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【厳選】EMOバンド名鑑

 EMOの歴史において個人的に最も重要だと思うバンドを30組厳選し、簡単なプロフィールとともに、各バンドにおいて最もエモいと思う1曲を貼っていく。

No.01 Sunny Day Real Estate

結成年:1992年
代表作:『Diary』(1994)
    『The Rising Tide』(2000)

Sub Popレーベルからリリースしたデビュー作『Diary』によって、EMOを世に知らしめた"EMOの元祖"。ジェレミー・エニックの繊細かつ情熱的なボーカル、瑞々しくも荒々しいギターの旋律、緩急自在なバンドアンサンブルが特徴。最後の作品となった『The Rising Tide』はオーケストラも導入した壮大な作風で、EMOというジャンルの集大成とも言える傑作。



No.02 Jawbreaker

結成年:1986年
代表作:『24 Hour Revenge Therapy』(1994)

今回紹介する30組の中で、最も古くから活動しているバンド。どちらかと言えば、Green DayやThe Offspringといったポップパンク寄りのアプローチをするバンドではあるのだが、EMOが世に浸透し始めた1994年リリースの3rd『24 Hour Revenge Therapy』は、SDREの1stとともに、EMO黎明期を代表する作品として語られることが多い。



No.03 Weezer

結成年:1992年
代表作:『Weezer(Blue Album)』(1994)
    『Pinkerton』(1996)

WeezerにEMOのイメージを持っている人は殆ど居ないだろう。だが初期2枚についてはEMOの文脈で語られることもある。赤裸々に心情を綴った内省的な歌詞や、情熱的な歌唱にEMOの要素が見出せないこともないが・・・あくまで、そういう文脈もあるという参考程度。素晴らしいバンドであることは誰もが知るところで、今更ジャンル分けの議論をする必要もないだろう。



No.04 Texas Is The Reason

結成年:1994年
代表作:『Do You Know Who You Are?』(1996)

解散前に残したフルアルバムは僅か1枚ながら、シーンのカリスマとして語り継がれる伝説的バンド。ハードコアパンクの荒々しさもありながら、曲はメロディックで、ギターは繊細さも併せ持つ。徐々に熱を帯びながら展開させていく楽曲構成も特徴。数々のバンドへ影響を与えた、EMOを語る上で欠かせない存在。



No.05 Cap'n Jazz

結成年:1989年
代表作:『Analphabetapolothology』(1998)

EMOシーンにおける最重要人物の一角、"キンセラ兄弟"が最初に立ち上げたバンド。この後に、兄のティムはJoan Of Arcをはじめとする様々なバンドを、弟のマイクはAmerican FootballOwenをはじめとするプロジェクトを展開していくことになる。今にも壊れそうな、奇天烈で中毒性の高い独自のサウンドとメロディーは、Joan Of Arcなどに受け継がれていく。



No.06 Sense Field

結成年:1990年
代表作:『Building』(1996)

代表作とされている3rd『Building』まではメロディック・ハードコア寄りのアプローチだったが、2001年の4th『Tonight and Forever』からはキャッチーなエモポップ路線へ変更。それが功を奏し商業的成功を収めるも、2004年に解散。その後、ボーカルのジョン・バンチは後述のFurther Seems Foreverなどでも活躍。



No.07 Boys Life

結成年:1993年
代表作:『Depertures and Landfalls』(1996)

サウンド的には、後述のMineralやPenfoldと同系統で、90's EMO特有の陰鬱な雰囲気がある。ただ、その2組と比べると、感情を一気に爆発させるような展開は少なく、バンドアンサンブルでじっくり聴かせるタイプであり、やや地味な印象。手数の多いドラミングと、少し気の抜けたような鼻歌系ボーカルが特徴的。



No.08 Christie Front Drive

結成年:1993年
代表作:『Stereo』(1997)

MineralやPenfoldが"影"ならば、Christie Front Driveは"光"のバンド。繊細なアルペジオからは眩いばかりの煌めきを連想させられ、かと思えば、ここぞの場面で内に秘めた感情を爆発させるような楽曲展開もあり、"静"と"動"のコントラストをつけるのが巧み。隠れた優良バンド。



