僕君1

僕と君 1 君と君


僕が君ってよぶのは、世界でたった二人。

僕はいつも愛する君を「君」と呼んでいた。
君も年下の僕のことを「君」と呼んでたね。
僕らは「君と君」そう呼び合ってたんだ。
あの子が生まれるまではね。

君が生まれたから、僕はパパ、元「君」はママになった。
でも、時々呼んでしまうんだ。君ってね。

全17話の短編です。週1で更新します。



僕は君と結婚するまで、いつも君のことを「きみ」と呼んでいた。
いや、結婚してからも、そうだった。

そして君も、年下の僕のことを「君」と呼んでいたから
僕らはまるでたまごのように「きみときみ」合戦を繰り広げていた。
あの子が生まれるまでは。

君が生まれたから、僕はパパ、元「君」はママになった。

ママは君が生まれる前に、僕にこっそり言ったんだ。

「ねぇ、この子が生まれて、どんなにかわいくっても
私のいちばんは、いつまでも君だからね。忘れないでね」って。

でもね、瞬時に忘れたみたいだよ。

ママは今でも「人生でいちばん嬉しかったこと」を訊ねられたら
「君が生まれた時」って、答えているもの。

すっごい威力だな。
僕は、あっという間にノックアウト。

君は生まれながらに、僕のライバルだ。女の子だけど。


僕君1


⇒ 『僕と君』 2 きまぐれねこ

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。