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15:ダメ男と女子中学生、前編「22才の別れ」/伊勢正三

真夜中にメッセンジャーで友人と会話をしつつ、今は懐かしいはてなダイアリーを好きなミュージシャンで検索をしていたら、YMOとムーンライダーズへの愛を綴る、かつての私のような中学2年生がいた。
面白い子がいるんだけど、と友人に教えたら、こいつぁ楽しいな、と言った。
そしてこれは私を20年越しで後悔させることとなる。

その友人は、危なっかしい奴であった。
学生時代からの付き合いだが、バイトを真面目にやれば3回払いで済むからと、30万円のPCを買って、周囲に不穏な空気を振り撒いてみたり、冗談半分で素人男優の応募をしたら当たってしまい
「卒論の口頭試問に間に合うかどうかの時間に撮影終了予定なんだよな…」
と、明らかに大事なのは卒業だというのに、前日まで両方行けるか画策したため、ふざけるなと私が一喝しようやく諦めたり、ある日に手を包帯でぐるぐる巻きにして登校してきて
「洗面所で伸びをしたら腕が蛍光灯に当たって割れて、破片が突き刺さった」
など、ちょっと無理筋な出来事に枚挙に暇がないのだ。

あと、大問題なのは女の子にだらしがないというか、今でいう
「ヤリ目」
とばかり付き合ったこと。
「愛なんていらない、別にその場でヤッてその場で別れるでかまわない。それにお金が必要ならそれでもいい、俺は性欲が余りすぎて困ってるだけなんだ」
と、女性の私としては、こいつ最低だ、と思っていたのだが、私にそのような視線を送ってくることは無かったので、目をつぶっていた。

その後しばらくすると、はてさて?ということが起こりだした。
女子中学生の日記で行った場所と、友人がmixiの日記で書いている、今日あった出来事などが一致してるのだ。
フジロックフェスに行ってるのは、忙殺されてるみ身には素直に羨ましかった。

その時、ああ、手を出したのか、と思った。
会ったのか、ではなく、あくまで
「手を出した」
と思った自分に、いや、彼の普段の行いが悪いんだ、と、珍しく他責にした。

ある時、付き合ってんの?と聞いた。
「喰ったったけど違う」
「何それ?」
「ほら、身体が好みじゃないけど女子中学生とヤり放題だし」
下衆度が増していてクラクラしたし、ちょっともう付き合ってられないな、と思い、フェードアウトした。

時は素晴らしく非情に、長く流れた。
友人から結婚した旨の葉書が届いた。
妻君は彼女ではなかった。

空白の期間に何があったのだろう?と彼のmixiを久々に開いた。
どうやらその後も彼女との仲は続き、前年に別れ、お互い貸し借りをしたものを交換して、それで終えたらしい。
ちょうど10年付き合いがあったようだった。

怒りと呆れで、思わず友人に電話をかけ、彼女を何で手放したん?!と怒鳴った。

15才から25才まで付き合っておきながら別れるって、それは人間として酷すぎやしないか?しかも付き合ってる意識はなしに。

「だって高校生になってからはちゃんと付き合ってたし、別れたいと言ったのは彼女からだすよ?」
話にならない、と思った。
10年という重さが分からず、それでも恐らく何の話も出さなかったこいつに、彼女が愛想を尽かした結果だろうよ、と思うのに十分だった。

17才から22才の5年で見切りをつけた歌もあるというのに。


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