No.09 Mineral

結成年:1994年
代表作:『The Power Of Failing』(1997)

EMOの最大の特徴と言えば、陰鬱な雰囲気から、溜め込んだ感情を一気に爆発させるかのような楽曲展開だろう。それが最も如実に現れているバンドは間違いなくMineralだ。陰鬱な雰囲気が苦手という人も一定数いるし、私自身もこのバンドに対してさほど強い思い入れは無いものの、この世で最もエモい曲を挙げろと言われたら私は間違いなく『"The Power Of Failing"の冒頭2曲』と答える。90's EMOのシンボル的存在。



No.10 The Promise Ring

結成年:1995年
代表作:『Nothing Feels Good』(1997)

Cap'n Jazzの解散後、ギタリストだったDavey von Bohlenがフロントマンとなり新たに結成したバンド。ポスト・ハードコアが根底にありつつも、思い切りポップな方向に振り切れた瑞々しいアレンジが魅力。どこかCap'n Jazzの面影も感じるような奇天烈な一面も残されているのが良い。



No.11 Starmarket

結成年:1994年
代表作:『Sunday's Worst Enemy』(1997)

スウェーデンのEMOレジェンド。今回紹介する30組の中で、アメリカ以外のバンドは後述のLast Days Of Aprilを含めて2組だけだ。スターマーケットは当時、国境を越えてTexas Is The ReasonやThe Promise Ringらとともにツアーを行っていた。その音楽性は"Hüsker Dü meets Superchunk"と称されることもあるが、そう単純なものでもない。EMOというキーワードも、彼らの音楽を構成する要素の内の一つに過ぎない。熱さと冷静さが同居しており、シンプルだが深みもある音楽性は唯一無二。



No.12 Last Days Of April

結成年:1996年
代表作:『Rainmaker』(1998)
    『Angel Youth』(2000)

Starmarketとともにスウェーデンを代表するEMOバンド。バンドといっても、2000年代半ば頃からは実質カール・ラーソンによるソロプロジェクトとなっている。デビュー作はハードコア・パンクの要素が色濃く、3作目『Angel Youth』以降はインディーポップな方向性へとシフト。2nd『Rainmaker』は両方の良いとこ取りな内容で、荒々しさと瑞々しさの融合が見事。現在もなお活動しており、どこまでも素朴でエバーグリーンなメロディを歌い続けている。



No.13 Far

結成年:1991年
代表作:『Water & Solutions』(1998)

シーンを牽引した最重要人物の一人、ジョナー・マトランガを擁する4人組。感情が迸るようなジョナーの歌唱、ヘビィかつラウドなバンドサウンド、そのどれも気性は荒いが、どこか瑞々しさも感じさせる。メロディラインの良さで勝負するタイプでは決してないが、随所でキャッチーさも見せる。ジョナーは98年のFar解散後も、自身のソロ活動の他、Texas Is The Reasonのメンバーと共にNew End Originalを立ち上げるなど精力的に活動を続ける。



No.14 Braid

結成年:1993年
代表作:『Frame & Canvas』(1998)

ド直球なバンドの多いEMO界にあって一際異彩を放つ、職人肌の技巧派。次の動きが読めない、ことごとく予想を裏切る変則的リズム。過剰に外しにかかるのではなく、少しずつ捻りが加えられたアレンジの連続が心地よい。2011年に再結成し、2014年には新作リリース、その後も2度の来日を果たすなど今もなお強い影響力を持つ。



No.15 Penfold

結成年:1997年
代表作:『Amateurs & Professionals』(1998)

知名度ではMineralに劣るが、コアなEMOファンからの人気は根強いものがある。陰鬱さは Mineral以上で、それでいて落ち着いた曲調が多く、地味な印象が否めないが、突如内に秘めた感情を爆発させる。今にも壊れそうなほどに繊細なアルペジオは、Mineral以上の切ない雰囲気を纏っている。



No.16 The Appleseed Cast

結成年:1997年
代表作:『The End of the Ring Wars』(1998)

