「ボカロはオワコンなのか?」をデータ面から検証してみた(2020/08)

目的

初めまして。ボーカロイドを使った自作曲をニコニコ動画やYouTubeに投稿しているネスティと申します。

私のようなボカロ曲の作り手(底辺なのでPとか名乗れるほどではない)としては、自分の曲がたくさんの人に聴いてもらえるということは目指す状態、かつ次の活動のモチベーションにつながる大事な要素です。
一方で、肌感覚として最近のニコニコ動画のボカロ界隈は再生数やマイリス数といった数値面での盛り上がりに欠けるような印象を受けています。よく「ボカロはオワコン」という言説を記事で目にしますが、2020年現在ボカロ界隈で曲を投稿している自分としても「やっぱりそうなのかなあ・・」という感覚はなんとなく持ってしまうわけです。一方でボカロ出身のアーティストは次々に生まれているので、2極化が進んでいるということなのかもしれませんが。

本稿では、先ほど挙げたような再生数やマイリス数の面から、本当にボカロ界隈はオワコン(という言葉を使うと色々反感もあるかと思いますが、以前と比べて縮小しているという意味です)になっているのかを検証してみたいと思います。
なぜ数値面から検証するかというと、私自身が文化的側面だったり歴史的側面でそんなにボカロ界隈に詳しいわけではないからです。文化的側面からの考察はすでに色々記事がありますしね・・・。ちなみに自分が参考になったのはこの辺の記事です。

ちなみに、今回はニコニコ動画の、「ミクオリジナル曲」タグのうち「歌ってみた」を含まない動画に絞って調査しました。
ニコニコ動画全体のマイリス数とかで語るとボカロ以外の影響も受けるし、逆にYouTubeも含めると大変だしボカロの情報とかに絞るの難しそうだしめんどくさそうだし、、、ごにょごにょ。
ミクに絞ったのはほかのボカロも含めると煩雑になるのと、初音ミクはまあVOCAOID文化を代表しているだろうということでミクの傾向≒VOCALOID全体の傾向 と見なして問題ないだろうとみなしているという理由からです。

調べた内容の詳細

・2008年1月から2020年7月までの、「ミクオリジナル曲」タグのついた動画のうち、「歌ってみた」を含まないもの。投稿数(作り手側の活況度合いを見るため)、マイリス数・再生数(聞き手側の活況度合いを見るため)を推移で見た。

・集計結果は2020/8/8時点のもの。2020年7月の投稿とかについては、今後もっと再生数やマイリスが増えていく可能性はあるが、だいたい1週間くらいたてばだいたいの動画はマイリス数については伸びが止まると思われる。(なので結果が大きく変わることはないと思われる。)

結果

★マイリス中央値
まずは聴き手側の活況度合いを見るため、月ごとの"1動画あたりのマイリスト数"の中央値を見てみる。平均値ではなく中央値にしたのは、平均年収ではなく年収の中央値を見た方がいいのと同じ理由からだ。(平均値と中央値の違いについてはググってください)

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こんな感じの推移になっている。2009~2010年をピークにその後ずっと下がり続けていることがわかる。特にピーク時から2014までの下がりっぷりが激しい。2017以降も減少を続けており、なんと2020年7月のマイリスト数の中央値は3だった。つまり、投稿された動画の少なくとも半分はマイリス数が3以下ということになる。最近ではマイリス数が2桁に乗るような作品は投稿されている作品の中でも割と上位に入るのだろう。

再生数中央値
再生数だとどうだろうか。

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結果は同じようなものだった。再生数はマイリス数と違って投稿されてからの時間が長く経過するほど増えていくとは思われる。なのでここでは2020年7月ではなくもうちょっと前の数値を拾ってみる。すると、2020年1月の再生数中央値は595, 2020年2月は420だった。

マイリス率
マイリス数を再生数で割るとマイリス率(再生された回数のうちの何%がマイリス登録しているか)になる。マイリス率が下がっているというのは、聴き手の「作品を聴いてからの(マイリス追加という)リアクション」が減っているということを意味する。

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マイリス率も少しずつ落ちてきているように見える。ということは再生数に比べてマイリス率の下がり具合が大きいということになる。(ちなみに、2020年に入ってからマイリス率が盛り返しているようにみえるが、これは再生数がまだ伸び切っていないことに起因していると思われるので、半年くらいたつとおそらく2019年くらいの水準まで下がると思われる。)

投稿数
こちらは作り手側の活況度合いを表す指標となる。投稿数が多い=作り手の活動が活発 と考えていいだろう。

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大きい動きとしては2つあって、まずマイリスや再生といった聴き手側の指標に比べてあまり下がっていない、むしろ2017年あたりを底に増加傾向にある。daw環境の進化とか、ソフト音源の充実によって作り手側のハードルが下がり、参入しやすくなったということか。
もう1つが、2020年の3月あたりから急に投稿数が増えていることだ。仮説として、
・コロナウィルスによる巣ごもりで楽曲制作に充てる時間が増えた?
・初音ミクNTの発売発表でミク界隈が活性化した?
・「ミクオリジナル曲」タグをつける基準が変わった?
とかを考えてみたけどよくわかりません。。。

マイリスト数合計
聴き手側の指標が減って、作り手側の指標が減っていないとなると、「聴き手の数は同じだけど作品数が増えたから視聴がいろいろな作品に散らばり、結果として1作品あたりの再生数やマイリス数が減った」ということもあるのか?ということで、ミクオリジナル曲の全動画のマイリス数の合計もとってみた。合計が減っていないなら、衰退というよりはコンテンツの供給量が単に増えただけ、と言えるが、果たして・・・。

画像5

めっちゃ下がってた。なので、全体の投稿数が増えたから1作品あたりのマイリス数が減ったというわけではない。


まとめ + おまけ(宣伝)

長くなってしまったのでまとめます。
とりあえずニコニコ動画(の「ミクオリジナル曲」タグの動画)についてだけ確実に言えることとして、
・聴き手側の活動は減っているが、
・作り手側の活動は減っていない、むしろ増えている。

これを「オワコン」と言っていいかは何とも言えないですが、作り手にとってはなかなかつらい状況です。
なんでこういう状況になったのかとなると(全部仮説ですが)
1.ニコニコ動画自体が廃れており、ボカロもYouTubeがメインストリームになった
2.投稿数が増えすぎ(そしてその量に対して質が必ずしも伴っていないこともあって)聴き手側が食傷気味になった
3.VOCALOIDというコンテンツ自体がリリースからだいぶ年月の経ったコンテンツで、市場全体が縮小している
とかなのかなあ。ただ1.に関しては、私自身が投稿したものについてはまだニコニコ動画の方が再生されているので、ごく一部の最上位の作り手の方々にしか当てはまらないような感覚もあります。

ちなみに、この記事を書いた動機は、自分の投稿した曲のマイリス数がなかなか2桁に乗らないので、「いやこれは自分の作品のクオリティの問題じゃなくて、市場環境の方のせいだから(自分にイイキカセー」と現実逃避した挙句、開き直って「実際に調べてみればいいんじゃね?」となったことです。その意味ではニコ動という場全体での衰退は確認できたので、結果として自分の仮説があっていたという不健康な満足感が得られたので良かったです!!!

最後に、何の文脈もないですが自作の宣伝をさせてください!(これが本当の目的)
https://www.nicovideo.jp/watch/sm37246130

そしてこちらはこれまでに作った自作曲のマイリストです。
https://www.nicovideo.jp/user/95659698/mylist/68233780
聴いていただけると嬉しいです(`・ω・´)
お目汚し失礼しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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