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なぜ、コロナ禍でわざわざ『追いかけてキス』 したのか?

2020年7月13日現在、新型コロナウイルスの感染拡大が再び数字に表れてきましたね。
果たして緊急事態宣言は再発令されるのでしょうか…?

今回は、今年6月に配信された、ノアドのオリジナルSNSドラマコンテンツ『追いかけてキス』(以下、『追いキス』)についてご紹介します。

『追いかけてキス』とは

キスをするには理由がある。
キスのあとには物語がある。

というフレーズをメインコピーとして展開してきた、1話完結型の短編恋愛ドラマ。
2019年の2月〜6月にかけて公開され、シーズン1はyoutubeで展開、シーズン2からはTwitterとインスタグラムでも本編を公開。
恋の感情の爆発ややりきれない想いの矛先を「キス」という1シーンに凝縮して切り撮ってきました。

youtube開設後の運営についてはほぼ放置に近かったのですが…苦笑
おかげさまで、約1年ほどの時間をかけて再生回数・ファン数が徐々に増え、身の回りの俳優部の方々を中心に、少しずつ名前が広がってきた…というのが私の印象です。
(この広がりには「出演されている方がインディーズ映画界隈でよく出演されている方が多い」という理由もありますね)

この段階で、すでに私の中では『追いキス』は一旦終わったものになっていました。
シーズン1・2と作っておきながら失礼な話ですが、しばらく前まではシーズン3を作る理由が正直見つからなかったんです。

で、コンテンツとして役割を終えたものだと勝手に思っていたのですが、プロデューサーの浦野氏が「シーズン3を作りたい」と言って少し経った頃に、ある大きな変化が訪れました。

そう、新型コロナウイルスです。


新しい価値観を『追いかけてキス』で創り出す

新型コロナが世界中をかけ巡ったとき、『追いキス』はこれで本当に終わったなと思いました。
人と触れ合ってはいけない、密接になってはいけない、というこの状況…
キスどころか、追いかける行為もちょっとアレかもしれない…
それにまず、2メートルのディスタンスとってる時点で、この世界にロマンスが生まれるはずがありません。
(いや、「恋愛ドラマは視線で作るドラマだ」と仰った歴々の方々からするとそうじゃないのかもしれませんが)

そんなわけで、従来の『追いキス』のようなストーリーは絶対に撮れない世界が来てしまったんですね。
アーメン。

しかし、いざ「緊急事態宣言だ!」「外出自粛だ!」となると、これまで普通に会ったり話したりしていた人々との、あるいは恋人との日常をどうやって作り変えていくか、という新しい問題が見えてきました。

そんな時思いついたのが、「どうせなら、こんな状況でも恋愛が進展したり、恋を前向きに楽しめるようなエンタメを作ろう!」というアイディア。

オンラインでしか会えなかったり、マスク越しでしかコミュニケーションをとれないような状況がスタンダードになるだろうと言われた感染流行初期段階の当初、「これまで思い描いてきた恋愛映画・恋愛ドラマ像をニュースタンダードに書き換えなければならない」と感じていました。

ハリウッドや外国の映画・ドラマ制作現場でも「キス・ハグのシーンは控えて別の演出に置き換える」ことが広まってきましたし、もしかしたら私たちの恋愛は今後withコロナの形で変化していくのかも…??

そんな実験めいた思考から生まれたのが、シーズン3の「触れられない時代の新しいキスを探そう。」というコピーでした。


感染リスクを考えることは恋に繋がる?

まあ、表現的にはかなりチャレンジングなキス演出だったり、フィクション感の強いストーリーなんかもあったので、これまでの『追いキス』をイメージして見に来られたお客様からすると「???」という感じだったかもしれません。
しかし、コロナによってもたらされた非日常的な日常に人々が馴染んでくると、ありがたいことに、見ている人にも「今はそういうのも大事だよね」という感想が少しずつ増えてきました。
『追いキス』は実は前シーズンでもたまーに冒険的なストーリーの回があったり、スピンオフはだいぶ様子の違った作品だったり…という謎のブランディングを重ねてきていたので…目が慣れた?んですかね。
「追いかけてキスしなきゃ許さない!」という視聴者さんはおられなかった印象です。

『追いキス』にとって「追いかけてキス」は、概念ですから。

それにしても、
「感染のリスクと、恋の欲(キス・ハグ・身体的接触)を天秤にかける」
なんて恋愛の葛藤、今までなかったですよね?

