ドラムサークルで学んだこと
知人のSNS投稿を見て長らく気になっていたドラムサークル。
コロナ禍で機会そのものがなくなっていましたが、このたびようやく「ドラムサークル for ティーチャーズ」に参加することができました。
ちなみに私は、音楽に対する造詣は皆無です。
音楽は好きですが、「何が好き?」と聞かれたら困るくらいの、趣味とも言い難いレベルの「好き」です。
それでも音楽は人生にないと困るな〜という感覚はあります。
でも、太鼓系の楽器に対する親近感は持っていました。
それは小学生の頃の記憶。
ピアノを習っていたので音楽会ではなんとなく毎年ピアノを担当していました。
でも本当はピアノは全然好きじゃなかった。
今思えば、親にやらされている感覚が好きじゃなかったんだと思います。
4年生の時、毎年惰性で担当していたピアノではなく、太鼓を選んだ時の開放感と楽しさは原体験かもしれません。
意識していませんでしたが、息子の名前も「鼓太郎」。笑
そんな個人的なバックグラウンドはさておき。
私が2日間で感じた「ドラムサークルで学んだこと」を振り返ってみたいと思います。
1.ことばはいらない
初日の朝、会場に到着すると、サークル状になった椅子とたくさんの打楽器が並んでいました。
これだけでもう、ワクワクしてきます。
言わずもがな、非日常の世界にいざなわれます。
会場には、ゆるやかに音楽が流れていました。
開始時刻が迫ると、それぞれが好きな場所に座り始めます。
ベースドラムの方が、会場の音楽に合わせてリズムをとり始めます。
それに合わせて、おそらくドラムサークルに慣れた方々が自由に目の前のパーカッションを叩き始めます。
気持ちが高揚してきて、私も目の前にある楽器を叩いてみたくなりました。
でも、叩き方もお作法もリズムの取り方もわかりません。
それでも、恐る恐る、叩き始めてみました。
一人、また一人と、目の前にある楽器を自由に叩き始めます。
気がつけば会場の音楽は止み、私たち全員で音楽を奏でていました。
そしてそのまま20分以上、間にファシリテーターが入りながら、みんなでリズムを合わせていく時間を楽しみました。
「10時になりましたので始めましょう」とは誰も言わない。
私のように初めて参加した素人でも自然とその場に交われる。
全員で叩いていれば「うまい・下手」はわからないから自由に心のままに演奏できる(これが気持ちいい)。
ファシリテーターはいるけれど、基本的にはジェスチャーだけなのに、今みんなでこの場のリズムのために何をすれば良いかがわかる。
とても不思議なウェルカムドラムサークルの時間でした。
2.ドラムサークルのすごさ(ファーストインプレッション編)
ウェルカムドラムサークルで感じた「すごさ」は3つ。
1つ目は、フラットな場がすぐに生まれること。
私はドラムサークルについてほとんど何もわからず、初めて参加しましたが、それでも20分強の即興演奏を楽しむことができました。
それはひとえに、ドラムというシンプルな楽器をみんなで叩くことで、古参・新規、うまい・下手といった上下関係を感じなくていい場が生まれるからでしょう。
2つ目は、ナチュラルなリーダーシップ形成につながりそうなこと。
上記で上下関係は感じないと書きましたが、さまざまな形のリーダーシップは存在していたと思います。
例えば、ベースドラムの方は全体のためにリズムをキープしなければならないので、完全に自由な演奏はできなかったと思います。
場における重要な役割として、基本のリズムを崩さずにそこにいてくれて、メンバーの自由な演奏を下支えしてくれていました。
私はたまたま、ベースドラムの方の隣に座っていたのですが、その方の在り方に私自身がものすごく影響を受けていて、隣にいるおかげで安心して自由な演奏ができました。
また、ドラムサークルに慣れている人たちは、率先して演奏に参加するなど、初めて参加する私のお手本になってくれていました。
みんなが参加しやすい雰囲気を作ってくれているのは間違いありません。
これをリーダーシップと呼ばずして何と呼びましょう。
3つ目は、自分の在り方を見つめる機会になること。
上記のとおり、初参加の私にとっては、演奏に参加するまでにいくばくかの葛藤がありました。
この楽器、叩いてもいいのかな?
どうやって叩くんだろう?