 立体的でダイナミックなバンドアンサンブルで魅せる音響派。いち早くEMOにポストロックの要素を持ち込んだ。トリッキーなリズムパターンが、ディストーションギターの響きに一層の奥行きを与えており、他のバンドとは一味違うサウンドプロダクションを見せる。頻繁なメンバーチェンジを繰り返しながらも、一度も解散や活動休止をせずに走り続けてきた稀有なバンド。



No.17 Jets To Brazil

結成年:1997年
代表作:『Orange Rhyming Dictionary』(1998)

Jawbreakerのボーカリストや、Texas Is The Reasonのドラマーなど、EMOレジェンドのメンバー達が集結したスーパーバンド。EMOを軸に、アメリカンロックの要素を織り交ぜた男臭いアプローチが特徴で、陰鬱な雰囲気は無く、カラッとしたギターサウンドを鳴らす。



No.18 Jimmy Eat World

結成年:1993年
代表作:『Clarity』(1999)
    『Bleed American』(2001)

2001年の4th『Bleed American』の大ヒットにより、EMOの枠を越える存在となったJimmy Eat World。3rd『Clarity』は、EMOに繊細さと美しさを付加するアルバムの先駆けとして、00'sのEMOバンド達へ多大な影響を与えた。



No.19 The Get Up Kids

結成年:1995年
代表作:『Something to Write Home About』(1999)

シーンを代表するバンドの一つ。デビュー作『Four Minute Mile』はハードコア・パンク寄りだったが、キーボード専門のメンバー(現在は脱退)が加入した2nd以降はパワーポップ系のキャッチーで色彩豊かなサウンドへとシフトチェンジ。2nd『Something to Write Home About』はEMO屈指の名盤。



No.20 Joshua

結成年:1995年
代表作:『Whole New Theory』(1999)

90's EMO特有の陰鬱な雰囲気は無く、ハイトーンで甘い歌声と、清廉でクリーントーンなギターが特徴。それに反してバンドサウンドは激しめで、特にドラムの手数が多く、しっかりと強弱をつけた緩急のある展開を見せる。



No.21 American Football

結成年:1997年
代表作:『American Football』(1999)

Cap'n Jazz解散後、キンセラ兄弟の弟、Mike Kinsellaによって立ち上げられたプロジェクト。デビュー作は、EMOとポストロックを接続した記念碑的アルバムであり、20年以上経過した現在もなお、EMOの垣根を越え多くの音楽ファンから愛される大名盤。2014年に再結成を果たすと、2枚のオリジナルアルバムのリリースの他、フジロック'19でWhite Stageに登場するなど、現在もなお一線で活躍を続ける。鉄琴とトランペットを織り交ぜた繊細で美しいサウンドがトレードマークだが、内省的でエモい歌詞も見逃せない。



No.22 Elliott

結成年:1995年
代表作:『False Cathedrals』(2000)

過小評価、と言うか知名度がそもそも低い。もっと広く知られてもいい実力派。オリジナルアルバム3枚はどれも良作で、中でも、孤独な旅を思わせる切ない世界観が心揺さぶる2nd『False Cathedrals』は屈指の名盤。いずれの作品もダークでシリアスな雰囲気だが、激しいバンドサウンドと繊細な美しさがあり、他のバンドには無い個性を持っている。



No.23 Further Seems Forever

結成年:1998年
代表作:『The Moon Is Down』(2001)

ポスト・ハードコア色の強い、攻撃的なバンドサウンドが特徴のEMOバンド。アルバムごとにボーカルが代わっているが、最も有名なのは傑作1stアルバム『The Moon Is Down』で初代ボーカルを務めたクリス・キャラバ。後にDashboard Confessionalとして大きく飛躍を遂げているだけあり、その歌声には圧倒的な存在感がある。他には、元Sense Fieldのジョン・バンチが3rdでボーカルを務めている。



No.24 New End Original

結成年:2000年
代表作:『Thriller』(2001)

