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「アメリカ(America)」/サイモンとガーファンクル 「ブックエンド」第3曲

はじめに…映画「卒業」のこと

映画「卒業」は1967年に公開された米国の映画です。主演はダスティン・ホフマン。

物語は、主人公ベンジャミン(ダスティン・ホフマン)が大学を卒業した後自分の将来を迷いながら成長していく成人していく様子を描いています。彼は、父親や周囲の人々の期待に反し、自分の人生を模索し、時には社会のしがらみに抗しながら生きようとします。

家庭教師として雇われますが、雇い主の妻ミセス・ロビンソンと関係を持ちます。その後、ロビンソンの娘エレインに惹かれていくという、妙な展開になるのが??ですが、あくまで私個人の感想です。(テレビの通販CMみたいですね(^_^))

サイモン&ガーファンクルの楽曲が使用された

「卒業」では、サイモン&ガーファンクルの楽曲が多く使用されています。特に、彼らの楽曲が印象的に使われたシーンがあります。

映画の中で最も有名なシーンの1つは、主人公ベンジャミンが家を抜け出してプールサイドで深い思索にふけるシーンです。このシーンでは、サイモン&ガーファンクルの楽曲「The Sound of Silence(静寂の音)」が流れます。この曲は、ベンジャミンの内面の葛藤や孤独を表現するために効果的に使われています。

また、映画の終盤には、ベンジャミンがエレインを探しに出かけるシーンで、サイモン&ガーファンクルの楽曲「Mrs. Robinson(ミセス・ロビンソン)」が使われます。この曲は、ミセス・ロビンソンとの関係やベンジャミンの内なる葛藤を象徴するものとして配置されています。

サイモン&ガーファンクルの楽曲が映画の雰囲気やテーマをより深く浮き彫りにする役割を果たしており、その選曲は映画の成功に大きく貢献しています。

エレインはベンジャミンに惹かれているけど別の男と結婚

ベンジャミに惹かれているエレイン。でも、彼女は親のススメに従い、ベンジャミン以外の男と結婚することになります。

ところが、エレインをあきらめ切れないベンジャミンは、エレインの結婚式に現れ、教会の後方のガラスの外から、叫びます。「エレイン!、エレイン!」と。振り返ったエレインは、その様子を見て感極まり、教会をかけ出て、ベンジャミンと一緒に逃走。そしてウェディング姿のエレインの手をとり、路線バスに乗り込む。二人は会話を交わすこともなく、そのままバスが走るシーン、でエンディング。
映画はここで終わり。

「アメリカは」「卒業」の続編か?

でもこの続きはこの歌「アメリカ」で見ることができます。いえ、私のようなS&G狂信者による妄想の類なので、話半分に理解してくださいね。

2人のハミングとギター伴奏による前奏で、歌は始まります。こういう始まりは、それまで発表された歌にはなかったものです。
 

Let us be lovers,
(恋人になろう)
We'll marry, our fortunes together
(結婚して、運命を共にするんだ)
I've got real estate
(本物の不動産が)
Here in my bag
(このバッグの中にある)

Lyric by Paul Simon/迷訳:musiker (以下同)

恋人同士が、ヒッチハイクの旅に出る。本物のアメリカを探しに。このテーマは当時ならず、アメリカ国民の心を強くとらえたに違いありません。しかも歌の主人公が、いかにもたくましいヒーローなんかでなく、どこにでもいそうな若いカップルであるところが、実に新鮮です。

旅は始まる

旅は始まります。

We walked off
(僕たちの旅立ち)
To look for America
(それはアメリカを探すための旅)

伴奏のリードはギターによるコードストーク。キーボードなど他の楽器も入りますが、実に控えめで、アルバム「サウンズ・オブ・サイレンス」のサウンドとは違います。この傾向は「ブックエンド」の曲全体にもあてはまります。

特に印象的なのが、1コーラスと2コーラスとの間に入る力強いドラムのアクセント。

2番では、ポール・サイモンの実際の恋人ケイシーに話しかけます。実際、この歌は、ケイシーと共にアメリカ旅行をしたことを、歌っているともされています。

3番では少しメロディが変わり

Loughing on the bus
(バスの中で僕たちは笑う)
Playing games with the faces
(乗客の顔当てゲームをしながら)
She said "The man in the gabardine suit
(彼女は、「あのギャバジンスーツを着た男は
Was a Spy"
スパイよ」と言う)
I said "Be careful,
(僕はすかさず言った「気をつけて、
His bow-tie is really a camera"
(彼のネクタイは本当はカメラなんだ」)

まさに若いカップル、子供じみた会話がとてもおかしく微笑ましいです。
 

4番で、少し2人は退屈になります。一緒にいて別の事をするようになる。

So I looked at the scenery
(そして僕は外の景色を見た)
She read her Magazine
(彼女は雑誌を読む)

最初は希望溢れた旅立ちだったのに、日が過ぎるたびに、2人は会話も少なくなったのでしょう。
そして5番では、男のつぶやきになります。 

ケイシーが眠っているのを知りながら彼女に語りかける。

"Kathy, I'm lost"
(「ケイシー、どうしたらいいんだろう」)
Though I knew she was sleeping
(彼女が眠っているのを知りながら語りかけた)
"I'm empty, and aching and
(からっぽで、苦しい)
I don't know why"
(なぜだろう、わからない)

二人の将来には夢もあるはずなのに、主人公はなぜ虚しい気持ちなのでしょう。特に、I don't know why"の部分は歌のクライマックス。
ポールが歌いたかったことは、ここの部分なのかもしれません。

まるで映画のようなシーンを、1コーラスから徐々に歌い上げ、新鮮なメロディと効果的なハーモニー。アメリカで有名なパイの店の名称をさりげなく入れたりして身近に感じさせる演出。だからこそ、上のクライマックスが一層効果的です。

一抹の寂しさを感じさせられる5番の詩ではあります。
でも、最後で繰り返し歌われる次のフレーズの力強さは、本当に感動的です。

They've all come to look for America
(彼らもアメリカを探しにきた)
All come to look for America
(みんなアメリカを探しにきた)

最初は2人だったのが、歌の終わりでは「みんな」になっています。たとえ寂しくとも、不安でも、「誰もがアメリカ」を探している、と。

このフレーズで特筆すべきは、ガーファンクルの高音ハーモニーです。詩の「アメリカ」のフレーズで、ポールとずれる所が微妙なハーモニーを生み、格別の美しさです。

All Comes to Look For America

断然スケールが大きくなったポール・サイモンの歌。それを充分感じさせる「アメリカ」は、ガーファンクルとのパートナーシップも最高潮の時期でもあり効果的で美しいハーモニーが光る、まさに傑作でしょう。 


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