お作法とかあるのかな?
リズムってどうやればいいんだろう?
私の場合は早い段階で「まあいいか、叩いてみよう」と思えたので余計なことは置いておいて叩き始めてみました。
ですがこれ、許可がほしい人、上手く見せたい人(下手だと思われたくない人)、べき論が強い人はスルッと入れないかもしれないな〜と思いました。
でも、「演奏に入るときに何を感じていましたか」という問いで振り返ることは、自己理解につながる(教育現場で活用できる!)と確信。
さらに叩き始めても、まだまだ遠慮がありました。
とりあえず、おとなしめに、遠慮がちに叩いている自分がいます。笑
初めての人間関係に足を踏み入れる時、多くの人が「様子見」をするとは思いますが、私はこんなふうに、自分の力を抑えることで「様子見」をしているんだろうな〜と気づく瞬間でした。
3.一歩踏み出してみよう
すごく楽しかったウェルカムドラムサークル。
とはいえこれ、自分の現場で活用できるだろうか、という心配がよぎります。
こんなにたくさんのドラムを揃えられそうもないし、そもそもドラムに造詣が深いわけでもない。
次のステップをどうすれば良いかという疑問が浮かびます。
そこは流石の「for ティーチャーズ」。
学校の先生方の事例紹介を聞いて、みんなできることからスタートしているんだとわかりました。
How toよりも、子どもたちのためにどういう授業をしたいのかという「思い」が大事なんだと、原点に戻れるような時間でした。
一歩を踏み出す勇気が湧きました。
とはいえHow toもだいじ。笑
分科会で私はカズ(清水和美)さんの人材育成セッションに参加しましたが、そこでは「太鼓がなくてもできるアイデア」をたくさん共有していただきました。
自分の現場で、まずはシェイカーを使ってみます!
4.ドラムサークルのすごさ(ファシリテーター編)
2日間のドラムサークル for ティーチャーズでは、参加者がファシリテーターになる場面もありました。
ファシリテーターを実施したら、次のファシリテーターを参加者の中から指名していくスタイルです。
私は2回、ファシリテーターを体験する機会をいただきました。
もちろん「ドラムサークルのファシリテーターとは?」ということは一切、習っておりません!笑
最初に指名されたときは、かなり動揺しました。
これまでのファシリテーターをもっとちゃんと見ておけば良かったとか、これから何をしたら良いのかとか、頭の中を駆け巡りました。
でも、腹をくくるのは得意なのと、真ん中に立った時に自分が何を感じるのかを体験してみたいという好奇心で、ファシリテーターをやってみました。
真ん中に立ってまず感じたのは、今あるリズムに乗ってファシリテーションをしなければならないんだな、ということ。
最低限、これを崩してはいけない気がしました。
言い訳もできない、説明もできない。
自分の体を使って、シンプルにやりたいことを伝えなければならない。
これまでの流れを真似ることしかできないと思い、「自由演奏から回数を決めてみんなで合わせて叩く」をやることにしました。
そして前例に従い、メンバーの一人に「何回叩きたいか」を聞きました。
今までは「1回」とか「5回」だったのに、今回のリクエストは「1回、2回の連続」!
思わず「え〜!」と叫んでしまいましたが、リクエストには応える主義。
すぐさま切り替え、どうやったらできるかを考えました。
メンバーにとってもパターンが変わるので、丁寧に伝えなければと思いました。
サークルの真ん中で、ジェスチャーで指示を出しながら一人ひとりの顔を見て、ぐるっと回って伝えてみました。
伝わったと思ったら、あとは信じて全体にジェスチャーで指示を出します。
「ドン!ドンドン!」
伝わってた!!!
