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海風の如く

進藤 海さんの作品に出会ったのは
朗読サイト「writone」ライトーンでした。

すてきな短編たちが並んでいて、キラキラ光って見えました。
たくさん朗読する方がいらっしゃって
モグさんと双璧を成す人気がありました。(今も!)

自分の作品をアップしたいのと同時に
朗読にも参加してみたい私にとって、とても魅力的でした。

でも、臆病者の私は
朗読をした後、作者の方にコンタクトを取るのが
実はとても苦手で、勇気のいることだったので
ほんとうにドキドキしながらアップしていました。

海さんがtwitterで感想をつぶやいて下さったのを見つけて
やっとこ話しかけられたのを記憶しています。

海さんの文章はとても優しい。
その優しさは、ただ甘いだけじゃなく
苦さや悲しみを越えた上での優しさじゃないかなって思うのです。

あとね、とにかく品がある。揺るがない強さもある。

同じ文字のはずなのに
書く人がちがうと、そこには深みや色が添えられるのって
とても不思議なことですね。

スタンプをきちんと押すように、しっかり咀嚼したくなります。

海さんの作品集『君と見た風景』が手許に届きました。

海


今までwebで読んだことのある作品も、縦書きで書かれると
また違った顔を持つ気がします。

殊に「紙」の作品であることは、やはり格別です。
私は本棚に入りきらずに積んでしまうから、少し自粛しようと
思のですが、やっぱり本屋さんに行くと連れて帰って来てしまいます。

15作品が入っています。

不思議な既視感からはじまる。
現実と夢の境に足を取られそうな作品。
身近な人程、知っているようで知らないんだな。
コミカルな中に日常の刹那が描かれた作品。
群像劇の中に入り込んだような気分になる。
心の中の葛藤を見ているようで落ち着かなくなる。
出かけて行ってその景色を観たくなる作品。
シンプルにエールを送られる。
果実を見たら、こんな会話が聞こえてきそうだな。
自分だったらどんな言葉が送れるだろう。
日々を懸命に生きている作品。
時を巡って、誰かが誰かを助けることができるって信じられる。
一日の終わりに昼間の光を思い出して読みたい作品。
この人に出会ったから自分があるって思えること。

ラストの作品を読むと、表紙の景色に立ち返りたくなって
そっと本を閉じて、ほわっとため息をつきました。


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進藤海/六月雨音/ようじろう/小宮千明/モグ。4人のライターがそれぞれの担当曜日に、ジャンル問わずそれぞれの“書きたいこと”を発信。

ボイスブックコンテンツ《Writone》より集まったライターによるリレーマガジン。

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。