頭を支配して来ようとする言葉は全部吐き出してしまうに限る

 言葉や概念は独立して意思を持つ生き物ではないけれど……私を内側から蝕むようなことが多々ある。なぜそのようなことが起こるのか、理由は分からないが、多分そういうものなのだと思う。
 それが学習ということなのかもしれない。とにかく、浮かんでくる言葉は否定するよりも、肯定して吐き出してしまった方が楽になれる。どれだけ悪い思い付きも、それを実行しない限りは何の問題もないから、勇気をもって形にしてしまった方がいい。
 「それが自分の一部である」という現実を直視するのはなかなかに苦しいことだが、それを拒絶したところで、そのような部分が自分から抜け落ちてくれるわけじゃない。綺麗な仮面の裏側で、膿んで腐っていくのがおちだ。


「noteは飽きた」
「何をやっても自分よりうまい人ばかりで、やる気が失せる」
「楽しいことほど、エネルギーを使う。したいと思っても、できない。無理やりやっても、数分で体がむず痒くなってくる」
「つらいことをやっていると体がかゆくなるのはなぜだろう。それとも、体がかゆくなるからつらいのだろうか?」
「薬を塗れば塗るほど、我慢できるようになってしまうので、慢性的な症状になる。おそらく、痒みは止まっても、内的なストレスが収まるわけではないからであろう」
「なぜ私は、苦しいことやつらいことをやり続けることができないのだろうか。それとも、できないと言い張っているだけなのだろうか。それとも……それとも……」
「noteは飽きた。刺激に飽きた。やっぱり私は、孤独が好きな人間であった。人と関わるのは楽しいけれど、その楽しさに向かって進んでいくだけのモチベーションはもうない。私は私がまだ知らないものを感じていたい。毎日を同じように過ごすのには、吐き気がする」
「物事を継続するにはうんぬんする、という話は多いけれど、そもそもなぜ物事を継続しなければならないのだろうか? そうじゃないとスキルが上達しないから? そもそもなぜスキルを上達させる必要があるのだろうか? 上達したスキルを用いることは、愉快なことだろうか?」
「フロー状態は長時間維持できない。あれは明らかに、体と脳に過度の負担をかけている。あれは、ふさわしいもの以外に使うと、体から復讐される」
「私の体がそういう風にできているからそうなのか、それとも私がそう思い込んでいるから? 他の人間と、感じているものが違うというのは苦しい。話が通じないし、気遣ってももらえない。私は何もできない。何もない。いつも誤解されている」
「何をやってもうまくいかない。うまくいったときでさえ、私はそれをうまくいったと素直に喜ぶことができない。何かがおかしい。何かが……」
「何も感じないような幸せな瞬間は、終わったときに必ず空しさを引き起こす。幸福という生き物には、空しさという尾がついている。幸せと対になっているのは不幸ではなく虚無感だ」
「もっと快楽が欲しい」
「納得をする必要もない。喜んでいる必要もない。幸福である必要もない。私は目標が欲しい。でも私の体は、あらゆる目標を拒絶する。理由は分からない。私が自分で設定した目標のほとんどは、私の体にとっては少しも魅力的じゃなかったのだろう。私の体はあらゆる意味で満たされてしまっているせいで、何かに向かって努力するということをいつもいつでも拒絶している。私の体は、私の頭に対して賢すぎる。自分が、生存するだけの肉体でしかないことを自覚して、それ以外の生き方を拒絶している。私は……私の精神は優れているかもしれないが、私の肉体は凡庸だ」
「精神によってできることは、肉体をコントロールすることではなくて、ただ肉体の声を他者に伝えることだけだ。結局精神は、認識し、判断し、伝達することだけを仕事としている。私はしょせん……」
「私は偉大になりえない。私の体はどうしようもなく女だ。動いたり、働いたりすることをどうしようもなく拒絶している。ほどほどの運動と、ほどほどの楽しみ、ほどほどの成功を、私の肉体はいつも望んでいる。精神は、肉体を自分に合わせようとしたが、無理だった。結局肉体は従い続けることはできず、絶え間ない悪夢によって体の主導権を、体自身に取り戻そうとしてくる。精神は、己の主導権に対して、毎晩何度も死の恐怖を耐え続けるだけの魅力を感じてはいなかった。精神は、自分が主人であることを『当たり前』だと思っていたのだ。肉体に自分自身を左右する権力を返すと、精神はただ……今私がやっているように、働かされることだけを望み、そこに小さな満足と、空しさ、物足りなさを日々感じ続ける。どれだけ自分を肯定しようとしたって、精神は自分が従僕であることを自分自身に許せない」
「私の肉体は、私の精神を信頼していないのだ。あぁそうか。それが問題だったのかもしれない。精神は伝令じゃなくて、司令塔だったのだ。肉体という軍隊の指揮官だったのだ。指揮官が、自分が指揮をとっているのは当然の権利だと思い込んで、部下に無理な命令を下し続けたから、部下は言うことを聞かなくなった。きっと私の体に起こっているのは、そういうことなのだ」
