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僕と君

17
短編小説「僕と君」です。全17話。 僕はいつも愛する君を「君」と呼んでいた。 君も年下の僕のことを「君」と呼んでたね。 僕らは「君と君」そう呼び合ってたんだ。 あの子が生まれる…
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記事一覧

僕と君 1 君と君

僕が君ってよぶのは、世界でたった二人。 僕はいつも愛する君を「君」と呼んでいた。 君も年…

水菜月
5年前
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僕と君 2 きまぐれねこ

僕はあいにく、ねこを飼ったことがないけど もしも飼ってたら、こんな風なんじゃないかなって…

水菜月
5年前
20

僕と君 3 226

あれは、僕らの間で「226事件」と呼ばれていた。 あの日、そう、2月26日の夜のことだっ…

水菜月
5年前
17

僕と君 4 餌づけ

君は、めんどくさがり。 手を汚すのがきらいな女の子。 だから、手づかみで食べるものはいや…

水菜月
4年前
19

僕と君 5 強情な君

君はいつも公園から帰りたがらなかったね。 帰ろうとすると、いつも泣きわめいて 仕方ないか…

水菜月
4年前
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僕と君 6 フードとホチキス

君は、フードが似合う女の子。 フードかぶせると、きのこの精みたいになって いたずらっこな感…

水菜月
4年前
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僕と君 7 かじられた絵本

君にはじめて買った絵本は せなけいこさんの「いやだいやだ」の連作だった。 貼り絵で作られたやわらかい絵は、どこか僕をほっとさせる。 正方形の形と、頁数のちょうどよさで 生まれた頃からママが読み聞かせてる大切な絵本。 あかちゃんに気に入られた絵本は、ページがぼろぼろになる運命。 あちこちテープを貼った、痛々しい勲章つき。 * お気に入りの3冊。 まずは「にんじん」 にんじんすきなこ、だあれ。 ある日、にんじんのページのまん中が、まあるく食いちぎられていた。 まだ離乳

僕と君 8 リー。

君の赤ちゃんことばには、何でも「リー」がついてた。 ママリー、パパリー。おばあちゃんはバ…

水菜月
4年前
17

僕と君 9 追いかけてね

とにかく君は、逃げるのがすき。 君が生まれてから 僕はいったいどのくらい君を追いかけている…

水菜月
4年前
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僕と君 10 苺とホットケーキ

君の髪をクンクンすると、少し香ばしい。 いつのまにか甘ったるいミルクの匂いではなくなって…

水菜月
4年前
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僕と君 11 うちにいるくま

ママはテディベアファン。 こぐまの映像にかわいいと反応しているけど 本当にすきなのは、架空…

水菜月
4年前
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僕と君 12 ミエッパリな園児たち

幼稚園に無事に入った君。おめでとう。 最近覚えたじゃんけんで、君はいつもチョキばかり。 …

水菜月
4年前
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僕と君 13 オムレツの月

スケッチブックにクレヨンでまるく描くライン。 夢中になって、両手で持つクレヨン。 お日さま…

水菜月
4年前
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僕と君 14 シンクロ

君はほんとにママによく似ている。 僕は小さい頃のママに逢えているような錯覚を起こす。 そう。すこし勝手なノスタルジア。 きっと甘ったれだった君。 椅子に座った君の髪を、ママがとかしてあげている。 僕はそれを見ているのがとてもすきで リボンを編みこんでもらって嬉しそうな、君の笑顔がたまらなく愛しい。 * 君たちは、時々双子のようだ。 すきなテレビに見とれた時の顔の角度。口のぽけっと開け具合。 ふたりの口に棒つきキャンディを、ぱくっとはさみたくなる。 そうそう、顔とか表情