シェア
レィディ。 君に溶けたい。 ぼくの、海。 ラムネの瓶のビー玉のように カチリと閉じ込められても 一生、君の青い夢の中なら、ぼくは本望だ。 ぼくは、君を弾く泡になる。 泡になって、もうこの夏に戻れなくても、構わない。 シュワー 。゜。 ゜。
夏影が落とす、光のさざめき。 心に落ちる、緑のざわめき。 太陽は、宇宙の灯りだ。 空に向かって光の矢を射る。 竹からの木漏れ日は、風を連れて来る。 私を通り抜けて、影にしあわせを残す。 毎日こうだったらいいのにね。 こうして言葉に乗せて、ふらっとしていたい。 もっと小道にソレタイ。 もっと奥の道をサガシタイ。 みんなとはぐれそうになる。迷子になる。 喧騒から抜け出たくて、どこでも勝手に入り込むせい。 迷うから、出逢うことも、きっとある。
雨の日に慰めなくていいの。 明るくなるような音楽を、持って来なくていい。 自分に似合わないことを、無理にする必要はないんだよ。 雨が憂鬱なら、そのまま受け取ってしまいたい。 静かに雨垂れが落ちる音に耳を澄ませて それに似合うピアノの音が響けば、真っ暗でも構わない。 窓硝子を叩く雨粒のドレミは ぽつんと跳ねて、ね、遊ぼうと誘うけど 私はわざとそっけなくしてみる。 拗ねた君を片目で見たいから。 その愁いを、折角の静けさを取り込まないと、雨に悪い。 君の、その精一杯の退廃を。
雨上がりに傘をささずに歩く。 ビルを伝う雨垂れがしばらく続いて、泣いてるみたい。 冷たい粒があちこちに残って、跳ねる。 広場には人っ子ひとりいない。 濡れた銀色のテーブルは、鏡面のように光って ぼんやりとした私の気持ちを逆撫でする。 ここでサンドイッチを食べる時 ねだりに来る鳥の子らは、どこで雨宿りしているのかな。 君たちがいないと一人ではうまく笑えない。 代わりに、水滴に濡れた花たちが声を掛けてくる。 こんな都会にも花は咲くんだね。 そう思ったら、少し優しくなれそ
ごくごく。喉に水が沁みるように。 極々、私的な思いが巡っていく。 いとしき空間よ。私の中の遠い記憶。 同じ地点なのに、もう存在しない透明な箱。 もう一人だけ、わかる人がこの世にいる。 君は此処を通りかかったら、思い出したりするのだろうか。 この景色を見ながら、よく電話をかけたね。 私はいつだって、胸を躍らせてエレベーターを降りる。 何度繰り返しても どうして君に会うのに、こんなにもどきどきするんだろう。 待ち合わせたロイホが、今も確かに消えずにあって。 外を眺めて
この円形信号機を見つめていると 環状のかたちに沿って 誰かが電車ごっこをはじめる気がしてしまうんだ。 ぐるぐると、秘密の荷を載せた列車が走る。 都会の喧騒に紛れて 日夜止まらない物語を紡ぐかのように。 雨の日には列車たちはおやすみ。 代わりに透明な人たちが 傘を差して散歩するに決まってるんだ。
目的地まで歩く時 人が少ない道を行きたくて 路地に入るのがすきだ。 道なのか、道じゃないのか、どきどきする。 今時分は 花も葉も水滴をのせて生き生きとしていて 妙に勇気づけられる。かたつむりと目が合う。 雨が降って足が濡れても気分だけはいい。 自分の中に落ちる水たまりは レコードのように輪っかを作って、音を奏でていく。 やり過ぎて、路地|×路地にしてしまうと 大人のくせに迷子になって、ここ何処になる。 そんな時、世界を繋ぐものの電波は届かない。 心の中で、あなたの名前を