第３週 「いばらの道」 ＃皇帝円舞曲
NHK 連続テレビ小説「エール」第 3 週 13 話（4/15放送）登場曲です。 【音楽の夢を断念する裕一】
皇帝円舞曲（ヨハン・シュトラウス2世作曲作曲）
1889年（明治22年）、オーストリアのワルツ王ヨハン・シュトラウス２世（1825年～1899年）が、ベルリンのケーニヒツバウという新しいコンサートホールのこけら落としのために作曲を依頼され、自身の指揮で初演したのが、皇帝円舞曲です。
初演時は、「Hand in Hand」というタイトルでした。これは、この演奏会に、オーストリア＝ハンガリー皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の臨席が予定されていたため、両国の親善を祝う目的でつけられたのではないかと言われています。
初演は大成功で、後にジムロック社から、楽譜が出版されることになりました。ただ出版にあたり、ジムロック社から、曲名を「皇帝円舞曲」と改めるよう言われ、タイトルを変更し、これによってヨーロッパ中で人気となりました。
曲は、序奏部と四つの円舞曲（ワルツ）、終結部の6つの部分からなります。二分の二拍子で始まる序奏部以外は、独特のゆらぎがある３拍子のウインナ・ワルツとなっています。
このウインナ・ワルツは、オーストリアの山岳地方で踊られていたレントラーという舞踏がワルツに発展し、ウィーン会議の頃、ヨーロッパ中に広まったと考えられています。 独特のゆらぎの理由は、３拍子の２拍目（微妙に３拍目も）が、通常の位置と違う点にあります。速いテンポで踊るため、ステップの都合でそのようになったようです。
ここで豆知識。では楽譜にはどう書いてあるのでしょう？ 実は、普通の３拍子と同じように書かれているのです。１小節に４分音符（休符）が３つ。ですから、この演奏の仕方を知らないと、この独特の味は出せないことになります。何か不思議ですね。
でも、実はクラシック音楽って、こんなことのオンパレードです。 ある決まりがあって、それを一つ一つ学んだり、経験を積んだりして自分のものにしていきます。そして、その土台のもとに、今度は、想像力を働かせて自由に演奏したり、作曲したりしていくのです。
ちょっと面倒くさい、でもだからこそ面白い、それがクラシックの世界です。知れば知るほど面白いクラシックの世界を、この皇帝円舞曲を聴きながら、是非感じてみてください。
ちなみに、ヨハン・シュトラウス２世は、父が音楽家であるにも関わらず、音楽家になることを反対され、一時は音楽家になることを諦めましたが、自分で楽団を作り、音楽家としてのデビューを果たしました。そして、ウインナ・ワルツの黄金期を築き、ワルツ王にまでなりました。 家族に反対されながらも、自分の進む道を貫いたエールの主人公裕一君にどこか似ている気がします。
（文：ミュージックソムリエ 藤井 憲治 指揮者／アートプロデューサー）
＊連続テレビ小説「エール」で福島ハーモニカ倶楽部の定期公演会の演目 一.皇帝円舞曲 ヨハン・シュトラウス二世 二.モルダウ ベルドジハ・スメタナ 三.主よ人の望みの喜びよ ヨハン・セバスティアン・バッハ 四.歌劇 カルメン から アラゴネーゼ ハバネラ 闘牛士 ジョルジュ・ビゼエ 五.想ひ出の径（新作初演）
NHK 連続テレビ小説「エール」 (NHK 総合月〜金 朝 8:00〜8:15、12:45〜13:00、 土曜日 1 週間を振り返ります。その他 NHK BS プレミアム、NHK BS4K でもオンエア中です。
*放送予定 3月30日〜9月26日
また NHK オンデマンドでも見逃し放送をご覧になることができます。
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