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ショートショート【2】

消えた文字


小さな町に住む吉田さんは、毎朝新聞を読むのが日課だった。ある日、彼は奇妙なことに気づいた。新聞の一部の文字が、まるで消しゴムで消されたかのように消えていたのだ。最初は印刷ミスだと思ったが、次の日も同じ部分の文字が消えていた。

「これは何かの悪戯か?」

吉田さんは不審に思い、新聞社に問い合わせた。しかし、新聞社では問題が確認できなかった。彼の家に配達される新聞だけが、奇妙な現象に見舞われていた。

数日後、町中で同様の報告が相次ぐ。みんなが読んでいる新聞の一部が、次々と消え始めていた。町の図書館の本も、ページの一部が空白になる奇妙な現象が発生。町は大混乱に陥った。

「これはただの印刷ミスじゃない。何かがおかしい。」

町の人々は、町の外れに住む古い魔女の話を思い出した。彼女が何かの呪いをかけているのではないかと噂が広がる。吉田さんはその真相を確かめるため、勇気を出して魔女の家を訪ねた。

「私のせいではない。だが、これはあなたたち自身の問題だ。」と魔女は言った。

「どういう意味ですか?」

「あなたたちは言葉を大切にしなくなった。軽々しく嘘をつき、約束を破り、言葉の力を忘れてしまったのだ。言葉は生きている。それを忘れた結果、言葉自体が消え始めたのだ。」

吉田さんは考えさせられた。そして、町の人々にそのことを伝えた。皆が言葉の重要性を再認識し、互いに丁寧に言葉を使うようになった。すると、不思議なことに、消えた文字が少しずつ戻り始めたのだった。


時を超えた郵便


田舎の郵便局で働く田中さんは、毎日同じ仕事に飽き飽きしていた。ある日、彼は倉庫の奥で古びた木箱を見つけた。中には古い手紙がぎっしり詰まっていた。手紙には、日付が何十年も前のものばかりだった。

「こんな手紙、どうしてここにあるんだ?」

田中さんは不思議に思いながらも、一通の手紙を開いてみた。手紙は彼の祖父宛のもので、送り主は戦時中に亡くなったはずの友人だった。手紙には、未来への希望と友情が綴られていた。

「これはどういうことだ?」

田中さんは次々と手紙を開封し、読んでいくうちに驚愕の事実に気づいた。これらの手紙は、すべて過去から未来へのメッセージだったのだ。手紙の内容は、受取人の未来を予言しているかのようだった。

「これはただの偶然ではない。」

田中さんは、一通の手紙を自分宛に見つけた。差出人は彼の未来の自分だった。手紙には、彼がこれから経験する出来事と、重要な選択について書かれていた。

「こんなことが本当に起こるのか?」

手紙の通りに進むと、田中さんの人生は劇的に変わり始めた。彼は手紙に書かれていたアドバイスに従い、慎重に選択を重ねていった。そして、手紙の最後にはこう書かれていた。

「未来は変えられる。だが、それは君自身の手で掴み取るものだ。」

田中さんは、手紙の意味を深く理解し、未来を自らの手で切り開く決意を固めた。手紙の存在が、彼の人生を大きく変えるきっかけとなったのだった。

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