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デンマークの個性派オルタナバンド、Mewのキャリアを振り返る

 今回は、デンマークの個性派ロックバンド、Mewの音楽について紹介していきたいと思います。

 新譜をリリースするわけでも来日するわけでもなく、今このタイミングでMewを取り上げることに特段の意味はありません。強いて言えば、冬がよく似合うバンドということくらいか。

Mew

 2017年を最後に新譜リリースは無く、ライブ活動も地元デンマークでの開催が中心ということもあり、近年はすっかり存在感が薄くなってしまいました。

 Mewの音楽性を手っ取り早く知って頂くには、2003年リリースの代表作『Frengers』の由来を説明するのが早いです。"Friend"と"Stranger"を掛け合わせた造語で、要は『一見奇抜な音楽性だけど、親しみやすさもあるよ』ってことですね。この由来って結構ダサいとは思うんですけど、確かにMewの音楽性を端的に言い表しているなとは思いますし、他にもMewって結構ダサいと思うポイント多いんですが、そういうところも含めて愛されてるような気がしています。

 他にMewの音楽性を表すキーワードは、『プログレ』『ドリームポップ』『耽美派』など。既成概念に囚われない独自の楽曲展開や、ストーリー性の高いコンセプチュアルなアルバムを作るところが"プログレ"的であると評されることもあるようです。北欧デンマークの空気感が伝わるような冷たく美しい音響と、ボーカリスト・Jonas(ヨーナス)の透き通るようなハイトーンボイスにはドリームポップの要素が。

 メロディの良さ、ギターリフの格好良さ、音響の美しさ、独創的な楽曲展開、アートワークやライブでの映像など音楽以外の面も含めた奇抜さ、様々な魅力を持ったバンドです。

 結成は1995年と、意外にも結構ベテランの域にあるバンドです。上記の『Frengers』でメジャーデビューし、頭角を現したのが2003年なので、それが1stアルバムという誤認識をされがちですが、それ以前にも2枚のアルバムを出しています。

1st 『A Triumph for Man』(1997年)

 演奏もアレンジもまだ荒削りな1stアルバム。まさに磨けば光るダイヤモンドの原石といったところで、実際、2曲目の『Wherever』は後に3rdアルバムの国内盤ボーナストラックにおいて、別アレンジによってまるで別人のような変貌を遂げています。この頃からメロディセンスは本物ということでしょう。


2nd 『Half The World Is Watching Me』(2000年)

 全8曲中5曲が、本作の次の3rdでアレンジを変えて再録されており、なおかつそちらの方が圧倒的に評価と人気を集めているため、本作の影はかなり薄い。ですが、『Mica』と『King Christian』という初期の代表曲を収録しており、ファンであれば見逃せない作品です。緩めのポップなアレンジで、ロック色はまだ薄いですが、メロディセンスの非凡さには1st以上に磨きがかかり、明らかに進化しているのが分かります。


3rd 『Frengers』(2003年)

 メジャーデビュー作にして最高傑作。1~2曲目の『Am I Wry? No』と『156』は、2ndからアレンジを大きく変え、キャリア屈指の人気曲となりました。特に『Am I Wry? No』のトリッキーなドラミングと中毒性の高いギターリフはインパクト大。また、ラストの『Comforting Sounds』は約9分の長尺で、その半分以上をアウトロが占めていますが、意味もなくダラダラ引き延ばすのではなく、その長さに意味がある、圧倒的な説得力を持った名曲です。


4th 『And The Glass Handed Kites』(2005年)

 3rdを最高傑作と書きましたが、実は私個人のフェイバリットとしてはこちらの4th。曲同士がシームレスに繋がれ、アルバム全体が一つの物語のように構成されたコンセプチュアルでプログレッシブな一枚。曲単位で見れば3rdに軍配が上がりますが、アルバム単位では4thを推したい。4~7曲目の流れが素晴らしく、中でも『Special』は名曲。ジャケに関してはもはや圧巻とも言うべき気持ち悪さ、意味不明さがありますが、音楽の良さはホンモノなのでどうかジャケだけで判断しないでください。


5th 『No More Stories...』(2009年)

 アルバムの正式名称は書き切れないくらい長く、大体『No More Stories…』と略される場合が多い。2曲目の『Introducing Palace Players』には、MewをMewたらしめる要素が全部詰め込まれています。中毒性の高いギターリフ、変拍子も取り入れたトリッキーなドラミング、メロディの良さ、音響の美しさ・・・良い意味でアクの強い楽曲が多い、超個性派アルバム。


6th 『+ -』(2015年)

 持ち前の奇抜さ、強烈なアクが取れ、良くも悪くもシンプルでオーソドックスな小綺麗な楽曲が増えたアルバム。1曲目の『Satellites』は、高揚感を煽る楽曲展開と音響の美しさが魅力の名曲。


7th 『Visuals』(2017年)

 2023年12月現在、最後のリリースとなっているアルバム。前作で一気にアクの強さが抜けましたが、本作もまた普遍性の高い作品です。華やかで煌びやかなサウンドメイクが施されているのが特徴で、ソングライティングも悪くない。ただ、Mewにはどうしても中毒性の高いギターリフを求めてしまうといった意味においては、物足りなさもあるのが正直なところかなとは思います。


 全アルバムを個人的な主観でランク付けするとこんな感じ。

 Mewの音楽を知らない方で、この独特な世界観に興味を持って頂けた方は是非聴いてみてください。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。




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