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Hawaiʻi Pacific University (HPU)School of Social Workに留学中しています

社会福祉学科教員の渡邉浩文です。私は、Hawaiʻi Pacific University (HPU)のSchool of Social Workで4月から1年間、海外留学の機会をいただいて勉強させていただいています。HPUは、ハワイ州のホノルルにあり、ハワイの文化的背景を大切にしながら世界中の学生が学んでいます。

HPUのキャンパスです。HPUのVALUESである、ALOHA,KULEANA, PONOの文字がみえます

8月28日からFall Semesterがはじまりました。これからHPUでSocial Workを学ぶ学生たちに対し、9月9日に毎年恒例のカルチュラル・リトリートが行われ、School of Social Workの教員、学生、大学院生が参加しました。(実は、本学科教員の渡辺裕一、木下大生、数名の学生、大学院生も参加してくれました!)このカルチュアル・リトリートは、Fall Semesterで開講されているいくつかの授業の課題とも連動しており、非常に重要な位置づけになっているプログラムです。

カルチュラル・リトリートは、ホノルルの郊外にあるマキキ渓谷のマウナラハ(家族経営の庭園)で行われました。代々この渓谷に住み、ハワイの伝統的な文化の維持に取り組んでいるマヘアラニさんとその息子カラーさんから、ハワイの文化儀礼の見学や参加、マウナラハの歴史について学習しました。そして、マヘアラニさんの家の敷地での実習を行いました。

最初に、School of Social Work の教員である、Tammy 先生とその指導を受けている学生たちが、マヘアラニさんとその息子カラーさんに対し、ハワイの伝統的な儀式に則った挨拶(オリ)を行いました。その後、参加者全員で大きな円になり、マヘアラニさんからマウナラハの歴史について説明を受けました。そして、敷地内にある小川のなかにある石や木材等を取り除き、小川の流れを改善するという作業を行いました。

Tammy 先生からオリの指導を受けるHPUの学生の皆さん。奥に渡辺学科長もいます
マヘアラニさんと息子のカラーさん

学生、大学院生、そして教員も小川 の中に入り、小川の中にある石や木材等を取り除くため1時間強、水の流れを改善するために泥だらけになりながら共に働きました。その後昼食をとり、再び大きな円を作って、感想を言い合いました。学生たちからは、作業を通して共に学ぶ仲間としての一体感を感じられたといった感想がきかれました(本記事のトップ・サムネイルの写真は作業のあと参加者全員で円になって感想を報告しあっている様子です)。

このプログラムは様々な解釈ができると思います。私は、以下のように考えました。火山島からなるハワイは、山の上部から流れ出る河川が谷の中を通って海に到達するようになっています。ハワイの先住民族はこの河川を中心にコミュニティを形成し、先祖代々、島内の限られた資源を分かち合って暮らしてきたとされます。これはAhupuaʻaと言われ、自然環境と人間社会がバランスと調和を保ち、持続可能な社会を形成するモデルとして注目されています。

今回、私たちはその大切な小川の上流部の流れを改善するため、共に作業を行いました。機械を使ったり、業者に頼めば一見合理的でもっと楽にできたかもしれません。しかし、大切なものを守るため、手作業で共に泥だらけになるという体験が共有されたからこそ、そこにコミュニティを形成する基盤を作れたのかもしれません。時々嵐が来たりして、岩や木によって小川の流れが滞るといった自然のサイクルと調和した人間社会の営みが展開されているような気がしました。多様な文化的背景をもつ人々が居住するハワイにおいてソーシャルワークを行うためには、その個々の文化に対する尊重と謙虚さをもつことが重要となります。その実践の中から、よりよい社会をつくるための知恵を生み出すことができるかもしれません。こうした貴重な学びの成果をたくさん武蔵野大学に持ち帰ることができるよう、残りの期間も頑張って勉強してきたいと思います。

また最後になりますが、8月に起きた同ハワイ州のマウイ島の山火事で被害にあわれた皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。

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