Farのフロントマンにして、現在もなおEMO界の重要人物であるJonah Matranga率いる EMOスーパーバンド。Texas Is The Reasonのギタリストも擁する。バンド唯一となるアルバム『Thriller』は、疾走感溢れるナンバーは冒頭のほんの数曲程度で、大半はしっとりと聴かせるスローテンポな楽曲が占める。テンポはスローながら、感情が迸るような躍動感、うねりを上げるようなバンドアンサンブルが魅力。



No.25 The Gloria Record

結成年:1997年
代表作:『Start Here』(2002)

Mineral解散後、フロントマンのクリス・シンプソンと、ベーシストのジェレミー・ゴメスの二人を中心に結成。わずか2枚のEPと1枚のフルアルバムのみで解散したが、Mineralとは全く異なる音楽性を示し、強い存在感を誇った。特徴は、エレクトロニックな音像を大胆に導入した、煌びやかで豪華絢爛なサウンドプロダクション。 Mineralの陰鬱な雰囲気とは似ても似つかない、新たな一面を開拓した。



No.26 The Fire Theft

結成年:2001年
代表作:『The Fire Theft』(2003年)

2001年、SDREは解散し、WeezerやJimmy Eat Worldらはメインストリームへと躍り出た。ピアノエモやスクリーモなど、多岐に渡るサブジャンルが発展し始めたのもこの頃。原型としてのEMOが終わった年だと言える。SDREは、ギタリストのみを入れ替えてThe Fire Theftを結成するも、フルアルバムは1枚のみで解散。結果的に、このバンド(アルバム)はEMOの歴史を語る上で必須の存在とはならなかったし、そもそも本人達にそんなつもりも無かったのだろうが、"控えめなThe Rising Tide"とでも呼べそうな、隠れた良作を残してくれた。



No.27 Something Corporate

結成年:1998年
代表作:『Leaving Through The Window』(2002)

ピアノエモシーンの最重要人物、Andrew McMahonを擁する5人組バンド。2nd『Leaving Through The Window』は、エモの音楽性が多様化していく中で、ピアノエモというサブジャンルを確立したと言われる重要作。アンドリューは後に自身のソロプロジェクトであるJack's Mannequinを立ち上げ更なる成功を収める。



No.28 Copeland

結成年:2001年
代表作:『In Motion』(2005)

『ピアノエモ』という括りで紹介されることも多いので、それだけで彼らを侮っている人も居るかもしれないが、Copelandはただ綺麗で美しいだけのバンドではない。ピアノは1stアルバムの世界観を表現する上で欠かせない存在ではあったが、それだけで彼らの音楽を語り尽くすことは到底できない。力強い躍動感、迸る感情が圧倒的にエモい、2nd『In Motion』は00's EMOの金字塔。彼らが単なるピアノエモバンドかどうかは、是非とも名曲"No One Really Wins"、"Love Is A Fast Song"を聴いてから判断してもらいたい。



No.29 Mae

結成年:2001年
代表作:『The Everglow』(2005)

Copelandと並ぶ00'sEMOの雄。ピアノ専門のメンバーが在籍。ピアノエモバンドの中には、ピアノを使うことが手段ではなく目的になってしまっている(ように聴こえる)バンドも少なくないが、Maeの場合は使い方が巧みで非常に効果的。JEW『Clarity』からの影響が色濃い1st『Destination:Beautiful』も素晴らしいが、アルバム全体を通じて一人の少年の冒険物語を紡いだコンセプチュアルな2nd『The Everglow』はEMO史に残る傑作。



No.30 My Chemical Romance

結成年:2001年
代表作:『Three Cheers for Sweet Revenge』(2004)
    『The Black Parade』(2006)

EMOと聞いて真っ先に思い浮かべるのがマイケミやパラモア、FOBやパニックアットザディスコだという人は多いかと思う。私自身もそれらのバンドのファンであり、今も昔も愛聴している。ただし、EMOの歴史を語る上での中心的存在だとは思わない。彼らの多岐に渡る参照元の中の一つに、90's EMOがあったという説明で十分だろう。今回、30組のバンドを時系列のような形で紹介してきたが、最後は、90's EMOからも影響を受けつつメインストリームを制したマイケミで締め括ろうと思う。




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