消えゆくまえに
雨が降りはじめたのに、鳥の声が止まない。
私から姿を確かめることはできないが
鳥たちは何処で鳴いているのだろう。
身を隠せる葉陰があるのだろうか。
私は籠の中の一羽の鳥だ。
ずっとひとりぼっちで生きている。
最低限の粒を与えられ、心臓は動いている。
聴こえてくる鳥の声は一羽ではない。
多種多彩のそれらは
きっと姿も飛び方も異なるものなのだろう。
羽の色も輝いているに違いない。
私はきっと以前にも鳥だった。
大空を飛んでいた微かな記憶を元に
その頃すれ違った仲間たちを思い返し
飛び交う光景を想像している。
今では、本当に私が鳥であるかさえ怪しい。
鳥だと名乗ってよいかもわからない。
私の姿は土気色で醜く
声を出そうとしても嗄れ声しか出やしない。
羽という程のものもなく
籠を出たとしても飛べるかもわからない。
私は本当に生きているのだろうか。
存在しているのだろうか。
どうか消えゆくその時に
魂だけは空を飛べますように。
それだけを願い、私は命を繋いでいく。
いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。