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遠回りしてでも形にしたい




漆とガラスが融合した器「包」は、ガラスコップの表面に漆を塗った器ではありません。
使っているガラスは見えている部分だけ。(ガラスの破片を使用)

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漆の部分には芯材がなく、漆の塗り重ねで形成し、
ガラス破片と繋げています。


「形あるものに漆を塗る」という一般的な漆塗りの方法で、
漆以外の素材を芯材に使えば、
同じような見た目のものを、工程数をもっと省略して作ることはできます。

25回以上漆を塗り重ねる必要はないし、ガラス破片の上に塗り重なった漆を何度も何度も剥がす必要もありません。

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でも僕がつくりたいのは、

ガラスコップに漆を塗った器でも、
漆以外の素材を芯材にした器でもなく、

「漆そのもの」と「ガラス破片」でできた器。

これは、今まで誰もつくっていなかった器。

もしかしたら僕が行っている製作方法を思いついた人はいたかもしれませんが、
途方もない漆の塗り重ね、製作が進んでいる実感がない変化のなさによるストレス、
遠回りしてまで漆で形を作る意味を見出せないなど、

断念する理由は容易に想像がつきますし、
そんな器は多くの人には求められていないことも分かっています。

でも、仏壇の漆塗りで始まった僕の30年の漆人生の中で、
漆に向き合い、漆に惹かれ、漆に畏敬の念を抱き。

漆を、漆そのもので存在をさせたいと思うようになりました。

これは、作者である僕の独りよがりな思い。

でも、そうやって作り上げた僕の器を、
手に取り、何かを感じ、顔が輝く瞬間を何度も見てきました。

僕はこの先も、僕が思い描くものをつくっていきます。

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