嬉しくて何度も「1回・2回」を叩いてもらい、次の方にバトンタッチしました。
真ん中に立ってみて、改めて「ファシリテーターとは何か」について考えさせられました。
ものすごく集中した、フローな時間だったと思います。
ファシリテーションを長くやってきましたが、こんなに場のことを考えたことがあったかしらと、これまでを少し反省してしまうほどに。
指示はシンプルに
ジェスチャーは大きく(伝わるように)
一人ひとりに丁寧に伝える
言い訳や細かい説明はいらない
場のリズムに自分が合わせる(崩さない)
みんなが楽しくなるような指示ができたら最高(主役は演奏者)
きちんと学べば、もっともっと、学びはあると思います。
私自身もドラムサークルのファシリテーターを通してもっといろんなことを学びたいし、学生たちがこれを体験することで必ず学びがあると実感できました。
こちらは、2回目のファシリテーター体験。
動画を撮ってくれた方が送ってくれました(ありがたい!)。
ボリュームのアップ・ダウンを試してみました。
もっと意図を持ってファシリテーションできたらな〜と思います。
5.Playfulであり続ける
ドラムサークルに加えて、今回の参加の大きなモチベーションになったのは、同志社女子大学名誉教授の上田信之先生のセッションがあることでした。
上田先生といえば「Playful Learning」。
10年くらい前にHR系のイベントで上田先生のセッションに参加しましたが、その時も見知らぬ人とチームを組んで夢中でレゴを積んだことを覚えています。
今回は、ドラムサークル×レゴタワーへの挑戦。
上田先生が別のイベントで作った曲を歌いながら、チームの半分はドラムを叩き、半分はレゴタワーを作ります。
♬やってみてわかる まずやってみよう
ほんとにほんとにほんとにやりたいことやろう♬
この歌詞の内容は、いつも私が大学生に授業で伝えていること。
今回は自分自身に問いかけながら、レゴを積んだりドラムを叩いたりしました。
ドラムを叩いているときは「振動でレゴタワーが崩れませんように」と小さく願いつつ、応援する気持ちで叩きました。
レゴタワーを作るときは、周りを見て、今どの役割が必要かを判断しながらやれることをやりました。
普段、上田先生のレゴタワーでも音楽を流しますが、今回は生演奏。
上田先生のギターと歌に、DCFAの皆さんが鍵盤ハーモニカなどを持ち出して演奏を加え、そこにドラムが乗ります。
生演奏だと少し場の雰囲気が変わるというか、空気が温かくなるような感じがしました。
夢中になったあとは、リフレクション。
振り返って言語化することが大事だと私もいろんなところで言っていますが、上田先生もおっしゃっていました(嬉しい)。
Playfulとは「本気で取り組む」こと。
これはドラムサークルやレゴタワーをやったあとだからこそ沁みてくるものがあります。
楽しいんだけど、本気。
ここから見えてくるものは何か、ということを言語化していくことに意味があるのでしょう。
事例紹介の際にある先生が、ドラムサークルを学校に取り入れる際に「楽しいだけじゃダメ」と言われがちだとおっしゃっていました。
これは企業でもよくあること。
「楽しくて何が悪い」と思わずにはいられませんが、エビデンスが必要なオトナを説得するためにも、引き続き言語化をがんばっていきたいなと思いました。
そして、Playful Beatとは「態度」であり「つながりの感覚」。
これは……Points of Youと完全一致です。
本気でやる態度があれば、人はつながれる。
私も体験的にそう思います。
最後に、ドラムサークル×レゴタワーをやってみて感じたことを一言で表現しました。
私は「センタリング」と書きました。
自分自身も楽しみながら、みんなで何かに向かっていく感覚。
場の中央と、自分の中央に向かっていくような感じをこの言葉で表現しました。
6.私が教育で成し遂げたいこと
そもそも私が教育の場に身を置きたいと思うようになったのは、企業で採用を担当したことがきっかけでした。
私自身も大学生の時はそうでしたが、自分のことなのに自己PRができない、採用担当者とコミュニケーションが取れない、ということに大きな疑問を抱きました。
そこから大学生、高校生、中学生、小学生と、キャリアコンサルタントとして関われる場所に足を運び、たくさんの児童・生徒たちと話す機会を持ってみました。
多くの子どもたちは家庭や学校で十分に自分を表現しきれていないと感じました。
私は今は非常勤講師ですが、いつか正規の教員となって、学生たちにコミュニケーションや対話を通じた「つながりの感覚」をさまざまな角度から経験させたいと思っています。
この5年間でもいろいろ試してみましたが、もっと身体的なアプローチが必要だと感じていました。
ドラムサークルにはそのヒントがありました。
自分の中でも忘れかけていたPlayfulの感覚を取り戻しました。
もっと私が楽しまないと。
後期の授業、今まで以上にPlayfulに仕掛けていきます!
7.関連リンク
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