植物図鑑

#『植物図鑑』

遅ればせながら、有川浩さんの『植物図鑑』を本日読み終わった。
ずっと男性作家だと思っていたので、知った時はびっくりしたな。
ひろしさん、ではなく、ひろさん。

これを買った時、とある作品を共作で書いていて、そこには四季折々の花や草木のことにふれていたから、小説にそういうものが出てくる時、どう描かれているんだろうって興味があったんだ。

なんと、愛で方が、もちろん「見る」のもだけど、「たべる」方だった!
よく知られている山菜(フキノトウ)のようなものから、見た目においしそうじゃないイタドリなんてものまで、野山や道端に生えてる雑草をジャンジャンたべていくんだ。(あ、「雑草という名の草はない。すべての草には名前がある」でしたね。失敬。)

それも料理をしているのは、青年。ある日行き倒れていた彼を拾った、彼女との話。なかなか踏み込めずに過ぎていく日々。恋人になれたかと思った頃、彼は唐突に姿を消す。
一度、出会ってしまったら、もうその前には戻れないんだよね。
彼に会って知ってしまったら、もうないことにはできない。いつの間にか染みついてしまってる。

それが彼女にとっては、季節を巡る草花たち。収穫して、下拵えして、きちんと料理して、彼が残してくれたレシピノートに沿って、もう一度追っていく。忘れたければできないこと。それでも、彼女はこうして自分を変えてしまったものを大切にして生きていく。

とてもすてきな終わり方だった。そして「カーテンコール」でぐっと涙が出そうになってしまった。病院の待合室で読んでいて、ちょうどそこで診察に呼ばれたので、若干変なテンションになってしまったよ。
秘密の場所に咲くあの、名前が可哀想な花の群生を見て、想いがこみ上げてくるシーン。

私はフキノトウを頂いて、作ってみた天ぷらがおいしかった。苦いって思わなかったなぁ。
これ読んで、こどもの頃の自然いっぱいの毎日の道草が、いかに贅沢だったかも思い出した。ノビルも土手に生えていたし、レンゲ草やシロツメクサの花冠も作って遊んだ。オオバコで草相撲もしたし、ペンペン草をカラカラ鳴らした。はじめて桑の実をたべてみようとした時、その黒さにとても勇気がいったこと。

そういえば大人になってからヘビイチゴを思い切って食べてみたことがあった。ワイン工房の丘の上に生えていて、こどもの時気になってたことを実践。あまり味はしなかった。どきどきしたけど、毒じゃなかったね。
野原に宝石のように並ぶ赤い粒と、黄色の可憐なお花の記憶。
また、ゆっくり田舎道をお散歩しながら、見つけてみたいなぁ。



いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。