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”音楽”も氷の下に永久保存? 『クレイジージャーニー』にも登場した施設を参考にしたプロジェクト「Global Music Vault」とは

10月17日に放送されたTBS系『クレイジージャーニー』2時間SP。同番組内で奇界遺産フォトグラファー・佐藤健寿氏が訪れ話題となった施設、それが北極圏にあるノルウェー領の島々の1つ、スピッツベルゲン島に存在する世界種子保存庫(Global Seed Vault)である。温暖化などの気候変動、または人類による戦争などで農作物・植物が絶滅することを防ぐため、世界中からあらゆる種子を収集し冷凍保存しているという。

そんな特殊な立地環境と独特なフォルムの建築物は多くの視聴者の目を引いたが、この保存の目的と機能をベースに、種子に代わって”音楽”も永久保存されるかもしれない。Pitchforkの記事によれば、起業家のLuke Jenkinsonが世界種子保存庫の近くにあるArctic World Archiveに歴史的価値のある音楽を保管する「Global Music Vault」なるプロジェクトを考えているという。

同氏は、ノルウェー国立博物館に勤めていた経験とAlan Walkerのプロモーションマネージャーを務めていた際の体験、2008年の米ユニバーサルスタジオ火災による膨大なマスターテープの焼失、さらに米MySpaceが2018年に行ったサーバー移行にて音楽ファイルを含む約12年分ものデータが消去されたことなどに影響を受けたようで、これらの事象から物理的/デジタルにおける保存面での欠陥を指摘し、警鐘を鳴らしたという。

「Global Music Vault」だが、具体的にはCDやレコード、またはMP3ファイルを収めたUSBメモリーをArctic World Archiveに保存するーーということではない。記事によると、ベンチャー企業のElire社が出資し、Microsoft社と提携して開発されたシリカガラス製プレートを使用するそうだ。この小さな正方形のガラスプレートにマスタークオリティの楽曲情報をレーザーにて刻むことで、およそ一万年もの間、保存できるよう設計されている。

ただ、上記のようなキットが無事開発されたとしても「どのアーティスト/作品を保存するのか」という問題が発生する。記事でもこの懸念点を挙げながら、さらに「保存するアーティスト/作品を”誰”が決めるのか?」にも言及している。現在、Elire社はパリを拠点とする国際音楽協議(International Music Council=IMC)と協力し、各国の音楽ビジネス団体と保存する音楽を選定する委員会を設立したという。保存キットが開発段階であることに加え、そこに保存すべき音楽とは何かもまた考え始められたばかりのようだ。

収益面や権利問題についても述べられているが、ここでは割愛する。Elire社は、Arctic World Archive内での保存以外にも、別に新たな保管庫を設計するプランも進めているという。いま私たちがリアルタイムで聴いている音楽がこの先どのような形で残っていくのか。デジタルストリーミングを超越した未来で、人間がどんな形で音楽を楽しむのか気になります。

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