服が苦手です。胸元も危うくなるし。)

上に着る服との合わせ、トレンド感、個人個人の骨格や似合わせを考えると、胸元の開きについてはこれがベストというものはなく、シーンに合わせて選べるのがベターという結論になります。

そこで最終的に、長袖カットソーについては前後ろどちらを前にしても着られる2way仕様にすることで、この問題を出来る限り解決することを目指しました。
前側の首元はそれなりに大きめに開けて、インナーとして着た時にもチラ見えしづらいように。
後ろ側の開きはもう少し狭めにして、ボートネック気味に。
お客様の骨格、お好み、その日のスタイリングによって、この2種類の胸元の開き方を選んでいただけるようにしました。

たとえば1枚でカットソーとして着るとき、首元がやや詰まったスタイリングにしたい場合には、「後ろ前」で。ボートネック気味のカットソーとして着られます。また、このとき背中側の開きは少し大きめになるので、背中側にちょっとしたアクセントが生まれます。

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また、インナーとして「後ろ前」が特におすすめなのは、薄手で首の詰まったニットやタートルの中に着るとき。インナーのラインが響いたり透けたりしても、カットソーの首のカーブがニットの首のカーブに寄り添い、深いU字が微妙なラインで透けてしまうことがありません。

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また、半袖カットソーについてはオールシーズン着られることを目指して、半袖Tシャツとしての美しい佇まいを追求しました。長袖カットソーは裾に向かってやや細みに若干シェイプさせているのに対して、半袖はすとんとしたボックスシルエット。ボディラインを過度に拾わずほんのりゆとりを持たせているので、1枚で着たときにも自然な佇まいに。

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カットソーのスタイリングについて詳しくはこちらから。

最終的に、このカットソーの試作にはかなりの回数を繰り返しました。ピタッとしすぎず上から服を着てももたつかない、首元は開きすぎずでも狭すぎない、そんなサイジングはミリ単位の調整ばかりです。特に長袖は前後ろどちらも前にして着られる2way仕様にしたために、難度はさらに2倍に。
何枚もできていくサンプルたちをみて、これでもう一生冬用インナーを買わなくてすみそうだなと思いつつ、どんどん寒くなっていく季節に焦りもありつつ、なんとか最終仕様が決定。そして12月に発売にこぎつけました。

わたし自身、試作を繰り返していた秋頃から冬本番の今日まで、このカットソーを日々着倒していますが、実際に毎日のスタイリングの中にもとても取り入れやすく、もちろん暖かで肌荒れすることもなく、快適に着られています。(ちなみに、あまり洗濯もせずに連日登板させて、メリノウールの防臭抗菌効果を実践でお試し中。汗をかいた日でも、コットンなど他の素材よりも圧倒的に匂いが気にならないのを体感中です。)
冬のあったかインナーにもとっても良いのですが、暖かくなったら長袖カットソーを1枚で着て、コンパクトトップスとして楽しみたい!5月か6月以降は、半袖カットソーをTシャツとして1枚でガンガン着ていきたいと思っています。汗かきの季節に本当に匂いが気にならなければ、真夏にもとっても使えそうで今から楽しみです。

ちなみに、同素材でインナーボトムも作りました。こちらのアイテムにもこだわりがたっぷり詰まっています。寒さ本番の今、こちらも毎日活用中!


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