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運送業の2024年問題と投資方針の考察

■運送業の2024年問題とは?

「2024年問題」とは、物流業界において、2024年度に輸送能力が約14%不足する可能性があること。

なぜ?
トラックドライバーの長時間労働の改善の必要性
 ➡トラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間(23年4月から)

どうする?
 ・物流DXの推進や物流拠点の機能強化
 ・物流ネットワークの形成支援
などの施策

(参考)
『物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン』
(経済産業省/農林水産省/国土交通省 23年6月2日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000687.html

『標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会』の提言
(国土交通省 23年12月15日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000289.html

急に降って湧いた話じゃない。結構前から議論していた問題。
最近の変化点は、標準的な運賃・標準運送約款の見直し。
(結構大きな変化点・進展)

■そもそも、運送業とは?(ビジネスモデルの確認)

分かりきったことを……という感じですが、
・運送業とは、法人や個人から手数料・送料を受け取り、定められた場所まで人や物を運ぶ仕事
・荷物を運ぶ宅配便のような仕事に加え、それに伴う荷物の仕分けや保管・荷受けなど、倉庫での裏方作業も含めた全般が運送業

(参考)
運送業とは?職種としての特徴やメリット・デメリットについてご紹介!
https://www.niziiro.jp/article/199

ここでは、トラックを用いた物の輸送に絞ります。

ビジネスモデルの理解として、収入(売上)と支出(原価)を確認します。

・収入:荷主からの収入

・支出:固定費&変動費
 ・固定費:人件費、車両償却費
 ・変動費:燃料費、タイヤ費、車検・修理費

(12月15日 国交省資料より)

人件費が固定費というのは、特徴的ですが、まともです。

荷主から依頼を受けたものを運ぶために、
運ぶためのトラックと運転手を確保し、燃料費などランニングコストを払う。

■業界の特徴

・大小さまざまな業者が乱立
・二次請け、三次請けの多重構造

なぜか?
・低い参入障壁:トラック一台、運転手一人から事業ができる。
・全国区の大手と地元密着の中小の住み分け?
・大口荷主から大手が受注し、中小へ卸す構造。

価格支配力
・荷主>大手>中小

(参入障壁が低いため、業者が不利になる構造)

収益構造
・大手ほど利益率が高く、中小ほど低い。
・大手が利益をとり、中小には厳しい状況。

内製/外製
・ENEOSや日本製鉄のように、系列の運輸会社を持つ場合
・テーマ「3PL」。外注化。
のように荷主の物流費対策の対応は分かれる。

■今後の方向性

・トラックドライバーの長時間労働の改善の必要性
・標準的な運賃・標準運送約款の見直し
➡中小・個人事業主も含め、荷主に対し値上げ要請が可能に
 ➡一方で人件費負担大。荷主の立場では、値上げは運転手の待遇改善のため
 (値上げは、業者に利益を落とすためではない。とはいえ、全てが運転手の人件費に回るわけでもない。)

・物流DXの推進や物流拠点の機能強化
・物流ネットワークの形成支援
➡これらの対策は、設備投資を要する。中小ほど負担が大きい。
 ➡業界再編の必要性
 (大手に集約?地域特化?専門特化?)

値上げの効果、設備投資の効果が業績に反映するのは時間がかかる。
一方で、業界再編については、過去からその傾向はあるし、それが加速する。

■投資の方針

どう転ぶかは、正直よくわからない。
基本は、テーマに合うような会社で、割安な会社という目線。
親子上場の解消とか、物流内製化の深化とか
大手による中小の買収とか

図は、株探で「陸運」「3PL」のテーマで売上高で対象を絞ったもの。
PER/PBR/利回り/ROEなどの比較、目標株価の試算
緑でマークしたのは割安と判断したもの
あまり絞れていませんが、もう少し別の切り口で絞るか、幅広に割安を拾っていく感じでしょうか。

■今回の考察用のファイル

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