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奮い立たされる実話をもとにした感動の映画

インドを軸にした話をさせていただくことが多いので、まさかインド映画じゃないの?いや、むしろ、どうせインド映画でしょ?と思う方もいらっしゃるかも知れません。全くその通りです。

インド映画って…なんかとりあえず大勢で歌って踊るだけのよく分からないやつじゃないの?と勘繰る方もいらっしゃるかも知れません。全く、いや、ここに関しては部分的にその通りです。ただそんなことはほんの一部分なので、ご愛嬌くらいに捉えていただければ幸いです。

本国インドでは2019年に、そして、日本においても2022年に全国で公開された映画『スーパー30 アーナンド先生の教室』(原題:Super 30)をご存知でしょうか?タイトルにも記した通り、実話を元にしたインドの奇跡を少しだけご紹介します。ほぼほぼネタバレになるかも知れませんので、ご容赦ください。

主人公は、天才数学者

と書くと部分的には大袈裟かも知れませんが、敬意を込めて言うなれば、数学が得意なおじさんの半生を描いた作品です。

彼は1973年にインドはビハール州の中心地であるパトナという街に生まれます。その当時も、そして今もなお最貧州として知られるビハールですが、そこで郵便局の事務員の父と専業主婦の母との間に生を授かるわけです。

家庭は決して裕福ではなく、彼自身は公立の中高へと通い成長していきます。そんな中でも圧倒的に得意かつ愛していたのが数学です。高校卒業間際には、とある数論を仕上げ、これが有名な学術雑誌に取り上げられます。そしてなんと、これをきっかけにケンブリッジ大学への切符を手にするのです…もう、映画みたいな話ですね。

ここからはあえて省略しますが、そんないわゆる天才的な数学力を持ち合わせた男性が主人公ですが、彼も現在は50歳と半世紀が経ちました。

そんな彼がすごいのは、数学の力だけではありません。その人徳というべきか、まさに人そのものに宿る崇高な魂こそがからの真髄なのだと思います。

教育者としてのキャリア

結局のところ、色々あってケンブリッジ大学へ行くことを断念するのですが、それとほぼ同時期から教育者としてのキャリアを歩み始めます。それが1992年であり、まだ19歳の頃です。日本的に言えば、6畳一間を500円ほどの家賃で借り、いわゆる私塾のような環境を設け、教えることを始めるのです。そこから約10年ほど、この環境で多くの子どもたちに勉強を教えることでビハールでの教育振興や社会の発展に寄与し続けました。

きっと、彼ほどの頭脳と数学力があれば、経済的な事情などは如何様にでも乗り越えられたでしょうし、学者として超一流になった可能性は全く否定できません。それどころか、それ以外の道においてもその類い稀なる数学力を活かせることができたでしょう。そして、そこまでとは言わなくとも、自ら始めたその教育施設をもって十分に食い扶持を稼いでいくこともできたでしょう。

そんな彼に転機が訪れたのは、2000年を過ぎた頃です。彼が27歳と、キャリアとしてはまだまだこれからであり、その一方では脂が乗り始めたころ、と言うべきでしょうか。

きっかけは突然に

すでに10年近く子どもたちへの指導にあたり、その類い稀なる指導力もあり多くの人を世に輩出していました。インドの最高難易度の大学とされるIIT、インド工科大学にです。ところが、そこは最貧州とされる多くの貧困層が暮らす地域です。彼が出会ったのはお金がないことによって受験代が支払えない、受験すら出来ないという生徒でした。

自らもそれだけではないものの、経済的な理由もあってケンブリッジ大学への機会を断念せざるをえなかったこと、何より目の前の前途有望な子どもがたったそれだけの理由で機会を閉ざされることが心苦しくてならなかったのだと言います。でも、恐らくそんな理由よりもただただ直感的に使命に駆られたところもあるかと思います。

そうして彼が始めたのが、スーパー30プログラムでした。

スーパー30とは?

そのきっかけから、いわゆる貧困層の子どもたち、私たちの言葉を使えば、まさに“ここに産まれたから”と諦めることを強いられるような子どもたちに対して、無償で、かつ食事や住む場所も含めて提供する私塾を新たに始めることとなります。

30という数字は、その中でも年間で30人に絞り始めたことに由来します。

2002年から始めたこのプログラムは現在に至るまで続き、これまでにインド工科大学に輩出した数は400名を超えます。いや、何がすごいかと言うと、その塾生の約9割が合格しているのです。競争率50倍〜100倍とも言われる最高学府にです。その後の生徒たちの人生の詳細までは分かりかねますが、インドにおいて、今ではIITを卒業して数理や物理、それを活かしたエンジニアリングの道は進むことや自ら起業家もしくは活動家として活躍していくことは、カーストと抜け出せない負の連鎖を断ち切る人生逆転の切符でもあります。

そうした軌跡と奇跡がこの映画では、ちょっぴりビジュアルを盛りながら作られています。

アナンド•クマール氏とは

そんなアナンド氏と私たちが最初に出会ったのは2020年のことです。現地のビジネスパートナーに支援の在り方を相談していた時、スーパー30とアナンド氏の存在をいることになりました。そこから月日が経ち、今ではスペシャルサポーターとして結び手の活動や教育についての様々な指導をいただいてます。

アナンド氏が頭がいいとか実績がすごい、のような話はもういいとして、いや現にすごいのは事実です。それよりも、そうした利他の精神や共助の心を持って取り組めるその姿勢や心が何よりも尊敬に値してならないものだと思います。

自らも貧しい家庭環境に生まれたわけで、諦めることや卑屈になること、私益に走ることもなくという姿を見れることはある意味ではそれ自体も奇跡に思えます。というのも、何もインド人が土台悪い人に育つというミスリードしそうな話ではなく、インドにおける貧困の構造や地域の文化的背景を考えると、事実として抜け出さない方が多い、ましてや抜け出す手段を見つけ授けるという事例が極めて稀有なのです。

そんな嘘みたいな実話は、実話故に見応えもあれば何か学びや気づきが得られる人もいるかも知れません。なので、ぜひ興味ある方はNetflixやアマプラで…と言いたいところでしたが、残念ながら現在ストリーミングサービスで配信している国内の媒体はありません。TSUTAYAオンラインでのレンタルが唯一可能みたいです。

私たちの活動にリンクするところもありますし、映画とはいえ何となく現地をイメージしていただけることもあるかも知れません。

Written by Tatsuya

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