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下鴨神社 弐『連理の賢木』

在天願作比翼鳥 在地願爲連理枝 

━唐 白楽天(白居易)『長恨歌』━


7月7日は七夕

近くのスーパーのレジのそばには笹が飾ってあり近くの子どもたちが思い思いに願い事を短冊に書いたものが下げられている

『がっこうの先生になれますように』

袋詰めする際、こちらを向いている一枚にそう書かれており何とも微笑ましい気分にさせてくれる

日本の七夕伝説も大変ロマンチックではあるけれど、七月七日というと唐の白楽天の『長恨歌』も思い浮かぶ

とは言っても中国の漢詩に明るい私ではないので細かいところはご容赦いただきたいが、七夕の頃この詩を思い浮かべこちらを訪れたいと思いながら何年も経ってしまったが、先月ホタルを見に来た際は夜遅かったので近いうちに来ようと決めていた

相生社
縁結びの神社

こちらの神社の御神木がこちら

連理の賢木(さかき)
二本の御神木が縁結びの神様の御力で一本になった
科学的・植物学的に言うとちゃんと理由があるらしい
それを鑑みても何となくご利益ありそう
気持ちの問題です
結ばれたい男女はお作法に則ってお参りください

白楽天の『長恨歌』とは玄宗皇帝の楊貴妃との熱愛や悲恋やその愛情の深さを七言120句に渡り詠んだもの

漢皇重色思傾國 漢の帝は好みの美女を探していた

が、なかなかお眼鏡に叶う女性がいなかった

楊家有女初長成 そんな折、楊家に年頃の娘がいた

生まれながらに美しい娘は見初められ帝のそばに仕えることとなるのだが、その美しさは後宮の美女がお化粧に励んでも(粉黛無顔色─おしろいがなくなるほど顔を塗っても)とても敵うところではなかった

帝はその美しさはもちろんの事、浴殿に入る白い肌を見てますます夢中になり仕事もままならなくなる

春宵苦短日高超 従此君王不早朝
春、短い夜が恨めしく昼までお休みになり帝は早朝の政務をやめてしまった

こうして楊貴妃は後宮に侍する美女3000人をさしおいてただひとり帝の寵愛を一身に受ける

姉妹弟兄皆列土 可憐光彩生門戸
姉妹兄弟も王侯の身分を与えられ、栄光は楊一門に集まってしまった

しかしこのような夢のような生活は攻め込まれ帝が國を追われ蜀へ避難せざるを得なかったり、楊貴妃が目の前で処刑されて無惨にも終わりを告げる

帝は悲しみに暮れながら長安の地へ帰る途中も埋められた楊貴妃の死体を見ることも出来ず引き返し、もとのままの住まいの様子がまた在りし日の楊貴妃を思い出され悲しみに暮れるが白髪の目立つようになったかつての若者たちとともに涙をこらえて過ごす

魂魄不會來入夢 楊貴妃のみ霊は夢にもでてきてくれない

ここからも帝は、み霊でも良いから何とか楊貴妃に会いたいと念力で死者の魂を引き寄せる道士に探すよう命じ、仙人の住む楼閣に住む大勢の仙女のうち太真というものがそうだと連れてくる

その仙女はかつて結ばれていた証として昔からのものを示し、こう続ける

但教心似金鈿堅 天上人間會相見
もしも二人の心が黄金螺鈿の堅さなのだとしたら
天上と人間(じんかん)と別れていてもお会いできます

臨別殷勤重寄詞 詞中有誓両心知
別れ際に丁寧に重ねての伝言があり、二人だけの知る愛の誓いに触れる

七月七日長生殿 夜半無人私語時
在天願作比翼鳥 在地願爲連理枝
天長地久有時盡 此恨綿綿無絶期
7月7日七夕の夜長生殿で、夜も更けた2人だけの時間に囁き誓ったことは
「天に生まれ変わったら比翼の鳥となって飛び、地に生まれ出たなら連理の枝になろう」と
天は長く地は久しいけれど、時が来れば尽きる
そうだとしても満たされないこの深い思いは連綿と絶えるという事はないだろう

深く愛した楊貴妃のその肉体が失われてもみ霊を探し出し、またその永遠の愛を誓い合う

私は『源氏物語』というものを高校の古典と、大学の時中等教育課程国語の授業で勉強した程度だし(結局国語の免許は取っていない)、今とても人気のある大河ドラマ『光る君へ』も見ていないけれど、白楽天の漢詩というのはとても人気があり(同時代の杜甫や李白に比して)日本の宮中─殊に紫式部や清少納言の平安時代─でも大変親しまれ勉強されたそう

連理の枝についてちゃんとまとめようと、こうして一生懸命漢詩を打ち込んでいても確かに非常に分かりやすくとても面白い(悲恋の物語なので面白いも違うかもしれないけれど)ので人気でその当時の人達が好んで勉強したことが少し理解できる気がする

若い頃はこういったロマンチックな古典や恋や愛を詠む漢詩や詩を積極的に読むことはなかったけれど、趣味の制作で漢詩に触れることが多いので少し興味の矛先を変えてみるのも楽しいと今さらながらに実感する

祇園祭もはじまるが、ひとつひとつの山鉾を巡り由来や物語を読むにつけても中国との関わりや舶来の美術品など”日本“の中の”京都だけ“のお祭りとして通り過ぎるのはもったいない気がして年々その魅力にハマっていく

偶然生まれたこの地で、この目で見ることが出来る感じることが出来る場所にたんと恵まれているのだから思い立ったらどんどん足を運ぼうとまたソワソワ落ち着かなくなる、わたくし

下鴨神社 壱 はこちら↓

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