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しりとりエッセイ ス スリッパ


>>> ス スリッパ

夢は、お笑い芸人という人がいた。
芸人の方が、公務員とか、銀行員よりも夢があるからでしょうね。
でも成功するのは、ほんの一握りだ。
かなりのセンスが必要である。

彼の両親はともに国家公務員だったこともあり
大学の1年の時からずっと試験勉強していた。
キャリア官僚狙いである。
しかし、急に何を思ったのか。お笑い芸人になりたいと言い出した。

その話しを聞いた時、無理だと思った。
そういうタイプじゃない。真面目過ぎる。
笑いを理屈で考えるタイプだから、ちょっと厳しいと思った。
笑いとは何か?
それは差別であると彼は言い切ったのだという。
昔の昭和時代の漫才のアーカイブ映像とかを研究し
とくに笑いがとれている箇所をピックアップしたのだという。

この時点でお笑い向きじゃない
研究者とか公務員向きだ。戦略何とか室みたいなところに勤務すべきなのだ。

ようするに、相方の容姿
デブ、痩せている、独身、ハゲ、男おんな、嫁がぶさいく
こんな変なおっさんを見つけました・・・
身体的特徴や低能であることを馬鹿にする


つまり、馬鹿にすりゃいいのだと彼は思った。

この前、読んだ本の中に「誰かを傷つけない笑い」について書いてあった。
それで、この人の話しを思い出したのだった。
彼は、誰かを傷つける笑いが最強という結論に至ったのだ。

笑いとは差別であると言い切った。

この人は、笑いとは誰かを生贄にし「傷」つける文化だと言うのだ。
故に、誰かの上げ足を取ったりバカにしたり
「あほの坂田」的な存在が昔はウケたと言っていた。
そう言えば、顔がやたらとおもしろい人がウケた時代があった気がする。

で、彼は考えたのだ。
これからの笑いは自虐である。
まぁ、他人のことを悪く言うのはコンプライアンス的にもまずく
名誉棄損とかになる可能性もあるしとか・・・・
常識的なことを言うのである。

ようするに、トレンディエンジェルの「ハゲ」ネタみたいなのが理想なのだろう。

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そこにダチョウ倶楽部をミックスさせるとか、彼は言うのだ。
自分の身体的なネガティブな特徴を笑いに変え
自分を犠牲にして笑いを取る。


それが笑いの黄金律であると
何か天下取ったみたいなことをほざいていたらしい。


で、彼は落研に頼んで学祭でネタを披露させてもらったのであるが・・・
それは自虐的で、自分を犠牲にしたものだった。

スリッパで複数の人間が
ハゲらっちょな彼の頭を殴りまるというものだった
それも本気で
その動画を僕は見せてもらった
悲惨だった

ただ、ひ弱そうな半裸でハゲ頭の男をマッチョ4人がに殴っているだけ
リアクション薄すぎなのである。
これは公開SMなのである。

あまりに悲惨すぎるイジメ動画だった。
いくら本人がOKだと言っても笑えるものじゃない

笑えよと言われて笑えるほど笑いは浅くない
「ハゲ」に「ハゲ」と言って、そのハゲた頭を殴ったとしても
それは笑いに繋がらないのだ

露骨な差別を肯定する人間などいない

それが差別とわからんように、差別するから笑いになるんだ

ようは、リアクションなんだよ。
いかに、殴られた瞬間にリアクションできるかで
その笑いは決まるのだと、まぁ、そんなことを僕はこの悲惨な動画を見て考えた。


10/23

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