『長いお別れ』本人と家族の人生がリンクする涙と笑いの認知症映画ー昔、映画が好きだった。そして今も好きなのだ 60s映画レビュー(12)
この映画のテーマは「認知症」です。
と言えば私の映画レビューの第1回が同じく認知症をテーマにした『ファーザー』の紹介でした。
というわけで、必然的にこの2本を比べながら見ることになってしまいました。
義父母を介護した経験のある私の妻いわく『長いお別れ』は実体験にかなり近くて現実を反映しているということです。当時の私は横からちょっと手助けしただけだし、施設でお世話になっている実父も認知症がひどくなる前に運よく入居できたので妻ほど苦労はしていません。なのできっと妻の評は正しいと思います。
どうやら、現実を描いているという点については『長いお別れ』に分がありそうです。確かに認知症になる父親(山﨑努)とその家族(松原智恵子・竹内結子・蒼井優)の葛藤が丁寧に描かれているという感想です。
長女も次女もそれぞれうまく行かない人生を背負っていて、そこに認知症の父親の思い出と現実がリンクする構成になっています。
でも『ファーザー』に比べると「かなり感傷的だなあ」と思います。やはりそこは、いい意味でも悪い意味でもジャパンテイストだな、と。
もちろんこの映画は認知症を悲劇的に描いているわけではありません。笑いあり涙ありのいい映画です。むしろ悲劇にしないようにかなり気をつけているという印象です。
でも『ファーザー』がこの重いテーマを心理劇エンターテイメントにしてしまうその逞しさを知っていると…。映画クリエイターとしてのスゴさは『ファーザー』に軍配が上がるかな?と思います。
なお、『ファーザー』の主演アンソニー・ホプキンスも凄い演技でしたが、日本の山﨑努もこれまた凄い演技です。
ちなみに妻役の松原智恵子があまりに美しくて若い竹内結子と蒼井優が霞んでました。