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レビュー The Kooks "10 Tracks to Echo in the Dark"

畑中修介

 今回は、The Kooks(ザ・クークス)の通算6作目、"10 Tracks to Echo in the Dark"のレビューを書いていきたいと思います。

 The Kooksと言えば、00年代中盤、アークティック・モンキーズと同時期にUKガレージロックシーンに登場すると、デビュー作が全英2位、2ndアルバムが全英1位に輝くなど、アクモンの影に隠れながらも着実な人気と実力を誇ったバンドで、個人的に大好きなバンドの一つなんですよね。

 ボーカル、ルーク・プリチャードの艶のある歌声、ソウルフルな歌唱が唯一無二なんです!

 それに、00年代初頭〜中盤にかけて出現した有象無象のUKガレージロックバンド達の中でも、飛び抜けてソングライティング能力が高いかと。

 これは1st、2ndを聴いて頂ければ分かると思います。

傑作1st/2nd

 ただし、3rdでその勢いが陰り始めると、4thでは元々のソウルフルな要素を一層強め、ややリズム重視な、ブラックミュージックに接近するような内容を打ち出し、良く言えば、グルーヴィでダンサブルな要素を獲得したと言えなくもないのですが、ソングライティング的にあまり目立てなかったというのが率直な感想で、セールス的にも、2ndからは大きく見劣りする結果となってしまいました。

 途中で彼らの新作を追いかけるのやめちゃったという人も少なからず居ると思うんですよね。存在感もすっかり薄れてしまった印象です。

 ただ、前作の5th "Let's Go Sunshine"では原点回帰的なアプローチが見られ、リズムよりもメロディを重視する従来の方向性へ再シフトチェンジしました。セールス的には初期ほどの存在感を取り戻すまではいきませんでしたが、ストレートなロックサウンドの復活は、初期からのファンとしては嬉しい限りでした。

 というわけで、やっぱり新作出すたびに必ずチェックしてしまうんですよね、ザ・クークス。それくらい、1stと2ndの印象が鮮烈だったということなんですけど。

 随分と前置きが長くなりましたが、4年ぶり通算6枚目のスタジオアルバムとなる本作、"10 tracks to echo in the dark"は果たしてどうなのか?

 結論から言うと、過去作を超えられておらず、かと言って新境地を切り拓いたとも言い難いサウンドかと思います。(汗)大好きなバンドなだけに、こんな手厳しい言い方をするのは非常に心苦しいところもありますが。

 普段は、基本的に聴いてみて良いと思った作品のみをレビューしているので、マイナスな評価を記事にすることはほとんどないのですが、The Kooksを贔屓する者として、無視することなく、あえて心を鬼にして向き合っていきます。

 まず肝心要のソングライティング、これが今ひとつ中途半端というか、メロディ重視で行くのか、リズム重視で行くのか、どっちつかず感が否めませんでした。

 サウンドとしては、彼らの過去作では類を見ないほどにシンセが多用されているという特徴こそあれど、それがハマっているかと言えば微妙なところ。アートワークのような煌びやかさを帯びた明瞭なサウンドになっているのはいいのですが、それを武器にするところまでは出来ていないというか。

 煌びやかでクリーントーンな音が増えながらも、しっかり従来のグルーヴ感を出せているところや、生のバンドサウンドの質感が失われていないところは良かった点だと思います。


 1曲目のConnectionなんかは、シンセの音の裏でベースがグルーヴィに動き回っていて、メロディアスさもあって良いと思います。


 2曲目のCold Heart からダンサブルな要素が強くなってくるんですよね。明瞭でクリーンなギターワークが魅力的な楽曲ではあるのですが、メロディよりもリズムが重視されているような印象も受けます。3曲目のJesse James でその傾向が顕著に。シンセを多用し、よりダンサブルで、よりグルーヴィな方向へとシフトしています。ただ、どうせならもっとこの方向に突き抜けて欲しい気がするなあと。

 4曲目のCloserでは生のバンドサウンドの質感をしっかり残しつつ、そこにシンセを乗せてきていますが、やはりここまでの前半、ソングライティング的に今ひとつ目立ててないのが気になるんですよね。

 5曲目のSailing On A Dreamと6曲目のBeautiful World、この辺りではもう完全にバンドサウンドが減退しており、大胆なシンセ導入が目立ちます。ここでも、おっと思わせるようなメロディには出会えず。

 7曲目のModern Days。この楽曲はまだ生のバンドサウンドの質感が残っています。一定のメロディアスさもあります。このレベルの楽曲が揃っていれば、バンドの新たな方向性として本作を受け入れられていたかもしれない、と思わせてくれた楽曲。


 8曲目のOasis、9曲目の25、この2曲に関しては、もはやシンセポップバンドと呼びたくなるようなサウンドが鳴らされています。いや、決してシンセポップ自体が悪いとは思いませんが。

  最後の10曲目Withont a doubt。アコースティックギターによる静かな楽曲で本作は幕を閉じます。



 大好きなバンドですが、ほとんど酷評に近いレビューを書いてしまいました。(汗)

 何度か繰り返し聴いたとしても、本作が彼らのディスコグラフィーの中で浮上してくることはなかなかイメージしづらい、というのが正直な感想。4thくらい清々しく突き抜けてくれれば、まだ納得できると思うんですけどね。

 強いてハイライトを挙げるとするならば、#1 Connectionか、#7 Modern Daysということになるのかな。

 まあ、今後もThe Kooksは聴き続けます。まだまだ活動を続けてもらって、また次作に期待します。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。

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畑中修介
音楽好き(特にインディーロック/エモ)