紫陽花9

刺繍の白花びら


アナベルという名の、紫陽花のなかまがいるのです。
白いレースの刺繍のハンカチーフのような。
小さな花びらの集いは、みっつだったり、よっつだったり。


カリフラワーに襲われそうな、もこもこ具合。
泡泡のシャボンみたいに、いたずらなクリーム色。
小さなどうぶつだったら、潜って遊んでみたくなる。
くも、メレンゲ、ふかふかわたあめ!


和の紫陽花は、あまり香りがしないのに
このアナベルはいい香りがする。
えっとね、欧羅巴の匂いなの。
秘密の香水、夕方の気配、待ち合わせ。


夢の中の少女の日傘のように、くるくるとそれは回って。
まるでルノアールの絵画の少女みたいに
ふわりと午后の優しい時間を作り出す。




- - - 8× キリトリ - - - 紫陽花の残り香1

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。