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石黒達昌という作家

昨日、京都河原町の丸善に行った時のこと。新刊本のコーナーでこの本を見かけた。

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石黒達昌/伴名練編『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』。SF作家の伴名練がまとめた石黒達昌のアンソロジー本だ。過日、Twitterで話題にもなっていた。

実はこの石黒達昌が若い時に書いた芥川賞候補作、発表当時からずっときになる存在だったのだ。そのタイトルは『平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺信彦博士,並びに,』。

このけったいなタイトルに心惹かれたものの、しかし当時の私はこの本を本屋で上手く見つけられず、結局何年かしてから古本屋で購入したものの、その頃には熱が冷めていて、少し読んだもののあまり乗れず、そのままになっていた。

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そして、今回発売されたこの本。手に取ってみると、くだんの芥川賞候補作も収録されている。そして何より、最初に収録されている『希望ホヤ』を本屋で立ち読みし始めたら、面白くてそのまま読み切ってしまった。

というわけで、購入。

『希望ホヤ』は、淡々とした視線で、科学と人間それぞれの傲慢と虚無が描かれていく。読後は寂しいでも悲しいでもない独特の空虚感を味わえる。

やはり石黒達昌は面白そうな作家だ。長い長いタイトルのくだんの作品も含め、他の収録作を読むのが今から楽しみである。

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