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82年生まれ、キム・ジヨン  チョ・ナムジュ

専業主婦を「ママ虫」と馬鹿にする韓国人の男が許せん。お前は、誰に産んでもらったのだ。

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日本でもそうなんだけど、お母さんになったとたん名前で呼ばれなくなる
「xx君のママ」とか「xxちゃんママ」とか
本の表紙を見ていて、そんなことを思ってしまった

顔がなくなる

それって、お前には価値がないと言っているのと同じだ
日本でも金持ちの家に嫁ぐと、仕事を辞めて子育てに専念するように言われる
で、教育ママになる。自分に価値がない思わされるから、子供を頑張らせて、いい学校にというのだろう
それで子供は重圧に耐えられずに潰される。何かおかしい!
お母さんにだって可能性はある。未来はあるのである。

これは韓国の話しだ
母親の話しである
冒頭、一児の母であるキム・ジヨン氏33歳が、夫と自分の共通の友人である故人の女性に憑依される
次の場面では、キム・ジヨン氏は祖母に憑依される
キム・ジヨン氏は狂人なのか?
彼女の精神を狂わせたのは何なのか?

この物語は、キム・ジヨン氏の主治医である精神科医が書いたという体裁をとっている

これはキム・ジヨン氏の半生である。母親の人生にまで遡っている
物語をたどっていくと、強烈なエピソードに、まず出合う

キム・ジヨン氏の母は、彼女と姉を産んでいた
だが、祖母は後継ぎである男子の出生を望んでいた
妊娠したのは、またもや女児。だから、母はキム・ジヨン氏の妹をおろした
この時の夫とのやりとりが狂っている
次も女だったらと心配する母に、父親はこう言うのだ

「縁起でもないことを言わないで、さっさと寝ろ!」

女の子は縁起でもない存在なのだった

韓国社会は説明するまでもなく男尊女卑の世界だ
半世紀前の日本のような価値観がまかり通っている
家の中では男子が尊重され、それは学校でも社会でも同じだった
日本では考えられないようなことも平気でやっていた

大学生の時の先輩の台詞が、女性をいかにモノとしてしか見てないかがわかる
キム・ジヨン氏には彼氏がいたが別れた
サークルの合宿に参加していて、部屋の隅で寝ていたら男たちの声が・・・
キム・ジヨン氏に興味がある男子がいるような雰囲気だ
その先輩に、みんなが「チャンスだ、いけ」とはやしたてている。その先輩がこんな言葉を投げ放つ。

「要らないよ。人が噛んで捨てたガムなんか」


韓国の男って最低ですよ
女はモノなんか?

就職差別は、日本の比ではない。面接官のセクハラ発言は日常的なのである。
やっと、入社しても実力の下の男性社員が優遇される
キム・ジヨン氏は悔しい

結婚するも、次は親せきから子供をせかされる
まるで嫁は、子供を産むために存在しているかのようである

子供が産まれるということは、女性にとって自由な時間や仕事(生きがい)を失うことだ
それを夫はわかってくれない
「手助けするから・・・」と言うが、それは優しさに見えるがそうではない
それは違うやろ、誰の子供やねん、あんたの子供やろということなのである
韓国の社会では、子供を産むことは仕事を辞めるをことと直結している
日本のように育休制度が整っていないのかな?。会社も妊婦に寛容ではないのだ

地下鉄の中でお婆さんが、妊婦のキム・ジヨン氏に「誰か、席を譲ってあげて」と言う
すると大学生が不満げに立つ「そんな腹になるまで地下鉄に乗って働くような人が、何で子供なんか産むのさ」

世間は働く妊婦に厳しい。経済が悪く、学生は仕事がない。だから、腹がたつのだ

この話しを読んで、私はあの話しを思い出した
バスで赤ちゃんが泣いたら、サラリーマンが「うるさい、外にでろ」と言ったアレだ
赤ちゃんは泣くものなのに、何でやと思ったよ
不寛容な社会は、日本も韓国も同じで自分のことしか考えてない
何か嫌な世の中なのである

専業主婦になり子育てをしているキム・ジヨン氏は、珈琲を飲んでいた
就職先を探していたんだ。生活が苦しい
すると、サラリーマンに「ママ虫が・・・夫の金で・・・いい御身分だよ・・・」と陰口をたたかれた
それが原因で落ち込み病気になっていく

韓国では、専業主婦のことを「ママ虫」と揶揄し馬鹿にする傾向がある
女性嫌悪という感情があり、男性が女性をネット上で馬鹿にする
このようなヘイトスピーチが問題になっている
専業主婦、女性だけでなく、高齢者もターゲットになっている
理由は「彼らは特権を持っている」からだそうだ
自分たちは「被害者」だとも言っている
経済がよくなくて働いても楽にならない
彼らにとっては女性。特に、専業主婦や年金で暮らしている高齢者が特権階級にでも見えるというのか?
あとがきの男の言い分を読んで笑いそうになったよ

「女は軍隊も行かない。デート費用も出さない。そうやって男たちを不当に搾取している」

あほか! と思う。
こんな さもしい考えしかできんようなら、そんなのはあほだ

この小説は、そんな韓国の惨めな男たち
ちんけな男社会に対する怒りの鉄拳なのである

韓国のことと他人事だと思ってはいけない
子供を産むという時の女性のリスク
私たち男は、これを蔑ろにしている
ちゃんと考えなくてはいけない
「手伝ってやる」ではなく「一緒に育てる」なんだと思う
全部、奥さんに押し付けるのはクズだ
そんな専業主婦を馬鹿にするのは、もっとクズだ
お母さんが夢を語れない社会なんて、ろくな社会じゃないぞ

被害者意識というのは、心を腐らせる。ダメにする伝染病のようなもんだ
もっと寛容に生きなければならない
それが韓国人に必要なことだと思った
もちろん、私たち日本人にもだ

12月に韓国女性文学を5作品読んだ
男の私には辛い部分も多々あったが、嫌なものから目をそらしてばかりでは成長しない
男の自分勝手な目線とは違う女性から見た世界は、参考にする価値があるし色々と学ぶべきものもある
韓国社会を腐ってるとか、虐待に性犯罪にヘイトスピーチに・・・劣等な社会だとか思うのではなく、それを鏡にして自分たちの事も再認識する必要性を感じた
そういう意味でも、この取り組みは私にはプラスでした

82年生まれ、キム・ジヨンは再読ですが、この取り組みの最後を飾るには、これしかなくて、やはり、この作品は強烈なインパクトがあり学ぶべきものも多いのですよ。とにかく、凄い作品なのですよ。解説も最後まで読むと韓国のことがよくわかります。

2019  12/29

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