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抗がん剤治療の中止

「もうこうなってまってはなあ、、、、」

医師は50代くらいで、白いものの混じった髪、優しそうな顔立ち、そして温厚な口ぶりの方だったけれど、その口から洩れたこの言葉は、冷たく感じた。

母の脚は突っ張ってしまい、車いすに座っていても、曲げて座ることができなかった。そういう人のための金属の脱着可能の支えが取り付けられ、車いすに座り足を延ばした状態で移動する。

その足を見て、医師は「動かさないかんよ」といった後、母は、「しびれて歩けん」という。

医師は。少し考える素振りをして、

「こうなっては、これ以上抗がん剤をやって余計寿命を短めてしまうといかんで、、、いったん中止しよう。」

他の抗がん剤、、、という選択も考えてくれたみたいだけど、わたしが連れてくるのが大変という愚痴をいったために、そうなってしまった。

抗がん剤をあんなに嫌がっていた母は、「抗がん剤、、、」と抗がん剤してよという口ぶりで一言いった。

とにかくまた半年後ぐらいに、検査をするから来てということだった。



歩けなくなった母の介護をするのに、父はくたびれ果てていた。

「俺がまいってまう」

父には、申し訳ないなと思う気持ちもあったが、母の体調がひどかった時にうちに母を連れてきたのだが、すぐ帰ると言って2日ほどで帰って行ってしまったし、近くにいる義両親の介護もあったので、母に構っている時間はそうなかった。

担当のケアマネージャーさんは、本当にいい方で、いつも素早く行動してくれていた。そのことが頼みの綱だった。

少し前に父の休憩のため、ショートスティを提案してくれ、手術後ショートスティを使ったこともあったので、もう一度と思い、連絡を取った。

「(介護保険の)点数的に、もうそんなにショートスティはできないので、施設はどうですか」という話になった。


ショートスティの時も母は自分の携帯電話で電話してきて、こんなとこおりたないなあ、、、とぼやいていた。そのことを考えるととても承知するとは思えなかった。

しかし、わたしが看れない以上、これ以上父に頼むのも限界と思われたため、施設の話を進めることにした。


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