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軽トラの窓越しに手をふったおんちゃんがすごい発明家だった #漁師の娘が見た景色

祖母が運転する軽トラの助手席。港から家に帰るまでの細い道で、自転車にのったよく知ってるおんちゃんとすれ違う。子どもの頃の鮮明な記憶。

マルゲンのおんちゃん。うちの家族はみんなそう呼んでいる。
”縄文干し”をつくってる人だ。

物心ついた頃から当たり前に耳にしてた「縄文干し」は、いわゆる干物。

干物といえば「縄文干し」だった。世間知らずの私はそれが特別な干物であることを知ったのは大人になってから。
震災を機にふるさとと家業(漁業)のことを考えるようになったのがきっかけだ。

「すごく研究熱心なおんちゃんだったんだよ」

地魚「常磐もの」をよりおいしく加工するために、研究に研究を重ねて、臭みがない透明感あるおいしい干物を発明した。それが丸源(マルゲン)水産の「縄文干し」。
開発以来、数々の賞を受賞している。

それまでちゃんと知る機会がなかった「縄文干し」のこと、「マルゲンのおんちゃん」のこと。
故郷のこと、漁業のことをちゃんと考えて初めて、そのストーリーに出会った。
ちょっと遅かったおだけど、、、

古代食「縄文干し」へのおもい
「常磐もの」として、水産品のブランドとしての地位を築いたいわき市には、遠い昔より浜の人々に愛され、そして食べ伝えながら、商品として流通しなかった雑魚や小魚がたくさんあります。
「縄文干し」は、そんな雑魚や小魚でも「素朴な味で美味しいのにもったいない」という想いから、魚を住居内の上部など風通しの良いところに吊るして日陰で干し上げ、保存食にしていた縄文人の知恵から誕生しました。
丸源水産食品では、古代食「縄文干し」で食卓を豊かにすることを目指しています。
引用:丸源水産ホームページ https://marugen-syoten.com/about/

残念なことに、震災後、私がそのストーリーを知ったころ、マルゲンのおんちゃんは病気でなくなってしまった。

しかし、その後5年のブランクを経て、マルゲンのおんちゃんの息子さん(現社長)が丸源水産と縄文干しを復活させた。それを知ったときは、心がじわ~っとあたたまる感じがした。
本当にうれしかった。
久々に口にした「縄文干し」は、あの、私が良く知る干物だった。

私が慣れ親しんだ、よく知っている「縄文干し」を、ふるさとの特産品として、自分の言葉で紹介できる。それだけでとっても嬉しかった。

今、私はふるさとを離れて暮らしている。
行きつけの居酒屋は、もちろんふるさととは縁もゆかりもない。都会の郊外にある。
でも、私が大将に自慢したふるさとの「縄文干し」は、いつしかお店の定番メニューになっていた。

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