夫婦でマンゴー食べる話
仕事終わり。家につくとすでに消灯していて、中はまっくら。
先に寝ている妻を起こさないようそっと部屋へ。
せめてお風呂には入ろうと思って服を脱いでたら、見慣れない箱に足をぶつけた。
「あいて。なんだこりゃ。」
「・・・ヤンさんから」
真っ暗な部屋の奥から、おそらく目をつむったままの妻が、かぎりなく省エネで返事をした。
「・・・タイワン・・・マンゴー」
「へ?」
「ヤンさんから、台湾のマンゴぉ!」
寝てるんだから聞き返すんじゃねぇ、という気持ちが早口と語気にでてる。
どうやら台湾の友人のヤンさんから、マンゴーのお中元が届いたとのこと。
「ふぅん、まじでかー。ヤンさんやるなー。」
「マンゴーで元気になりな」
「へ?」
「マンゴーで元気になりなぁ!」
・・・よくわからなかったけどわかったふりをして部屋をでて、湯船につかった。マンゴーの花言葉が元気なのかな?とおもって調べたけど、そうではなかった。
そんなふうに湯船につかりながらマンゴーのことばかり考えてたら、さっきより元気がでてきた気がした。
陽気を司る神マンゴーの前では、ナンピトも明るくなってしまうのかもしれない。
〜マンゴー神、御心、なむ、アーメン〜
「おお、ありがとうね。元気なったわ。明日きってたべようぜ」
「・・・あぁ、もう。話しかけんといて、寝てるんでぇ!!」
マンゴー神、御心、なむ、アーメン。
マンゴーの花言葉:「あまいささやき」
・・・
次の日、マンゴーの箱を一緒にあけた。
そのうちのひとつをそっと持ち上げ、2人で鑑定団のように目を凝らして査定する。
査定の結果、詳しくないのでわからないけど、多分立派で特別陽気な色のマンゴーのようだ。
「もともと9マンゴーあったんだけどね。2マンゴーは昨日おすそ分けしたのよ。だから残りは7マンゴー。」
早速1つ、たべることにした。
マンゴーじゃんけんで買ったわたしは、負けた妻に観光客としてマンゴーを注文。
「マンゴー1個ください」
「マンゴーイッコ?100元ね。ハイー謝謝」
インターネットで切り方を調べながら、さいの目に包丁をいれて、くるっとやると「よく見るマンゴーのアレ」になりました。
「あまいなー、特別あまいですな。」
「去年も甘かったけど、今年はもっとあまいわね。知らないけど。」
「なー、一口ごとに元気でるわ」
妻がニヤリとこちらをみて、間をためる。
あ、なんかうまいことを言おうとしてる。
「『ヤンさんとマンゴーと、それからわたし』のおかげでしょ?」
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