雨上がりの新宿3
雨上がりに傘をささずに歩く。
ビルを伝う雨垂れがしばらく続いて、泣いてるみたい。
冷たい粒があちこちに残って、跳ねる。
広場には人っ子ひとりいない。
濡れた銀色のテーブルは、鏡面のように光って
ぼんやりとした私の気持ちを逆撫でする。
ここでサンドイッチを食べる時
ねだりに来る鳥の子らは、どこで雨宿りしているのかな。
君たちがいないと一人ではうまく笑えない。
代わりに、水滴に濡れた花たちが声を掛けてくる。
こんな都会にも花は咲くんだね。
そう思ったら、少し優しくなれそうだ。
雨上がりで色づいた艶やかな色をまとって
無邪気なこどものように遊ぼうと誘ってくる景色にピントを合わせる。
私は顔を上げて、ほぉっと空に向けて息を吐き
また駅までの道を歩き始める。
いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。