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「同志少女よ敵を撃て」読後感想

こんにちはキーです!!
「同志少女よ敵を撃て」を読み終わりました。
この本は重厚で、小難しいと率直に思いました。
読後には「生きる」ということを考えさせられました。
自分にとっての同志とは何か。敵とは何か。
一人の少女が生きた濃密で過酷な人生、戦時下で学んだのは命の意味でした。

万人に勧められる本ではないかもしれませんが、一度手に取って読んでほしい本です。
*以下ネタバレあり


それぞれの正義


一番印象に残ったのはスターリングラードでの戦いでした。
戦争では通常の感覚が麻痺し、殺人が英雄視されます。
殺した数を誇り、ゲーム感覚で敵を殺す快感、そして次の瞬間には仲間が殺される。
いつ死ぬかもわからない前線で、生き延びた人々と、その人間らしさを持ち続けて死んでいった人たち。

ユリアンはあのとき知り合いの女性でなければ
ボグダンは子供がどちらも殺されていれば
マクシム隊長の家族が一人でも生き延びていたとしたら…。
彼らの死は偶然ではなく必然だったのかもしれません。

逆に、生き延びたフョードルは家族が生き延びていなかったら、マクシム隊長と一緒に最後を迎えたのかもしれません。
どんな状況下でも人はその人らしく生きている。
それを想像すると恐ろしくもあり、同時に人間の強さをとても感じました。
どんな時でも人は人を辞めることはできず、意志を持ち続けてしまうんだなと。

敵兵だって味方が撃たれれば助けに行く。
それを撃ち抜いて楽しんだセラフィマ。
これは効率がいい。殺さずに手負いにすればわんさか敵兵がやってくる。
そう思ったのも束の間、イリーナに引っ張られ間一髪生き延びるわけですが。
殺すこと、スコアを伸ばすことに何かしら意義を見いだしたセラフィマは
人としての違和感をとても強く感じました…。

サンドラというコウモリ

自らの願いに純粋に動いたサンドラ。
セラフィマは何度も腹を立てていたし
読者としてサンドラには同じく嫌悪を抱きました。

しかし、イェーガーにもセラフィマ達にも誰にも死んでほしくないという
ある意味純粋な願い。
それを体を張って成し遂げようとした行動には強さを感じました。

サンドラにも自らの正義があり、兵士ではなかったですが戦っていました。
もし彼女がお腹に子供がいなかったら、同じ行動を取ったのかどうか。
夫の子を宿しながら戦時下でイェーガーと関係を持っていた事実には嫌悪感を覚えますが
サンドラを生かしたことでセラフィマはイェーガーの存在を知り、最後に勝つことができました。
勝てたからこそサンドラとイェーガー二人の間に確かな絆があったんだなと思えることもでき…複雑な感情が胸に残ります。

ミハイルという存在

ミハイルが主人公でも物語ができそうなほど、彼は魅力的なキャラクターでした。
最後にはセラフィマによって撃ち抜かれるわけですが…。
セラフィマにとって本当に殺さなければならなかったのはイェーガーよりもミハイルだったのか。どちらも殺すべき相手だったのかは僕にはわかりません。

イェーガー所属の軍が村を全滅させ
直接的に母を殺した明確な復讐の相手でしたが、サンドラのことで怒りを覚え
取り乱し、油断をして撃ち抜かれた男。
村人に手を出さなかったからこそ生き延びることができたイェーガー。

セラフィマにとって同郷だった優しいミハイル。
変わってしまったミハイルが悪いのかはわかりませんが、最後の彼は確かにセラフィマにとっての敵でした。

ミハイルは殺されたとき、最後セラフィマを目撃して
勝手な憶測ですが
「やっぱり」と思ったような気がします。
悪魔になってしまった自分。
戦争が終わろうと自身が行ってきたことはなくならない。
変わってしまった精神性は変わらない
いつ変わってしまったのかわかりませんが
もしかしたら安堵したのかなと思いました。
本当に勝手な憶測です。

ミハイル視点での話があれば読んでみたいなと思いました。

まとめ

読み終わり正直疲れましが、圧倒的な物語でした!
あとあと知ったんですが、これ新人が書いたんですか…?信じられん。

重厚すぎたので、次は少し気楽な物語を読みたいなと思いました。w
「成瀬は天下を取りに行く」はこの本を読んだ後、読むのにちょうど良いかもしれません!

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