映画 グラスホッパー とにかくおもしろい。うん、おもしろい。
原作は伊坂幸太郎の小説。300枚の小説だから、読むのに6時間はかかるのだが、映画だと2時間。たいていの原作ものは、この時間の壁にぶち当たる。
この映画は、ショートカットが実に良い。原作との乖離はかなりあるが、中心思想をきちんと表現しているし、おもしろさを封じ込めているところに魅力がある。
そして、共演者の豪華さだ。
とくに、鯨役の浅野忠信さんと、蝉役の山田涼介君がよくて、押し屋の吉岡秀隆さんの不気味さとか、原作のイメージ通りだった。
蝉のボスが鯨という殺し屋に自殺を強要されるシーン。これは理想通り。
「俺は自殺するんじゃねぇ。ここから飛ぶだけだ。死ぬのは、そのついでだ」
自殺したんじゃねぇと、あくまで言い切る彼がカッコいい。その後、自ら地面にダイブする。
原作では、こうなる。
「自殺する奴ってのが大嫌いなんだ。人間だけだぜ、逃げるように死ぬのは、偉そうじゃねぇか。どんなに不幸な豚だって、自分で死のうとはしねぇて。傲慢だよ。だからよ。俺は飛ぶんだよ。死ぬのは、そのついでだ」
これだと映画では疾走感が出ない。
グラスホッパーとは、バッタのことだ。バッタは密集すると茶色に突然変異し、あの翼で空を飛び凶暴になる。人間も同じだと押し屋は言う。増えすぎた凶暴なバッタは殺すしかない。
この映画は、悪が駆逐される物語だ。原作と合わせてみると面白い。深さがまったく違ってくる。
2020 7/26
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