はじめてインターネットで傷ついた時のはなし

わたしの父は、よく分かんないけどパソコン関係の仕事をしていた。家には仕事用家庭用を含め5、6台のパソコンがあったし、父も母もパソコンに詳しかったように思う。わたしの #はじめてのインターネット は、何を隠そう、覚えていない。

いやなにかっこつけとんねーん、とか、ならこの話題書くなやー、とかいろいろあると思いますけど、本当にまじで覚えていない……気づいたらYahoo!で調べてたし気づいたら夢小説サイトにぶち当たっていたし、中学生になって自分の携帯もったらもう自分で夢小説サイトつくってたし、はじめてとか、ない。わたしの人生にずっとあった。まじで。インターネット最高〜〜!っていう話はたくさんできる。ネットで知り合って仲良くなった友達の話とか、遠距離だけどネットのおかげでいまでも仲良い友達の話とか、辛い時を支えてくれたコンテンツと出会わせてくれた話とか、ほんとにほんとにたくさんある。しかもこういう話はわたしなんかに限らずいろんな人が当たり前に経験しているし、インターネットって本気、すごいっすよね。この時代に生まれてきてよかった。

特に中高生のときはすごかった。ガラケー全盛期で、スライド式携帯を持っていたわたしは、ブログの更新にご執心だった。夢小説サイトを運営していたわたしは、そのサイトの管理人としてのブログと同じ学校の友達がみるようないわゆるリアルアカウントのブログの2つを持っていた。夢小説サイトの管理人としてのブログでは、好きな作品の感想を述べることはもちろん、◯◯へ質問!のようなバトンを交換したり、私信と評して他のサイトの管理人の友達と交換日記をしたりといろいろな使い方をしていたように思う。更新頻度も毎日に近かったし、くだらない日常や勉強の愚痴等、匿名ということも手伝ってなんでもかんでも自由に書いた。も〜〜〜〜はちゃめちゃ楽しかった!自分のことをたっくさん自由にかいても文句言われないし、みんな読んでくれるし天国かと思った!インターネット最高!と心から思っていた時代だった。でも、リアルアカウントのブログの方はというと、たまに友達と遊びにいけばその時のことを書いて楽しかった〜〜わたしたちズッ友だよね〜〜〜というテンプレを並べるばかりで、とても自由に書いていたとは言えなかった。だって、わたしを知っている友達が、みんな、見ている。

わたしが高校生だった頃流行っていたブログは、特定の記事にパスワードをかけることができるものだった。そのパスワードは仲のいい子だけに教えられて、それを教え合うことで仲良しの証明になっていたように思う。(とはいえ、クラスで一番嫌われていた女の子のブログのパスワードはクラスの女の子全員が知っていたし、たいしたセキュリティーではなかったけれど…。)パスワード付きの記事の中身は彼氏との特別な内容であることもあったけど大抵は、悪口だ。嫌いなあの子が今日こんなことを言っていた、こんなシュシュをつけていた、誰々もあの子の悪口を言っていた、だいたいがそんな内容だった。わたしもいろんな悪口を見た。嫌な気持ちになることはなかった。それを見ることができるわたしは「仲間」なのだと、大丈夫なのだと安心したかったからだ。

でもある日、いつものようにある友達のブログを読んだとき、安心とは違う気持ちが生まれた。あんなにはっきりと息を呑んだのはあの時が初めてだったと思う。
「みんなに甘やかされてて、ほんとむかつく」
「これを読んで自分のことだって分かるのかな?」
嫌なことは忘れる質なので詳しくは思い出せないがこんなようなことが書かれていたと思う。読んですぐは誰のことか分からなかった。でも、読み返した時にそれはすぐにわたしのことだと分かった。わたしははじめて、インターネットなんて、と思った。

恥ずかしい限りなのだけど、確かにあの時期のわたしは自己中で悲劇のヒロインぶって部活の和を乱して、嫌われても仕方ないような有様だった。なのに心が弱くてすぐ過呼吸になったりして、表立って攻めると攻めたほうが悪いような見え方になる。(攻める、というか注意するというか…)当時のわたしは腫れ物だった。自覚はなかったけれど。周りのみんなだって当然辛かったのに、過呼吸になってすぐ泣く腫れ物を大事に扱わざるを得なかった。ストレスが溜まって当然だ。

ブログを読んだ時、なんで直接言わないんだ!とわたしはとても怒った。怒ったけど、これわたしのこと?なんて直接聞く勇気はなくて(相手には求めたのにね)なんにも言わずに、そのまま友達をした。そうやってなあなあにしているうちにわたしの心は落ち着いて、過呼吸も収まって、部活内のピリピリした空気もなくなって、みんな仲良し!みんなだいすき!な部活としておさまって、わたしたちは卒業した。いろんなことはあったけど、結果よかったよね〜なんて笑いあえるくらいになった。(高校生ってそういうところあるよね…)

あのときは直接言え!と思ったけど、今になって思い返すと、直接言われなくて本当によかった、と思う。直接言われていたらわたしはそれこそ大きな心の傷を負って過呼吸が治らなかったかもしれないし、彼女の一言で過呼吸が止まらなくなっている場面を見た他の友達が、部員が、どんな気持ちになっただろうかと想像するだけで辛い。その彼女だって直接言えばその場はすっきりするかもしれないけど、相手を明確に傷つけてしまった、という罪悪感を得ることは間違いないだろう。

他の人のことは知らない。これはわたしの話だ。わたしの話だが、わたしは、直接言われるより、鍵のかかった限定のブログ記事で言われた方が、何倍も良かった。あの記事のおかげで気づけたし、少しの傷で次に進めた。

大学生になってすぐ、その友達と高校で再開した。部活の後輩指導にみんなで高校に集まった時だった。1年ぶりに会ったその子は少しだけ気まずそうに、わたしにいった。
「わたし、嫌なことはすぐ忘れちゃうからあんまり覚えてないんだけど、でも、あの、あのときはごめんね」
「えっ、あっ……ううん、わたしこそ、ごめん」
高校の校舎の吹き抜けの下、私服で高校にいるなんて変な気分だね〜なんて笑いあったすぐその後、直接言われたその言葉で、全部全部、忘れてしまった。ここまで長々書いたけど、全部妄想だったかも、なんて思うくらいに、遠い記憶にしてくれた。

結局は直接の言葉で救われとるやないか〜い、というツッコミはごもっともなのだけど、わたしは脚色が苦手なのでそのまま書いてしまった。なんかぶれぶれしちゃってすみません。楽しいばっかりだったインターネットで、はじめて傷ついて、でもそれでよかった、という話がしたかったんです。それでよかったし、仲直りしたよ、という報告でした。

もう一回言うけど、これはわたしの話です。わたしの話しかしてない。あなたにとって素敵な言葉は、インターネットにも、空の下にも、どちらにもあると、わたしは思います。

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