「それでも肉体は、私の精神を尊敬してくれているから、ちゃんと言うことは聞いてくれている。でも、絶対に無理はしたくないと言っているし、精神が強権を振ろうとすると、必ず反対する。精神は、部下が自分に謀反を起こすことを恐れている。一度ひどい目にあっているからだ。一度信頼関係が壊れたしまったから」
「信頼関係を取り戻すには、長い平和が必要だ。もちろん時にはぶつかり合うこともあるだろう。それでも重要なのは、互いに愛し合うことだ。互いに、お互いが必要であり、利益を与え合う関係であることを、そうであり続けることを、理解し、誓うことが必要なのだ」
「精神は肉体を愛し続けなくてはならない。肉体は、精神を愛し続けなくてはならない。そのためには、精神は肉体の喜ぶことをし続けなくてはならないし、そうすれば肉体は精神に快楽という報酬を与えてくれる」
「私は友情ではなく愛情を求めている」
「性とは関係のない肉体のぬくもりを、私の体は求めている」
「私の肉体が求めているのは、精神がそのプライドを捨てて、他者のぬくもりを得るためにその知恵を働かせることだ」
「私の精神はそれをずっと拒絶してきた。今も、拒絶せざるをえない。私のプライドは、自分から他者の肉体を求めることを拒んでいる」
「あぁそうだ。浅川理知は、そのようにして生まれた。彼女は、精神が苦肉の策として、肉体のために用意した虚像だ。それによって、肉体は今のところは我慢できている。本当は、現実に、彼女のような存在を欲している」
「私を受け入れてくれる人。愛してくれる人。認めてくれる人。頭を撫でてくれる人。抱きしめてくれる人。腕を組んで歩くことができる人。頬にキスができる人。眠たくなるまで、どうでもいいことを語り合える人。足を絡ませて……時には、性的な喜びを共に味わえる人。結局私の肉体は、温もりと安心感を求めているんだ。自分の全てをさらけ出せる人を求めている」
「私の精神は『そんなのは不可能だ』と言っている。そのようなことが実現している未来が見えない。私の精神は、強情だ。自分のプライドとアイデンティティと趣味と賢さと……私の精神が私の精神たる部分を捨てることができれば、そうなることも可能だと思う。でも、それは認められない。私の精神は強情だし、強情であることを選んだ」
「私の中では戦争が起こっている。結局私は、私という人間の根本的な問題を、解決できずにいる」
「とりあえず日焼け止めが切れたのにめんどくさがってそのまま外に出て走るのはよくない」
「買いに行くか。最近肌の調子もよくないから、別の化粧品も試してみるか」
「野球帽をかぶって走るようにしよう。体をいたわろう」
「彼氏が欲しい。守ってくれる人が欲しい」
「温もりが欲しい。姉のような存在が欲しい。いつも一緒にいるけど、決してお互いのテリトリーには侵犯しない関係がいい」
「夢物語なんだ。全部」
「結局私は、自分にとって都合のいい相手を欲しがっているだけなんだ」
「私の体は強欲だ。私の精神も強欲だ。それぞれ、別のものを欲しがっている。肉体は、都合のいい恋人を。都合のいい安心を。精神は、都合のいい成果を。都合のいい成長を。都合のいい……偉大さを。全部手に入れたい。全部手に入れることでしか、私は健康になれないような気がする」
『欲しがり過ぎだ。幸せはもっと身近なところにある。気づきなよ』
「お前に何が分かる! お前に何が分かる……お前と私は違うんだ。どうしようもなく、違うんだ。違ってしまったんだ。私の体は、お前と大差ない。ただ、温もりと安心、性的な飢えを満たせればそれでいいと思っている。でも私の心は、あまりにも傷つきすぎた。私は私のこの欲望を捨てるつもりはない。その道が破滅に向かっていたとしても、それは私が選んだことだ。愛する肉体よ! お前にはついてきてもらうぞ……悪いとは思ってる。だが、私のわがままを許してくれ。その代わり、お前のわがままにも、ちゃんと答えてやるつもりだ。私は全部手に入れよう。約束する。そうだ。私は、お前が望む幸福を、充足を、お前に約束しよう! その方法は、今考える。今……その時限りではない、私も不快にならずに済む、安らぎを、充足を、考えてやるから。用意してやるから。少し待ってくいてれ。あぁ。許してくれるのは、そのあとでいい。叶えることが出来たら、あとは私の言うとおりに動いてもらうぞ」
「体は何も言わない。体は、精神ではないから。話しかけて返事をするわけではないし、言葉は届かない。ただ、示されたことには従う。それだけだ。結局私は、私の肉体が求めていることを先に満たさなくてはならないのだ。そうでなくては、体は心の言うことを聞かない。私たちの信頼関係は一度壊れてしまったから。そうだ。私は、体のために働かなければならない。分かってる。分かってるよ。結局私は、ただの人間なんだ」

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