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『東京オリンピック2020 SIDE:A』を観てきた!

音楽が風さんだということが観に行こうと思った一番の理由ではあったけれど。
いやー、観てきて本当に良かった!
以下、感動のままに感想書きます。

フェアな立場のドキュメンタリー

開催にこぎつけるまで、いや始まってからも様々な立場の人が様々な観点から反対、賛成、色々な意見を投げ合い、幾つかのスキャンダラスな出来事も重なって過去にない重い大会だった東京オリンピック2020。
でも選手たちにとっては四年に一度の晴れ舞台であり、憧れのステージである。
一年ずれても結果は変わるだろうしモチベーションも変化する。
この舞台に立てた人・降りた人、それぞれに苦しみもがいた末の大会。
このSIDE:Aでは、そういう選手たちとまわりの人々に焦点を当てた作りになっている。

かなり望遠で撮ったのか、粗い画像のシーンも多くそれがむしろ効果的。

音声はよく撮れていて、畳に投げ落とされる音(柔道)、手や足が空を切る音(空手)、バットが球をとらえた時の快音、激しい息遣いなどリアルで臨場感があった。

選手や家族のインタビューに答える内容も率直。
一流のアスリートならではの含蓄のある言葉は、真実と迫力を含んでいた。

どんな結果が待っていようと、自分を信じて闘い続けた人々が尊くないわけがない。
お馴染みの日本選手以外にも、各国の沢山の選手たちの日々が、一切の偏った見方も解説もなく、淡々とフェアに描かれていて良かった。

選手目線の記録映画

国を背負う人、難民となり他国代表として出る人、家族のために出る人、反対に出ないという選択をした人、大会種目から外されたり追加されたりの競技をやり続ける人、人種差別と闘いながら選手として声を上げる人。
監督・コーチ、チーム、家族の思い……沢山の場面で、純粋に高みを目指す人々の姿に感動して何度も目頭が熱くなった。

『オリンピックで勝つことが素晴らしいのか?
人生の金メダルを目指すことこそが大事なのではないか?』という言葉は、ありがちなきれいごとのようでいて、その舞台を目指し一度でも足掻いたことのある人から発せられると説得力をもつ。
映画の中で奇しくも二人が同じようなことを言っていたのが印象に残った。

色々とケチのついたオリンピック、おまけに映画監督の悪評もあってか、観客の入りが相当悪いらしいこの映画。
実際今日は、私を入れ観客は4人だけ。
けれどこれ、かなり見る価値あると思う
いわくつきの大会だったからこそ、いつもの大会の何倍もの複雑な思いを抱いて向き合ったであろう選手たちの葛藤が痛いほど伝わってくる。
障壁に負けず真摯に何かに打ち込む人の姿は文句なく美しくて強い

政治的なこと、各方面の利権や思惑など、様々な理由から開催そのものが危ぶまれた時期もあった。
それに加えてコロナの追い打ち。一年の延期。
結局はほとんどの試合が無観客という前代未聞の状態での開催。
国際情勢は複雑であり、パンデミックや自然災害は人々の生活に大きく影響を及ぼす。
全ての人が納得のいく大会などあり得なかったと思うし、それは今後もそうかもしれない。
けれど、スポーツの大会は誰よりもアスリート自身のものであってほしいとあらためて思った。

藤井風の映画音楽

そしてやはり特筆すべきは藤井風の音楽の素晴らしさ。
エンディングまでの約2時間は時々ピアノとその他数種類の楽器によるBGM程度の演出。
それが選手の背景や気持ちに静かに寄り添い、時に優しく時に力強く映像を邪魔をすることなく流れていた。

ラストの『The sun and the moon』、これでついに涙腺崩壊。
これ以上ないというほど映画のテーマを掬い上げ、完璧な解釈で音楽という形で表現していると思った。
しかも、歌詞がメロディが歌声が、あたたかく全てを包み込んでしまう。
風さんはこの映画の完成を見てから音楽をつけたのか、それともプロットだけ聞いて同時進行的に作ったのか分からないけれど、監督の意図をきちんと理解し、真髄を捉えていると思った。
さらには、彼の人生観に見事に重ね併せ、独立した自分の作品としても申し分ないほどに昇華している。
何度も聴きたい。
シングルリリース熱望。サントラ盤出たら買う。

最後に

オリンピックには反対だったからとか、監督のイメージが悪いからとか、そういう理由で毛嫌いする方もいるのかもしれない。

でも私は、作品は作品として正当に評価されるべきだと思う。

映画に限らず、歴史上のあらゆる分野の表現者たちの中には、破天荒だったり人様に迷惑をかけたり人間としてサイテーみたいな人もいる。

でも、そういうことは一旦脇へ置いておいて、作品だけを見て公平に評価する姿勢をもちたい。

モーツァルトもゴッホも岡本太郎も然り、他にもたくさん変わった芸術家はいる。

けれど結局、素晴らしい作品は時代を超えて残り、人々に愛され、人々を癒したり元気づけたりしている。

未曾有の状況下で闘い抜いた選手たちの姿を、ドキュメンタリーという形で記録したこの映画は、あの様々な論議を呼んだオリンピックの汗や涙の記憶と共に、きっと後世に残る作品になると思うのだ。

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