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台北物語

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12月1日 金山叙情

12月1日 金山叙情

台湾の東北海岸でみるマイナーコード進行の何ともうら寂しい景色にはいつも、ひどく心を惹かれる。

福建省泉州からの移民で街が栄えて300余年。長らくこの地域と海を見守ってきた媽祖廟。お旅所では「三将軍」「三太子」「千里眼と順風耳」がお支度してゾロリと並ぶ。緑が千里眼。赤が順風耳。

鴨肉を求める観光客でごったがえす目抜き通りをはずれ、脇道に入ると惚れ惚れする朽ち加減の民家。老街の魅力は裏道にあり。

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10月24日 ギンモクセイ

10月24日 ギンモクセイ

あまいかおりに鼻をくすぐられて深呼吸しながら歩く、銀木犀のシーズン。虫歯が疼きそうな金木犀のそれとはちがう趣きで、二度寝のおフトンの温もりのように、慕わしいあまさ。

8月31日 鳳凰木

8月31日 鳳凰木

日向夏の「生蜂蜜」をいただく。

むかし宮崎の母の郷からおくられてくる日向夏が楽しみだった。
1センチはある厚い皮の白いぶぶんを残してスライスし、砂糖を少々まぶしてたべる。フカフカした白皮に柔らかくすがすがしいレモン色の果肉とツブツブざらざらのあまさ。他のどんな柑橘よりも太陽の薫りがして、幼心にもすごく贅沢なものを味わっているかんじだった。実家を離れてからはもう何年も口にしていない。そんな日向夏の

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6月9日 玉荷包

玉荷包〜ユイへーバオ

每這個季節覺得而第一次叫"玉荷包”的人很厲害。又香又甜,時機很短,所以可認為是夏初的寶石。

この時期に出回るライチをそう呼ぶらしい。和名をドラゴンライチ。
鎧のような皮を剥くと、半透明のしろい粒がツルリと出てくる。この瞬間「玉荷包」なんてよくぞ名付けてくれた、と毎年おもう。

「陰陽」でいえば「陽」のこれを、たべすぎると吹き出ものが出たりするのは、中国医学で謂うところの「

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5月22日 晩春のひるの闇

七爺八爺的故事。多少的台灣人知道這種話?非常有意思。

洪水警報が出るほどの豪雨と地下鉄通り魔事件と地震に見舞われた禍々しい昨日の台北。禍々しい、というので思い出した。このまえみかけた神様たちの行進「廟會(ミャオフェイ)」の「七爺八爺(チーイエ・バーイエ)」。

台湾では一般的に「七爺八爺」と呼ばれているけれど、正式名称は「黒白無常」もしくは「范謝將軍」と呼ばれる。

中国、唐の時代。

謝必安(

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11月16日 基隆・金山

11月16日 基隆・金山



基隆・金山発、秋風行き。
台湾の山や自然を、長らくすきになれないでいた。季節感や色合いが日本に較べて乏しくつまらないと思っていた。でも、気付くとあら。随分おもしろいじゃない。おそらく先日の台風で倒れた樹の根元から、切り株から、生命がみなぎり吹き出しうったえている、もうすぐ冬だというのに。

いい映画・いい作品・いい人に出会ったあと、こうやって少しずつ、でも確実に人生は変わる。

基隆東北海岸の

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