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鶯谷でサウナに入るという旅

あぁ、なんだろう。この一体感を生む場所は。最新施設の中にあるサウナ。アナログっぽさに妙に惹かれてしまう。非日常体験に癖になりそうだ。

鶯谷にあるひだまりの泉「萩の湯」。僕はサウナと水風呂が好きだ。サウナと交互浴を繰り返す。巷では交互浴と呼ばれている入浴法だ。確かになんとも言えない、気持ち良さがある。

サウナは追加料金が必要だ。スペースはかなり広い。20人ほどが入ることができる。汗をダラダラかいていると、突然スタッフが入ってきた。「サウナの鍵を見せてください。腕を上にあげてください〜」とチェックがはいる。一般の銭湯は、サウナ室に入るのに、専用のカギが必要だ。しかしここはまさかの目視。

「萩の湯」は鶯谷駅から歩いて5分ほどの場所にある。ラブホ街を突き抜けていく。少しそわそわしてしまう。「自分はホテルに行くんじゃありません。銭湯にこれから行くんですよ」と顔全体で表現しつつ、店の前に着く。

店の入り口に立つと、その大きさについ、見上げてしまう。1Fから4Fまで銭湯なのだ。浴場に入ってみる。平均的な銭湯だと、10人も入れば混雑していると感じる。しかし萩の湯は、炭酸泉、水風呂、サウナや露天風呂まである。そしてサウナだけで軽く20人は入る。

一旦サウナから、外に出た。水風呂や炭酸泉などでゆっくりしていた。すると、サウナ室から人が全員追い出された。サウナマットの交換が始まったようだ。それだけ稼働率が高いのか。吸水が悪いマットを使っているのか。IKEUCHI ORGANICのバスマットなら交換回数減らせるななどと思いながら、ぼーっと様子を眺めていた。

清掃が終わったことが告げられた。待ってましたと言わんばかり、次々に裸の男たちが中に入っていく。僕も倣った。サウナ室では、バラエティ番組が流れている。本も持ち込みできないので、テレビを見なくとも音声は耳に入ってくる。ナインティナインの岡村が何か面白いことを言う。一人がクスッと笑う。また誰かが笑う。少しずつ、押し殺したような笑い声が波のように広がっていく。

テレビに興味のない人も、少しずつその空間に馴染んでいく。誰かが均衡を破るように、横にいた男性が大きく声を出して笑う。サウナを出ようとする頃には、かなりの人が声をあげて笑っていた。映画館でコメディを観た時と同じように・・・。サウナ室を追い出されて、待機して、同じタイミングで入り直す男たち。サウナ室がなぜか、一体感を生む場所になっていた。

今回のテーマは旅。旅を非日常とするなら、近くても普段行かない場所に行けば立派な小旅行になる。ひだまりの泉「萩の湯」のサウナは僕にとって旅である。

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今回は旅行作家下川祐治さんの単発講座で旅紀行を書く機会があり、ご本人に添削をいただいた上で公開をしました。一文一文を20字以内にすること、読みやすい構成に編集をしていただきました。プロの作家さんに校正いただくという貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

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