相手が大事だからこそ手を出さない、とか出す、とかそういうレベルのものはこれまでもあった気はしますが、今回は命に関わるレベルの選択です。

なんてドラマティックなんだ…(白目)
ハリウッド大作映画か…(白目)

そんな選択が、私たちの日常で行われているということに気づいた瞬間、withコロナ時代の恋というのは今までになくパッショナブルでエキサイティングなものに激変しているのではないでしょうか。

マスクを外す。
距離が近づく。

その行動の裏側にある選択と理由を考えると、それだけでもドキハラものなんじゃないでしょうか。
(ただし、そういう雰囲気の人とそういう行動をとった時に限る…)


距離をとりながら距離を縮めることは可能なのか?

個人的には結論から言えば「ギリギリNO」なのですが(裏切ってごめん)
しかしふと、誰かに言われた一言をあとで一人になってよくよく考えると「え…?もしかしてそういうこと??」と、頭が熱くなってくることって、ありませんか?

その一言を言う時、おそらく2人は物理的に近くにいなくても、言葉で心の至近距離までアプローチすることはできると思うんですよね。
愛情表現って、身体的な接触が全てではない。

むしろ言葉でいかに相手を安心させられるか、認めてもらえるかが重要な場面というのは往々にしてあると思うんです。
不器用な人って、ここのハードルが難しいんでしょうね。
↓のストーリーのノゾミなんかは、不器用なタイプの人間です。

(関係ないですけど、言葉での愛情表現が上手い人って、モテますよねー)

けれど言葉は結局脳で処理してしまうから、処理中に「いや違うな」と脳に「NO」サインを出されてしまったら、それ以上相手には近づけなくなってしまったりもします。複雑ぅ。

「恋とは自らを騙すことである」

みたいなことを偉人ぽい人が言っていたらしいですが、距離をとりながら距離を縮める時、お互いにこの「自らを騙す」ということが必要になってくるのではないかと思います。恋に落ちたいならね。落ちたくないなら必要ありません。

身体的な距離だけじゃなく、今は直接会っていてもマスクを着けていたりするので、「近くにいるのになんか距離を感じる」という場面もあると思います。
そういう時、やっぱり言葉の表現がうまい人の方が、コミュニケーションはスムーズにはかれるんだよなぁ…と思ってしまったりします。
そもそも私自身言葉の使い方が下手な人間なので、余計にそう思う。
反省。

ところで、恋愛における「言葉の表現がうまい」ってどういうこと?

褒め上手?
口説き上手?
励まし上手?
…?

はて、どういうことでしょう?


「人間同士」以外のコミュニケーションへ進化する?

オンラインで飲み会したり、オンラインで会議したりオーディションしたり、これまで対面でやっていたことを遠隔で行うこと自体は技術上なんの問題もなくやれるもんだなと、この数ヶ月で実感した方は多いと思います。
けど、やれるっちゃやれるけど、その充足感や空間と時間を共有したという一体感は、やっぱりまだまだリアルに勝るものはない。
ということも同時に、皆さんこの数ヶ月でより実感されたことでしょう。

自粛スタート時に考えていたことですが、
「私たちが感染を恐れて動けないのなら、私たちの代わりに外で動いてくれる、感覚を共有できる媒体があればよいのでは」
という、現実味のうっすーい考えも私の中にありました。

つまりはサイボーグ的なこと。

そうすれば、私たちは感染リスクを抑えながら、身代わり=アバターで社会活動を行うことができる。
まだ実現しなさそうですが、もしかしたら数年後には、いわゆる「中の人」は皆自宅にいて、アバター同士が一緒に仕事したりデートしたりする。
そんな未来も有り得るかも…?
(いわゆるAIと違って人間がコントロールするものだから、AI崩壊みたいなことにはならないでしょうしね。…多分?笑)

もしそうなった場合、一見人間同士のふれあいのように見えて、でも実際は「本人じゃない」という状況を、果たして私たちは素直に受け入れられるのでしょうか。

「その人本人である」という証明は、肉体に依存するものなのか、それとも精神に依存するものなのか。
それを考えることもまた、このような時世では有意義な問いなのではないかと思います。
…恋愛の話から遠ざかってしまいましたね。

とにかく、今私たちが持っている肉体と精神を通して生じる「恋」というものの未来に、どのような新しい衝動が待っているのか、どのような未知の障壁が存在するのか、新しい日常で繰り広げられるロマンスとはなんなのか。
それを問うための8つの物語が、今回の『追いかけてキス」シーズン3でした。


今までだって、未来が読めたことはありません。

しかしこれから先の未来は、一文字の予測変換も出来ないくらい不透明です。

何を選べばいいのか、何を優先させればいいのか、判断基準だって曖昧でとにかく私たちには情報が足りません。
でもそんな時だからこそ、「恋」という身勝手極まりない「欲」の衝動を楽しんでまだもう少し生きていたいと感じることも、今の私たちには必要なことなんじゃないでしょうか。


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