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感想 秘められた神々 古川順弘 読み手によって、たぶん、受け取り方も変わるという歴史もの。モチーフは神様です。



正史には書かれていない、薄められている神について書かれた本です。
知らない神ばかりでした。

日本書紀や古事記には書かれていない神というのもあるとのことでした。
正史は、天皇家の先祖である天照大神を中心にした
王家の正当性を証明する
西洋で言うところの王権神授説みたいな感じであります。

しかし、大和王朝が征服した地域にも神はいた。
それは朝廷の中に内包されていった。

例えば、初期の大和朝廷があった場所
奈良のあたりですが
ここは、物部氏の領地ではなかったかと思える
ニギハヤヒという神は敗者の神ですが
この神が大和朝廷の先祖に、あの大和の地を明渡し臣下になった
どうも、このニギハヤヒという神は物部氏の祖先ではないのかと・・・

菅原道真や平将門のような怨霊が神になるパターンも示されていました。
これは神の世界の新しいムーブメント
つまり、新風、新興宗教です。
それを、朝廷はすべて内包していったと考えられる
つまり、飲み込んだ。

京都の八坂神社というのがあります。
有名な怨霊を鎮撫する神社です
疫病退散などの祈願をしています

ここで祀られているのは牛頭天王です
これはインドの神様
疫病の神様です

つまり、疫病を追い払うべき神社の神が
疫病の神という矛盾です。

他、天理教やら、胡散臭い神様も並列的に列挙されています。
後半は、ほぼ、そういう話しです。
はっきり言って、後半は面白くない。

某宗教団体が話題になっている今
新興宗教は否定的な見方をされています

神の存在自体が胡散臭いと感じ始めている今
明らかに、宗教を、神話を自己の政権の正当性として
かつての絶対王政の王権神授説みたいに利用した大和朝廷
その初期の政権基盤が、呪術的なシャーマニズム世界の邪馬台国の卑弥呼の価値観と
さほど変化はなかったと本書は示していて

ようするに、大和朝廷は、色んな勢力を吸収し自分の中に取り入れていった
神話はそういう物語であり

そして、大和朝廷が天皇家にかわった平安時代においても
菅原道真のような、政権を恨んで死んだ怨霊すら
それも神として取り込み、北野天満宮の学問の神様にしてしまったということです

そして、無数に存在する新興宗教や胡散臭い神
それをたくさん列挙することで
何か作者は僕たちに見せようとしている

それは、その胡散臭い神たちと
神話と、どれくらい違うの?
それって、政権の正当性を証明するために作られた話しでしょ
みたいな感覚を抱かせるのが目的なのかと感じました。
だとしたら、作者は成功したと言えます。






2022 11 19



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