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5:九郎と新宿にて。「DAYS」/FLOW


会う当日も短期人狼のゲームが決着間近で身なりも会社に行く時程度にしか整えていない、冴えない私である。
でもそのボンクラさがギャップになるかなあ?とは考えはした。

九郎は、自分のことを
「V6のイノッチを茶髪にした感じ」
とは言っていたものの、芸能人、特にアイドルには非常に疎い私には、ちょいと想像し難かった。

待ち合わせで混雑する新宿駅の東口で会ってみてわかったのは、イノッチという方よりは
「垢抜けた大泉洋」
だなということだ。
イノッチと大泉洋ににてる箇所は何らないのは不思議である。

名古屋を出る時に軽くしか食べてないというので、行きつけのバーに連れていった。
Four Rosesを飲みながらフィッシュ&チップスをつまみ、マスターが氷を丸くするためにアイスピックで氷を削る手元を見て
「お前、いい女だなぁ」
と、ニヤリと笑った。

狼の耳と尻尾が出た。

バーの後は暗がりに連れてかれた。
とはいえ、時間は午前1時。
ここは私の庭、大遊戯場歌舞伎町。
週末で終電が去った後になんて、チェックインできるホテルの部屋なぞ限られているのはこちらは承知の上だ。
「東京ってまじで相場たけぇな、名古屋で2万ならプールがついてくるぜ?」
私といえば、プールのある部屋の方が想像しづらかったし、未だにお目にかかったことがない。

狭いスツールに、手が届くか届かないかの距離で座り、ゲームのやり方のそれぞれのスタイルを話した。
彼と私は全く異なるプレイスタイルだったから、互いにそこに興味がない筈がない。
占い師の秘訣やら狂人の仕事とかの話で延々と話し込んだ。

明け方、しびれを切らしたように、というか切らしたのだろう。
「ねぇ、そんなことじゃなくてさぁ」
と、暗に腕をすっと掴まれて
「誘われた」
その一連の動作は見事に自然だったので、ほー、こういうことは上手いな、などと思った。

一緒にベッドに入ったのだが、とあることが気がかりでコトに集中ができない。

日付は変わって日曜日である。
アニメや特撮が朝にある。
その中で、ハマッて見ているアニメが当時、7時からあったのだ。
「エウレカセブンが始まる前に終わるのかな…」

結局終わりはしたのだが、ピロートークとやらも私はおざなりにTVをつけてエウレカセブンを見始めた。
「やべぇ、こいつ、想像より数段上にやべぇ」九郎は可笑しさを噛み殺したようにクックックと笑いを噛み殺しながら呟いた。そりゃそうだ。
ピロートークを拒否、しかも理由は毎週末に楽しみにしているアニメを見るための女なぞそんなに居られても私が困る。

チェックアウトの時間になり、新幹線が来るまでスタバで冷たいラテを飲んだ。彼は
「おっ前ふざけんなよぉ」と、ここでも笑いを噛み殺した。
「つまらん女ばっか楽に落としてきたからそうなったんだよ、出直してきな」
と、私はラテから目を離さずにヘラっと返した。

「ちくしょう、研究と修行して見返してやるからな!!」
そう捨て台詞を残して、彼は新幹線の改札を通っていき、やれるもんならやってみろよ、と私は手を振った。

でもその後に
「あの日交わした約束は砕けて散った」
のだけれど、それは最後になる次回で。


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