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書評:いつもどこかが切ない物語|別役実、阿部隆夫『さばくの町のXたんてい』講談社の幼年創作童話/1976.

先日、近所の書店の古本コーナーでふいにこの本を見つけた。別役実の童話は見つけたら迷わず買うことにしているので、早速手に入れた。

別役実、阿部隆夫『さばくの町のXたんてい』

海と砂漠にかこまれた小さな街に住む「Xたんてい」が、街の動物園にいたピンクの象が少しずつ消えていく、という不思議に事件に挑む……というあらすじのものだ。

話のオチは伏せておくが、最近でこそ比較的よく見かけるタイプの物語だけれども、これが執筆されたのが1976年であることを考えると、かなり斬新だったのではないか、と思う。少しだけイヨネスコの有名な戯曲を思い出させるあたり、さすが別役実である。

もちろん、今読んでも、陳腐さは感じず、別役実ならではの切なさが満ちている。

そう、別役実の童話は、いつもどこかが切ない物語なのだ。

入手は難しいかもしれないけれど、見かけたらぜひ手にとって読んでほしい……そんな童話でした。

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