私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション114『尻(しーり)』
作者駐:『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、コメントいただければ前向きに検討させていただく所存です(←政治家か
※今回は、『尻』を使った慣用句をフル活用してみました。最後にそれぞれの意味を記載していますので、解らなかったら文末をチェックしてみて下さいませ。
(土曜の昼下がり。リビングでゴロゴロテレビを観ている男に、キッチンから出てきた女が腕組みをしつつため息混じりに声をかけた)
「もうすっかり尻が暖まったんじゃない?」
「ただでさえあんたは尻が重いってのに、おまけに尻が長いってどうなの」 「良いじゃねえか、俺はお前みたいに尻が軽くねえんだよ。それに俺は尻を据えてるだけだ」
(男はたまらない、とばかりに起き上がり、女のほうをみる。しかし女は腕組みをしたまま上から目線でこちらを見続けていた)
「へえ、据えてる、ねえ」
「な、なんだよ」
(その瞬間、女は腕組みを外し、男を睨みつけた)
「もう尻は割れてんのよ」
「な?!なんのは、話だよ」
(女の迫力に気圧される男)
「あんた、普段は人の尻を叩いて自分の尻を拭わせておいて、それでも自分の尻に火が付いたら、さっさと尻を捲って逃げ出すそうじゃないの」
「んな?そ、そんな」
「高橋部長の奥さんから聞かされて、ほんと情けないったら無かったわよ」
(高橋部長の名前が出たせいか、男の顔が真っ赤になったかと思うと、勢い良く立ち上がった)
「う、うるせえよ!何だよ、偉そうなこと言って、結局そっちの尻を持ち込んできただけじゃ」
「うるせえって何よ!良いからてめえの尻はてめえで拭えっての!」
「うっ」
(女のべらんめえ口調の恫喝に、男が怯む)
「それが『立派な大人』ってもんでしょ?」
「ううっ」
(あまりの怯み加減に情けなくなったのか、女はため息を一つ)
「まがりなりにも私が惚れた男なんだから、もっとイイオトコにな」
「ち、ちょっと図書館に行ってくる」
(隙あり、と言わんばかりに男がジャケットと財布をひっつかんで走りだす)
「ってほし……って、図書館ってあんた今まで行ったことない」
「行ってくるから~」
(バタン、という玄関の閉まる音が女の言葉を遮った)
「じゃないの……ってほら、結局尻を捲って逃げてくし。んもう」
(文字数不明)
しり [尻・臀]
①動物の胴体の後部で,腰の下の部分。臀部(でんぶ)。けつ。
②物事の一番最後。
③丸みを帯びた容器などの底の部分。
(今回使用した慣用句)
[尻が暖まる]同じ所に長くとどまる。
[尻が重い]なかなか行動を起こそうとしない。
[尻が軽い]軽率に行動をしがちだ。(女性が)浮気っぽい。
[尻が長い]他人の家で話し込んだりしだすと,いつまでも帰ろうとしない。
[尻が割れる]隠していた悪事などが分かってしまう。
[尻に火が付く]さし迫った事態になってあわてる。
[尻を据える]何かを落ち着いて行うために,その場所にとどまる。
[尻を叩く]無理にでも行うようにしむける。叱咤激励する。
[尻を拭う]他人の失敗の後始末をする。
[尻を捲(まく)る]居直って反抗的な態度をとる。
[尻を持ち込む]後始末をつけるように関係者に迫る。
[尻に敷く]妻が夫を軽んじて,言いなりに従わせる。
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